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日本経済新聞社編 『経済学 名著と現代』 日本経済新聞社 2007.12 第1部 文明論の視点 第1章 福沢諭吉 文明論之概略 北岡伸一 県立 9F8F書庫 大学文庫080.3.3597 95 (ブックガイド) 北岡伸一 独立自尊 福沢諭吉の挑戦 県立 大学289.1Ki72 飯田鼎 福沢諭吉 中公新書 県立 丸山真男 文明論之概略を読む(3巻) 岩波新書 県立 9F8F社会科学310.8マ 市立 中島岑夫 幕臣福沢諭吉 県立 市立 大学旧 坂本多加雄 市場・道徳・秩序 県立 第2章 F・ブローデル 地中海 川勝平太 県立 99 8F人文科学209.5フ4 94 市立 04 大学旧 99 アンリ・ピレンヌ(「マホメットとシャルルマーニュ」)とともに、20世紀最高の歴史家 (ブックガイド) ×ウォーラーステイン他 地中海を読む(?) 同 海から見た歴史 県立 8F人文科学209ウ 大学209U74 川勝平太 文明の海洋史観 県立 8F人文科学204カ 市立 大学204Ka94 ×浜下武志ほか 海と資本主義 同 アジア交易圏と日本工業化 1500-1900 県立 大学新書庫678.2A27 第3章 ヒックス 経済史の理論 宮本又郎 大学旧 (ブックガイド) ヒックス 経済学の思考法 県立 井上義明 「後期」ヒックス研究 県立 大学旧 ポラニー 『大転換』 県立 市立501ダ 大学332.06.P76 75 第4章 ガルブレイス ゆたかな社会 佐和隆光 県立 78 81 9F 70 市立 06 大学旧(現代)080I95gI95g 11 (ブックガイド) ガルブレイス ゆたかな社会 (決定版) 岩波現代文庫 市立 06 大学旧(現代)080I95gI95g 11 同 新しい産業国家 県立 9F 市立 大学旧 同 悪意なき欺瞞 県立 8F社会科学330.4カ 同 ガルブレイスわが人生を語る 県立 第2部 思想の広がり 第5章 ハイエク 自由の条件 竹森俊平 県立(全集) 大学新331.7.H49.1-7 (ブックガイド) ハイエク 自由の条件 - 自由の価値 県立(全集) 大学新書庫331.72H49.5 同 自由の条件 - 自由と法 県立(全集) 大学新書庫331.72H49.6 クレスゲほか ハイエク、ハイエクを語る 県立 8F人文科学289.3ハ 第6章 トクヴィル アメリカのデモクラシー 猪木武徳 大学文庫080.3.4192,99,73,82(大学旧) (ブックガイド) ネン=ウッター トクヴィル 文庫クセジュ 県立 大学文庫080.9.824 トクヴィル アメリカにおけるデモクラシー 県立(名著、古典文庫) 8F書庫(名著、古典文庫) 大学旧 ×同 旧体制と大革命 第7章 ウェーバー プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 岡崎哲二 県立 10(日経) 9F 89 大学旧 89 ウェーバー 宗教社会学論選 県立 大学旧 大塚久雄 社会科学における人間 岩波新書 県立 7FS301オ 市立 大学旧 岡崎哲二 コア・テキスト経済史 大学332O48 第8章 ヒューム 人性論 松井彰彦 県立(1,4) 9F (ブックガイド) ドゥルーズほか ヒューム ちくま学芸文庫 県立 8F人文科学133.3ヒ 大学133.3H98 ヒューム 人性論 岩波文庫 県立(1,4) 9F 同 ヒューム政治経済論集 大学旧 同 宗教の自然史 松井彰彦 人間の科学としての経済学 (「学問の扉」所収) 県立 第9章 マルサス 人口論 斎藤修 県立(光文) 9F 市立 大学新書庫334.1J52 (ブックガイド) ×マルサス 人間論(初版) 中公文庫 ×同 人間の原理(第六版) 中央大学 河野稠果 世界の人口(第ニ版) 東京大学出版会 県立 00 第10章 ミル 自由論 杉原薫 県立(光文) 06 9F書庫 市立(世界大思想全集 24) 大学旧 71 (ブックガイド) ミル 自由論 光文社古典新訳 県立(光文) 06 バーリン 自由論 県立 79 大学309.1B38 79 グレイほか ミル「自由論」再読 市立 大学133.4Mi27 ×杉原四郎 杉原四郎著作集Ⅱ 自由と進歩 J・S・ミル研究 ×ロールズ 万民の法 第3部 経済理論の発展 第11章 アダム・スミス 国富論 堂目卓生 7F書庫 大学080.3.3884,3904,3930,3986 (ブックガイド) アダム・スミス 道徳感情論 県立 9F 大学文庫080.3.4035?大学旧 ×同 国富論 日本経済新聞社 ロス アダム・スミス伝 大学289.3Sm5 00 ?水田洋 アダム・スミス ×田中秀夫 原点探訪 アダム・スミスの足跡 第12章 マーシャル 経済学原理 林敏彦 県立 23 大学331.74Ma52.1-4大学旧 (ブックガイド) 伊藤宣広 現代経済学の誕生 ケンブリッジ学派の系譜 7FS331.7イ 市立 ケインズ 人物評伝 ケインズ全集(10巻) 県立 市立 大学旧 林敏彦ほか 市民と社会を知るために 名著に触れよう 放送大学 大学新書庫379H93 08-Shi Peter Groenewegenほか Alfred Marshall 1842-1924, Edward Elgar, 1995 第13章 ケインズ 雇用・利子および貨幣の一般理論 小野善康 県立(全集) 大学文庫080.3.4359,74 08 (ブックガイド) カーン ケインズ「一般理論」の形成 8F社会科学331.7カ 大学新書庫331.74KE67 斎藤誠 新しいマクロ経済学 [新版] 県立 96 8F社会科学331サ 96 市立 96 大学新書庫331Sa25 00 小野善康 『不況のメカニズム』 ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ 中公新書 7FS331.7オ 市立 伊東光晴 現代に生きるケインズ 岩波新書 県立 7FS331.7イ 市立 大学331.74I89 ×平井俊顕 ケインズ100の名言 第14章 シュンペーター 経済発展の理論 今井賢一 県立 大学旧 (ブックガイド) シュムペーター 経済発展の理論(2冊) 岩波 シュンペーター 経済分析の歴史(3冊) 岩波 県立 市立 シュムペーター 新装版 資本主義・社会主義・民主主義(3冊) 岩波 県立(上・中) M9(中・下) 市立331シ1-3(1984) 伊東光晴ほか シュンペーター 岩波 県立 大学旧 都留重人 近代経済学の群像 岩波 9F 市立 大学旧 06 第15章 ブナキャン、タロック 公共選択の理論 土居丈朗 県立 大学新書庫331B81 (ブックガイド) 加藤寛編 入門公共選択 9F 99 大学新書庫331N99 05 ミューラー 公共選択 県立 大学旧 ×同 ハンドブック 公共選択の展望(3巻) 井堀利宏ほか 日本政治の経済分析 大学旧 ?ディキシット 経済政策の政治経済学 第16章 ゲイリー・ベッカー 人的資本 清家篤 大学新書庫371.3B31 (ブックガイド) ベッカー 人的資本 大学新書庫371.3B31 同ほか ベッカー教授の経済学ではこう考える 県立 8F社会科学331.0ヘ 大学331.04B31 清家篤 労働経済 9F 第4部 経営学への進展 第17章 ドラッカー 断絶の時代 伊藤邦雄 県立 07 F社会科学304ト 07 市立 80 大学旧 69 (ブックガイド) ドラッカー 現代の経営、イノベーションと起業家精神、ポスト資本主義社会、断絶の時代 第18章 H・サイモン 経営行動 野中郁次郎 県立 72 大学336.1SI6 89 (ブックガイド) サイモン 『システムの科学 県立 99 8F自然科学401サ 99 市立 87 大学旧 77 同 学者人生のモデル 8F人文科学289.3サ
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野中郁次郎編著 『戦略論の名著』 孫子、マキアヴェリから現代まで 中公新書 7FS391.3ノ 大学 1.孫武 孫子 戦わずして勝つ 中公クラシックス 孫子 2.マキアヴェッリ 君主論 君主の持つべき特性と力とは 新訳 君主論 池田訳 中公文庫 だ 3.クラウゼヴィッツ 戦争論 戦争とは何か 戦争論(レクラム版) 芙蓉書房 けあだこ 4.マハン 海上権力史論 海軍の存在価値とは何か 海上権力史論 北村訳 原書房 しだ 5.毛沢東 遊撃戦論 弱者が強者に勝つためには 遊撃戦論 藤田訳 中公文庫 6.石原莞爾 戦争史大観 最終戦争に日本が生き残るためには 戦争史大観 中公文庫 7.リデルハート 戦略論 戦争に至らない、戦争を拡大させないために何をすべきか 戦略論 市川訳 原書房 し 8.ルトワック 戦略 戦争の意義とは何か strategy the logic of war and peace, revised and enlarged edition, 2002 9.クレフェルト 戦争の変遷 戦争の本質と新時代の戦争とは 戦争の変遷 石津訳 原書房 10.グレイ 現代の戦略 現代戦略をクラウゼヴィッツ的に解釈してみる modern strategy 1999 11.ノックス&マーレー 軍事革命とRMAの戦略史 戦史から学ぶ競争優位とは何か 軍事革命とRMAの戦略史 今村訳 芙蓉書房 12.ドールマン アストロポリティーク 古典地政学を宇宙に適用するとどうなるか astropolitik classical geopolitics in the space age, 2001
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もくじ 語源の説明が充実してるもの。 学習用など 高1~大学(英検準1級)あたり その他、上級者用などターゲット層は? 上級者用 外部リンク 語源の説明が充実してるもの。 旺文社『新英和中辞典』1999年 講談社『英和中辞典』1994年 各社の英和辞典の語源欄を比較 @ ArtSaltのサイドストーリー http //art2006salt.blog60.fc2.com/blog-entry-1045.html 語源の詳しい英和辞書 http //okwave.jp/qa/q2694547.html 学習用など 高1~大学(英検準1級)あたり 2012年度【改訂版】 英語の良い辞書、悪い辞書 《書店・学生・英語教員も必見》 http //tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-09-10 ↑から気になったものをピックアップ ●ワードパル英和辞典 作者 中村 匡克 出版社/メーカー 小学館 発売日 2000/10 2色刷り。 ●アクセスアンカー英和辞典 作者 羽鳥 博愛 出版社/メーカー 学習研究社 発売日 2005/01 コンパクト。巻末に和英小辞典(「工業英語」「商業英語」充実) ●アルファフェイバリット英和辞典 作者 浅野 博 出版社/メーカー 東京書籍 発売日 2008/11/06 ホームページから発音のMP3ダウンロード可。 ●ニューヴィクトリーアンカー英和辞典 和英・活用ガイド・CDつき 作者 野田 哲雄 出版社/メーカー 学習研究社 発売日 2005/10 CDに「不規則変化動詞の発音」も。リズムで覚える。 ●スーパー・アンカー英和辞典 第3版でも「CD付き」 作者 児玉 徳美 出版社/メーカー 学習研究社 発売日 2003/10 ●ライトハウス英和辞典[第4版] 出版社/メーカー 研究社 発売日 2002/11/08 改訂5版は見にくくてダメ。6版は? その他、上級者用など ターゲット層は? ●アンカーコズミカ英和辞典 作者:山岸 勝榮 (編集), Edwin L. Carty (編集) 2007年 学習研究社 ¥ 3,465 上級者用 ●オーレックス英和辞典 作者:花本 金吾 (著), 野村 恵造 (著), 林 龍次郎 (著) 2008年 旺文社 ¥ 3,465 ●アドバンストフェイバリット英和辞典 出版社/メーカー 東京書籍 発売日 2002/11/27 ●新英和中辞典 [第7版] 並装 出版社/メーカー 研究社 発売日 2003/04/05 外部リンク 英語辞典について 英語… もがき苦しむちょ~初級者 http //www.geocities.jp/datto94/eigo.htm
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#100分de名著 #NHK #視聴率 #無料ドラマ amazonで探す @楽天で #100分de名著 を探す! 月22NHK 2010.09.27~ 公式HP wikipedia Hulu NETFLIX dTV Amazon U-NEXT TVer Paravi 入会済みの方は↑↑↑↑↑から、未入会の方は↓↓↓↓↓のバナーから youtube検索 / Pandora検索 / dailymotion検索 / bilibili検索 2010/09/27 マルクス『資本論』第1回「資本の誕生」 2010/09/28 マルクス『資本論』第2回「労働力という商品」 2010/09/29 マルクス『資本論』第3回「恐慌のメカニズム」 2010/09/30 マルクス『資本論』第4回「歴史から未来を読み解く」 2011/03/30 ニーチェ「ツァラトゥストラ」 2011/04/06 ニーチェ「ツァラトゥストラ」 2011/04/13 ニーチェ「ツァラトゥストラ」 2011/04/20 ニーチェ「ツァラトゥストラ」 2011/05/04 孔子「論語」 2011/05/11 孔子「論語」 2011/05/18 孔子「論語」 2011/05/25 孔子「論語」 2011/06/01 ドラッカー「マネジメント」 2011/06/08 ドラッカー「マネジメント」 2011/06/15 ドラッカー「マネジメント」 2011/06/22 ドラッカー「マネジメント」 2011/06/29 ドラッカー「マネジメント」 2011/07/06 福澤諭吉 「学問のすゝめ」 2011/07/13 福澤諭吉 「学問のすゝめ」 2011/07/20 福澤諭吉 「学問のすゝめ」 2011/07/27 福澤諭吉 「学問のすゝめ」 2011/09/07 ブッダ「真理のことば」 2011/09/14 ブッダ「真理のことば」 2011/09/21 ブッダ「真理のことば」 2011/09/28 ブッダ「真理のことば」 2011/10/05 マキャベリ「君主論」 2011/10/12 マキャベリ「君主論」 2011/10/19 マキャベリ「君主論」 2011/10/26 マキャベリ「君主論」 2011/11/02 アラン「幸福論」 2011/11/09 アラン「幸福論」 2011/11/16 アラン「幸福論」 2011/11/23 アラン「幸福論」 2011/11/30 アラン「幸福論」 2011/12/07 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」 2011/12/14 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」 2011/12/21 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」 2011/12/28 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」 2012/01/04 兼好法師「徒然草」 2012/01/11 兼好法師「徒然草」 2012/01/18 兼好法師「徒然草」 2012/01/25 兼好法師「徒然草」 2012/02/01 新渡戸稲造「武士道」 2012/02/08 新渡戸稲造「武士道」 2012/02/15 新渡戸稲造「武士道」 2012/02/22 新渡戸稲造「武士道」 2012/02/29 新渡戸稲造「武士道」 2012/03/07 ブッダ「真理のことば」 再放送 2012/03/14 ブッダ「真理のことば」 再放送 2012/03/21 ブッダ「真理のことば」 再放送 2012/03/28 ブッダ「真理のことば」 再放送 2012/04/04 紫式部「源氏物語」 2012/04/11 紫式部「源氏物語」 2012/04/18 紫式部「源氏物語」 2012/04/25 紫式部「源氏物語」 2012/05/02 フランツ・カフカ「変身」 2012/05/09 フランツ・カフカ「変身」 2012/05/16 フランツ・カフカ「変身」 2012/05/23 フランツ・カフカ「変身」 2012/05/30 フランツ・カフカ「変身」 2012/06/06 パスカル「パンセ」 2012/06/13 パスカル「パンセ」 2012/06/20 パスカル「パンセ」 2012/06/27 パスカル「パンセ」 2012/07/04 紫式部「源氏物語」 再放送 2012/07/11 紫式部「源氏物語」 再放送 2012/07/18 紫式部「源氏物語」 再放送 2012/07/25 紫式部「源氏物語」 再放送 2012/08/01 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 2012/08/08 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 2012/08/15 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 2012/08/22 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 2012/08/29 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 2012/09/05 チェーホフ「かもめ」 2012/09/12 チェーホフ「かもめ」 2012/09/19 チェーホフ「かもめ」 2012/09/26 チェーホフ「かもめ」 2012/10/03 鴨長明「方丈記」 2012/10/10 鴨長明「方丈記」 2012/10/17 鴨長明「方丈記」 2012/10/24 鴨長明「方丈記」 2012/10/31 鴨長明「方丈記」 2012/11/07 アインシュタイン「相対性理論」 2012/11/14 アインシュタイン「相対性理論」 2012/11/21 アインシュタイン「相対性理論」 2012/11/28 アインシュタイン「相対性理論」 2012/12/05 サン・テグジュペリ「星の王子さま」 2012/12/12 サン・テグジュペリ「星の王子さま」 2012/12/19 サン・テグジュペリ「星の王子さま」 2012/12/26 サン・テグジュペリ「星の王子さま」 2013/01/02 「般若心経」 2013/01/09 「般若心経」 2013/01/16 「般若心経」 2013/01/23 「般若心経」 2013/01/30 「般若心経」 2013/02/06 デュマ「モンテ・クリスト伯」 2013/02/13 デュマ「モンテ・クリスト伯」 2013/02/20 デュマ「モンテ・クリスト伯」 2013/02/27 デュマ「モンテ・クリスト伯」 2013/03/06 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 再放送 2013/03/13 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 再放送 2013/03/20 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 再放送 2013/03/27 ヴィクトール・フランクル「夜と霧」 再放送 2013/04/03 夏目漱石「こころ」 2013/04/10 夏目漱石「こころ」 2013/04/17 夏目漱石「こころ」 2013/04/24 夏目漱石「こころ」 2013/05/01 老子 2013/05/08 老子 2013/05/15 老子 2013/05/22 老子 2013/05/29 老子 2013/06/05 トルストイ「戦争と平和」 2013/06/12 トルストイ「戦争と平和」 2013/06/19 トルストイ「戦争と平和」 2013/06/26 トルストイ「戦争と平和」 2013/07/03 プラトン 「饗宴」 2013/07/10 プラトン 「饗宴」 2013/07/17 プラトン 「饗宴」 2013/07/24 プラトン 「饗宴」 2013/07/31 プラトン 「饗宴」 2013/08/07 老子 再放送 2013/08/14 老子 再放送 2013/08/21 老子 再放送 2013/08/28 老子 再放送 2013/09/04 「古事記」 2013/09/11 「古事記」 2013/09/18 「古事記」 2013/09/25 「古事記」 2013/10/02 松尾芭蕉「おくのほそ道」 2013/10/09 松尾芭蕉「おくのほそ道」 2013/10/16 松尾芭蕉「おくのほそ道」 2013/10/23 松尾芭蕉「おくのほそ道」 2013/10/30 松尾芭蕉「おくのほそ道」 2013/11/06 「アラビアンナイト」 2013/11/13 「アラビアンナイト」 2013/11/20 「アラビアンナイト」 2013/11/27 「アラビアンナイト」 2013/12/04 ドストエフスキー「罪と罰」 2013/12/11 ドストエフスキー「罪と罰」 2013/12/18 ドストエフスキー「罪と罰」 2013/12/25 ドストエフスキー「罪と罰」 2014/01/01 世阿弥「風姿花伝」 2014/01/08 世阿弥「風姿花伝」 2014/01/15 世阿弥「風姿花伝」 2014/01/22 世阿弥「風姿花伝」 2014/01/29 世阿弥「風姿花伝」 2014/02/05 フロム「愛するということ」 2014/02/12 フロム「愛するということ」 2014/02/19 フロム「愛するということ」 2014/02/26 フロム「愛するということ」 2014/03/05 孫子 2014/03/12 孫子 2014/03/19 孫子 2014/03/26 孫子 2014/04/02 「万葉集」 2014/04/09 「万葉集」 2014/04/16 「万葉集」 2014/04/23 「万葉集」 2014/04/30 「万葉集」 2014/05/07 「旧約聖書」 2014/05/14 「旧約聖書」 2014/05/21 「旧約聖書」 2014/05/28 「旧約聖書」 2014/06/04 柳田国男「遠野物語」 2014/06/11 柳田国男「遠野物語」 2014/06/18 柳田国男「遠野物語」 2014/06/25 柳田国男「遠野物語」 2014/07/02 アンリ・ファーブル「ファーブル昆虫記」 2014/07/09 アンリ・ファーブル「ファーブル昆虫記」 2014/07/16 アンリ・ファーブル「ファーブル昆虫記」 2014/07/23 アンリ・ファーブル「ファーブル昆虫記」 2014/07/30 アンリ・ファーブル「ファーブル昆虫記」 2014/08/06 アンネ・フランク「アンネの日記」 2014/08/13 アンネ・フランク「アンネの日記」 2014/08/20 アンネ・フランク「アンネの日記」 2014/08/27 アンネ・フランク「アンネの日記」 2014/09/03 「般若心経」 再放送 2014/09/10 「般若心経」 再放送 2014/09/17 「般若心経」 再放送 2014/09/24 「般若心経」 再放送 2014/10/01 清少納言「枕草子」 2014/10/08 清少納言「枕草子」 2014/10/15 清少納言「枕草子」 2014/10/22 清少納言「枕草子」 2014/10/29 清少納言「枕草子」 2014/11/05 洪自誠「菜根譚」 2014/11/12 洪自誠「菜根譚」 2014/11/19 洪自誠「菜根譚」 2014/11/26 洪自誠「菜根譚」 2014/12/03 シェイクスピア「ハムレット」 2014/12/10 シェイクスピア「ハムレット」 2014/12/17 シェイクスピア「ハムレット」 2014/12/24 シェイクスピア「ハムレット」 2014/12/31 シェイクスピア「ハムレット」 2015/01/07 岡倉天心「茶の本」 2015/01/14 岡倉天心「茶の本」 2015/01/21 岡倉天心「茶の本」 2015/01/28 岡倉天心「茶の本」 2015/02/04 メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」 2015/02/11 メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」 2015/02/18 メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」 2015/02/25 メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」 2015/03/04 アンネ・フランク「アンネの日記」 再放送 2015/03/11 アンネ・フランク「アンネの日記」 再放送 2015/03/18 アンネ・フランク「アンネの日記」 再放送 2015/03/25 アンネ・フランク「アンネの日記」 再放送 2015/04/01 ブッダ「最期のことば」 2015/04/08 ブッダ「最期のことば」 2015/04/15 ブッダ「最期のことば」 2015/04/22 ブッダ「最期のことば」 2015/04/29 ブッダ「最期のことば」 2015/05/06 「荘子」 2015/05/13 「荘子」 2015/05/20 「荘子」 2015/05/27 「荘子」 2015/06/03 ソポクレス「オイディプス王」 2015/06/10 ソポクレス「オイディプス王」 2015/06/17 ソポクレス「オイディプス王」 2015/06/24 ソポクレス「オイディプス王」 2015/07/01 小泉八雲「日本の面影」 2015/07/08 小泉八雲「日本の面影」 2015/07/15 小泉八雲「日本の面影」 2015/07/22 小泉八雲「日本の面影」 2015/07/29 小泉八雲「日本の面影」 2015/08/05 チャールズ・ダーウィン「種の起源」 2015/08/12 チャールズ・ダーウィン「種の起源」 2015/08/19 チャールズ・ダーウィン「種の起源」 2015/08/26 チャールズ・ダーウィン「種の起源」 2015/09/02 太宰治「斜陽」 2015/09/09 太宰治「斜陽」 2015/09/16 太宰治「斜陽」 2015/09/23 太宰治「斜陽」 2015/09/30 太宰治「斜陽」 2015/10/07 洪自誠「菜根譚」 再放送 2015/10/14 洪自誠「菜根譚」 再放送 2015/10/21 洪自誠「菜根譚」 再放送 2015/10/28 洪自誠「菜根譚」 再放送 2015/11/04 サルトル「実存主義とは何か」 2015/11/11 サルトル「実存主義とは何か」 2015/11/18 サルトル「実存主義とは何か」 2015/11/25 サルトル「実存主義とは何か」 2015/12/02 良寛「良寛詩歌集」 2015/12/09 良寛「良寛詩歌集」 2015/12/16 良寛「良寛詩歌集」 2015/12/23 良寛「良寛詩歌集」 2015/12/30 良寛「良寛詩歌集」 2016/01/04 内村鑑三「代表的日本人」 2016/01/11 内村鑑三「代表的日本人」 2016/01/18 内村鑑三「代表的日本人」 2016/01/25 内村鑑三「代表的日本人」 2016/02/01 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 2016/02/08 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 2016/02/15 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 2016/02/22 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 2016/02/29 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 2016/03/07 司馬遼太郎スペシャル 第1回「国盗り物語」 2016/03/14 司馬遼太郎スペシャル 第2回「花神」 2016/03/21 司馬遼太郎スペシャル 第3回「『明治』という国家」 2016/03/28 司馬遼太郎スペシャル 第4回「この国のかたち」 2016/04/04 唯円「歎異抄」 2016/04/11 唯円「歎異抄」 2016/04/18 唯円「歎異抄」 2016/04/25 唯円「歎異抄」 2016/05/02 宮本武蔵「五輪書」 2016/05/09 宮本武蔵「五輪書」 2016/05/16 宮本武蔵「五輪書」 2016/05/23 宮本武蔵「五輪書」 2016/05/30 宮本武蔵「五輪書」 2016/06/06 ルソー「エミール」 2016/06/13 ルソー「エミール」 2016/06/20 ルソー「エミール」 2016/06/27 ルソー「エミール」 2016/07/04 坂口安吾「堕落論」 2016/07/11 坂口安吾「堕落論」 2016/07/18 坂口安吾「堕落論」 2016/07/25 坂口安吾「堕落論」 2016/08/01 カント「永遠平和のために」 2016/08/08 カント「永遠平和のために」 2016/08/15 カント「永遠平和のために」 2016/08/22 カント「永遠平和のために」 2016/08/29 カント「永遠平和のために」 2016/09/05 石牟礼道子「苦海浄土」 2016/09/12 石牟礼道子「苦海浄土」 2016/09/19 石牟礼道子「苦海浄土」 2016/09/26 石牟礼道子「苦海浄土」 2016/10/03 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 再放送 2016/10/10 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 再放送 2016/10/17 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 再放送 2016/10/24 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 再放送 2016/10/31 アルフレッド・アドラー「人生の意味の心理学」 再放送 2016/11/07 道元「正法眼蔵」 2016/11/14 道元「正法眼蔵」 2016/11/21 道元「正法眼蔵」 2016/11/28 道元「正法眼蔵」 2016/12/05 レヴィ=ストロース「野生の思考」 2016/12/12 レヴィ=ストロース「野生の思考」 2016/12/19 レヴィ=ストロース「野生の思考」 2016/12/26 レヴィ=ストロース「野生の思考」 2017/01/02 中原中也詩集 2017/01/09 中原中也詩集 2017/01/16 中原中也詩集 2017/01/23 中原中也詩集 2017/01/30 中原中也詩集 2017/02/06 ガンディー「獄中からの手紙」 2017/02/13 ガンディー「獄中からの手紙」 2017/02/20 ガンディー「獄中からの手紙」 2017/02/27 ガンディー「獄中からの手紙」 2017/03/06 宮沢賢治スペシャル 2017/03/13 宮沢賢治スペシャル 2017/03/20 宮沢賢治スペシャル 2017/03/27 宮沢賢治スペシャル 2017/04/03 三木清「人生論ノート」 2017/04/10 三木清「人生論ノート」 2017/04/17 三木清「人生論ノート」 2017/04/24 三木清「人生論ノート」 2017/05/01 陳寿「三国志」 2017/05/08 陳寿「三国志」 2017/05/15 陳寿「三国志」 2017/05/22 陳寿「三国志」 2017/05/29 陳寿「三国志」 2017/06/05 「維摩経」 2017/06/12 「維摩経」 2017/06/19 「維摩経」 2017/06/26 「維摩経」 2017/07/03 ジェイン・オースティン「高慢と偏見」 2017/07/10 ジェイン・オースティン「高慢と偏見」 2017/07/17 ジェイン・オースティン「高慢と偏見」 2017/07/24 ジェイン・オースティン「高慢と偏見」 2017/07/31 ジェイン・オースティン「高慢と偏見」 2017/08/07 大岡昇平「野火」 2017/08/14 大岡昇平「野火」 2017/08/21 大岡昇平「野火」 2017/08/28 大岡昇平「野火」 2017/09/04 ハンナ・アーレント「全体主義の起源」 2017/09/11 ハンナ・アーレント「全体主義の起源」 2017/09/18 ハンナ・アーレント「全体主義の起源」 2017/09/25 ハンナ・アーレント「全体主義の起源」 2017/10/02 唯円「歎異抄」 再放送 2017/10/09 唯円「歎異抄」 再放送 2017/10/16 唯円「歎異抄」 再放送 2017/10/23 唯円「歎異抄」 再放送 2017/10/30 唯円「歎異抄」 再放送 2017/11/06 ラッセル「幸福論」 2017/11/13 ラッセル「幸福論」 2017/11/20 ラッセル「幸福論」 2017/11/27 ラッセル「幸福論」 2017/12/04 スタニスワフ・レム「ソラリス」 2017/12/11 スタニスワフ・レム「ソラリス」 2017/12/18 スタニスワフ・レム「ソラリス」 2017/12/25 スタニスワフ・レム「ソラリス」 2018/01/01 西郷隆盛「南洲翁遺訓」 2018/01/08 西郷隆盛「南洲翁遺訓」 2018/01/15 西郷隆盛「南洲翁遺訓」 2018/01/22 西郷隆盛「南洲翁遺訓」 2018/01/29 西郷隆盛「南洲翁遺訓」 2018/02/05 ユゴー「ノートル=ダム・ド・パリ」 2018/02/12 ユゴー「ノートル=ダム・ド・パリ」 2018/02/19 ユゴー「ノートル=ダム・ド・パリ」 2018/02/26 ユゴー「ノートル=ダム・ド・パリ」 2018/03/05 松本清張スペシャル 第1回「点と線」 2018/03/12 松本清張スペシャル 第2回「砂の器」 2018/03/19 松本清張スペシャル 第3回「昭和史発掘」 2018/03/26 松本清張スペシャル 第4回「神々の乱心」 2018/04/02 「法華経」 2018/04/09 「法華経」 2018/04/16 「法華経」 2018/04/23 「法華経」 2018/04/30 「法華経」 2018/05/07 神谷美恵子「生きがいについて」 2018/05/14 神谷美恵子「生きがいについて」 2018/05/21 神谷美恵子「生きがいについて」 2018/05/28 神谷美恵子「生きがいについて」 2018/06/04 アルベール・カミュ「ペスト」 2018/06/11 アルベール・カミュ「ペスト」 2018/06/18 アルベール・カミュ「ペスト」 2018/06/25 アルベール・カミュ「ペスト」 2018/07/02 河合隼雄スペシャル 2018/07/09 河合隼雄スペシャル 2018/07/16 河合隼雄スペシャル 2018/07/23 河合隼雄スペシャル 2018/07/30 河合隼雄スペシャル 2018/08/06 サン=テグジュペリ「星の王子さま」 2018/08/13 ローレンツ「ソロモンの指環」 2018/08/20 太宰治「走れメロス」 2018/08/27 「百人一首」 2018/09/03 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」 2018/09/10 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」 2018/09/17 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」 2018/09/24 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」 2018/10/01 モンゴメリ「赤毛のアン」 2018/10/08 モンゴメリ「赤毛のアン」 2018/10/15 モンゴメリ「赤毛のアン」 2018/10/22 モンゴメリ「赤毛のアン」 2018/10/29 モンゴメリ「赤毛のアン」 2018/11/05 三木清「人生論ノート」 再放送 2018/11/12 三木清「人生論ノート」 再放送 2018/11/19 三木清「人生論ノート」 再放送 2018/11/26 三木清「人生論ノート」 再放送 2018/12/03 スピノザ「エチカ」 2018/12/10 スピノザ「エチカ」 2018/12/17 スピノザ「エチカ」 2018/12/24 スピノザ「エチカ」 2018/12/31 スピノザ「エチカ」 2019/01/07 マーガレット・ミッチェル「風と共に去りぬ」 2019/01/14 マーガレット・ミッチェル「風と共に去りぬ」 2019/01/21 マーガレット・ミッチェル「風と共に去りぬ」 2019/01/28 マーガレット・ミッチェル「風と共に去りぬ」 2019/02/04 オルテガ=イ=ガセット「大衆の反逆」 2019/02/11 オルテガ=イ=ガセット「大衆の反逆」 2019/02/18 オルテガ=イ=ガセット「大衆の反逆」 2019/02/25 オルテガ=イ=ガセット「大衆の反逆」 2019/03/04 夏目漱石スペシャル 2019/03/11 夏目漱石スペシャル 2019/03/18 夏目漱石スペシャル 2019/03/25 夏目漱石スペシャル 2019/04/01 マルクス・アウレリウス「自省録」 2019/04/08 マルクス・アウレリウス「自省録」 2019/04/15 マルクス・アウレリウス「自省録」 2019/04/22 マルクス・アウレリウス「自省録」 2019/04/29 マルクス・アウレリウス「自省録」 2019/05/06 「平家物語」 2019/05/13 「平家物語」 2019/05/20 「平家物語」 2019/05/27 「平家物語」 2019/06/03 ヨハンナ・シュピリ「アルプスの少女ハイジ」 2019/06/10 ヨハンナ・シュピリ「アルプスの少女ハイジ」 2019/06/17 ヨハンナ・シュピリ「アルプスの少女ハイジ」 2019/06/24 ヨハンナ・シュピリ「アルプスの少女ハイジ」 2019/07/01 小松左京スペシャル 2019/07/08 小松左京スペシャル 2019/07/15 小松左京スペシャル 2019/07/22 小松左京スペシャル 2019/07/29 小松左京スペシャル 2019/08/05 ロジェ・カイヨワ「戦争論」 2019/08/12 ロジェ・カイヨワ「戦争論」 2019/08/19 ロジェ・カイヨワ「戦争論」 2019/08/26 ロジェ・カイヨワ「戦争論」 2019/09/02 大江健三郎「燃えあがる緑の木」 2019/09/09 大江健三郎「燃えあがる緑の木」 2019/09/16 大江健三郎「燃えあがる緑の木」 2019/09/23 大江健三郎「燃えあがる緑の木」 2019/09/30 大江健三郎「燃えあがる緑の木」 2019/10/07 西田幾多郎「善の研究」 2019/10/14 西田幾多郎「善の研究」 2019/10/21 西田幾多郎「善の研究」 2019/10/28 西田幾多郎「善の研究」 2019/11/04 「法華経」再放送 2019/11/11 「法華経」再放送 2019/11/18 「法華経」再放送 2019/11/25 「法華経」再放送 2019/12/02 ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」 2019/12/09 ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」 2019/12/16 ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」 2019/12/23 ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」 2019/12/30 ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」 2020/01/06 呉兢「貞観政要」 2020/01/13 呉兢「貞観政要」 2020/01/20 呉兢「貞観政要」 2020/01/27 呉兢「貞観政要」 2020/02/03 ハヴェル「力なき者たちの力」 2020/02/10 ハヴェル「力なき者たちの力」 2020/02/17 ハヴェル「力なき者たちの力」 2020/02/24 ハヴェル「力なき者たちの力」 2020/03/02 アーサー・C・クラークスペシャル 2020/03/09 アーサー・C・クラークスペシャル 2020/03/16 アーサー・C・クラークスペシャル 2020/03/23 アーサー・C・クラークスペシャル 2020/03/30 アーサー・C・クラークスペシャル 2020/04/06 コッローディ「ピノッキオの冒険」 2020/04/13 コッローディ「ピノッキオの冒険」 2020/04/20 コッローディ「ピノッキオの冒険」 2020/04/27 コッローディ「ピノッキオの冒険」 2020/05/04 「平家物語」再放送 2020/05/11 「平家物語」再放送 2020/05/18 「平家物語」再放送 2020/05/25 「平家物語」再放送 2020/06/01 カント「純粋理性批判」 2020/06/08 カント「純粋理性批判」 2020/06/15 カント「純粋理性批判」 2020/06/22 カント「純粋理性批判」 2020/06/29 カント「純粋理性批判」
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「剣ボボボボーン!」 【名前】 キシリュウオーコズミックブレイカー 【読み方】 きしりゅうおーこずみっくぶれいかー 【登場作品】 騎士竜戦隊リュウソウジャー 【初登場話】 第22話「死者の生命!?」 【分類】 必殺技 【使用ロボ】 キシリュウオーコスモラプター 【詳細】 キシリュウオーコスモラプターの必殺技。 装備した右手のカガヤキソードと左手のクラヤミガンの力で光と闇のエネルギーを作り出し、標的を宇宙の塵へ変える。
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名著出版:東京ふる里文庫 ×「練馬区の歴史」東京ふる里文庫1、練馬区郷土史研究会 読書me はてな ×「新宿区の歴史」東京ふる里文庫2、新宿の歴史を語る会 読書me ×「豊島区の歴史」東京ふる里文庫3、林英夫 読書me 「目黒区の歴史」東京ふる里文庫4、目黒区郷土研究会 「千代田区の歴史」東京ふる里文庫5、鈴木理生 「台東区の歴史」東京ふる里文庫6、小森隆吉 「墨田区の歴史」東京ふる里文庫7、山本純美 「大田区の歴史」東京ふる里文庫8、新倉善之 「江東区の歴史」東京ふる里文庫9、高梨輝憲 「江戸川区の歴史」東京ふる里文庫10、別所光一/丸山典雄文 「渋谷区の歴史」東京ふる里文庫11、林陸朗ほか 「杉並区の歴史」東京ふる里文庫12、杉並郷土史会 「足立区の歴史」東京ふる里文庫13、足立史談会 「葛飾区の歴史」東京ふる里文庫14、入本英太郎 「中野区の歴史」東京ふる里文庫15、関利雄/鎌田優 「品川区の歴史」東京ふる里文庫16、品川区文化財研究会 「板橋区の歴史」東京ふる里文庫17、萩原龍夫/伊藤専成 「港区の歴史」東京ふる里文庫18、俵元昭 「荒川区の歴史」東京ふる里文庫19、松平康夫 「世田谷区の歴史」東京ふる里文庫20、荻野三七彦ほか 「中央区の歴史」東京ふる里文庫21、北原進/山本純美 「北区の歴史」東京ふる里文庫22、芦田正次郎ほか 「文京区の歴史」東京ふる里文庫23、竹内誠ほか
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目次 目次Part11その1(≫42~45) その2(≫131) その3(≫146~191、≫183~184、≫186) Part12その1(≫62~63) その2(≫191) Part13その1(≫46~49) その2(≫95~97) その3(≫161~163、≫165~167) Part14その1(≫23~25) その2(≫47~49、解説:≫53) その3(≫176~178) Part15その1(≫176~178) その2(≫156~161) その3(≫171~173) Part11 その1(≫42~45) 了船長22/04/30(土) 23 27 56 「イチ、ちょっといいだろうか。」 「うぅーん、どうしたの、オグリ。」 「今日の夕飯は、ぶり大根がいいんだ。」 「ぶり大根、ね。分かった。買い物行ってくるね。」 「本当か!分かった。楽しみにしている。」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「ただいま、オグリ。」 「おかえり、イチ!」 「お腹減らして待ってたんでしょ。」 「うん。夕飯が待ちきれないよ。」 「ん、ちょっと待っててね。すぐできるから。」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「……ダメだ、なんか、めんどくさい……」 「今日、そんなにハードなワケじゃなかったんだけどな……」 「味付け、めんどくさいな……」 「あー、いいや。めんつゆ入れちゃえ。」 「ごめん、オグリ。手抜きしちゃって、許して……」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「はい、お待たせ。テーブル整えてくれて、ありがと。」 「私の方こそ、朝にリクエストしてしまって。ありがとう。」 「ううん、大丈夫。」 「……おお、出来立てだ。」 「うん。熱いよ。気を付けて。」 「それじゃあ、いただきます。」 「召し上がれ。」 「おお、おいしい!」 「えっ。」 「うん、やっぱりイチの料理はおいしいな。」 「そ、そっか。」 「いつもの料理もとてもおいしいが、今までで一番おいしいかもしれない。」 「……ありがとう。ごめんね、オグリ。」 「ど、どうしたんだイチ、昼間、何かあったのか。」 「ううん、そういうわけじゃなくて。これでよかったんだな、って。」 「い、イチ?……ほら、イチ。」 「ちょっ、まだ、食べてるでしょ。」 「いいんだ。……大丈夫、大丈夫だ。今日もお疲れ様、イチ。」 「……お行儀、悪いよ。」 「今だけは、許してくれ。」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 『たのしみは まれに魚烹て 児等みなが うましうましと いいて食ふ時』 橘曙覧 了 ページトップ その2(≫131) 了船長22/05/13(金) 01 13 00 「ほな、集計や…… クリーク一着、ウチ二着、オグリとモニちゃんが同率で、イチちゃんはまたドベやんな」 「ふふ、また勝っちゃいました〜」 「もしかしたら、あの時木材を確保しておくべきだったのかもな……」 「イチ、貿易するの苦手すぎっしょ。交換レート相当酷かったじゃんかー」 「だってみんな、必要だって言うし。いつのまにか負けちゃってるんだもん」 「ありがとう、イチ。とても助かった」 「せやな、ホンマええお客さんになってくれたで、おおきにな」 「あー、いったん降参です! みんな小腹でも減ってない? 何か作るよ」 「ありゃ、そしたら休憩にしよか」 「イチ、私はサンドイッチが食べたい」 「あ、いいねそれ。伯爵じゃん」 「えぇー、パンあったかな。ありましたっけ」 「確か食パンしかありませんから、耳が残っちゃいますね〜」 「それでも大丈夫だ、よろしく頼む」 「わーい、イチのごはんにありつけるぞ〜」 「モニー、アンタの分、残らないと思うな」 ページトップ その3(≫146~191、≫183~184、≫186) 了船長22/05/15(日) 01 26 45 これは、私の話じゃない。 私がそばでずっと見てきた、ファンの人たちみんなのアイドル、ジンクスを叩き割った葦毛のスーパー・ヒーロー、そして私たち一緒に走るウマ娘にとって、あまりに強い怪物の話。 だから、あんまり長くは思い返さない。 その日、東京レース場は、人々が作り出した局地的な地鳴りで、揺れに揺れていた。 多くの人が口をそろえて、同じ音を叫ぶ。 期待を込めて、信じる気持ちを込めて。 中には、裏切られたと思ったがゆえに、非難するようにも聞こえる声色もあった。 夢、期待、願い。様々な思いが幾重にも重なって、彼女に向けられていた。 オグリ、オグリ、と。 澄み切った師走の空気を切り裂いて、約36万の直接的な視線と、間違いなくもっと多くの間接的な視線の先にいるウマ娘は、もうこれで終わってもいいと言わんばかりの、最後の力比べに飛び込んでいた。 よく、私たちウマ娘の走りは、まるで空を飛ぶようだ、としばしば形容される。 でも、彼女の最後の走りは、間違いなく地を踏みしめ、大地を割って昇っていく、豪快で力強いものだった。 それはきっと、私の言葉と経験では言い表せない、誰の目にも見えない、とてもとても重く大きい何かをその背に乗せたまま、走っていたからかもしれない。 その重みを一つこぼさず全部背負って、さあ頑張るぞ、と決意を固めて走っていた。 いつも近くで――認めたくないけど――アイツが本当に苦しそうな顔をしていたのを、私は見てきた。 一時は誰の言葉も耳に入らないくらい追い詰められて、あんなにきれいな髪と尻尾が、何か真っ黒なものに呑まれてくすんでしまうんじゃないかと思ったこともあった。 私のご飯を食べた時のとろけるような笑顔は、私が思わず惚れこんでしまったあの表情は、二度と見れなくなってしまうんじゃないかって、本気で思ったこともあった。 もう、『おかわり』って、言ってくれなくなってしまうんじゃないかって。 それでも最後には、彼女は、アイツは、オグリキャップは、それらすべての期待に、真正面から答えてきた。 第4コーナーは涙でオグリの姿は見えなくなり、直線では世界から取り残されたように音も聞こえなくなって、祈ることしかできなかった。 それでも、ぼやけてはっきりしない世界の中でも、オグリキャップがゴール板を最初に駆け抜け、腕を挙げたところだけは、はっきりと見ることができた。 ああ、帰ってきた。オグリキャップは、やっぱりオグリキャップなんだ。 場内の人たち全員が一丸となって呼びかける波に、私は乗れなかった。内からこみ上げてくる気持ちで、立っているだけが精いっぱいだった。 この世の中に神様はいるのかもしれない。そう思った。 こんなこと、オグリには口が裂けても言えないけれど。 これは、私の話じゃない。 私が憧れた、オグリキャップの話。 傾きが低くなった太陽が、眩しい光を直接注ぎ込む夕方の教室。 オレンジ色の光が、焼けた教室の壁と、私の目を一緒に照らす。 私はよせばいいのに、寒さを感じさせずギラギラと輝くそれをぼんやりと、目を細めて見つめていた。 別館の最上階の、そのまた隅にある空き教室で、私はトレーナーさんを待っていた。 廊下の向こう側からは、階段をパタパタと素早く駆けのぼる足音がいくつか聞こえる。きっと、近くの神社が埋まってしまった子たちのものだろう。 いつ使われなくなってしまったのかも分からないけど、綺麗な街並みを見下ろせるこの秘密基地をとても気に入っている。 その日のトレーニングメニューが終わって、じん、と熱を持つ身体を感じながら、私は水筒に余った水を口に含んだ。 しばらくすると、ペタペタというスリッパの足音が近づいてきて、引き戸ががらりと開けられた。 「お待たせしてすみません、印刷機が並んでまして」 ここまで階段を上ってくるのがしんどかったのだろう、すこし肩を上下させているトレーナーさんが、紙を手に教室に入る。 「お疲れ様です」 「いいえ、とんでもない。今日もお疲れ様でした。次の出走表です」 トレーナーさんが、印刷されたばかりなのだろう、まだぼんやりと熱を帯びているホチキス留めのコピー紙を差し出している。 もうすっかり読み慣れた、決まりきったフォーマット。 紙に印字された文章を読み飛ばしながら、最も重要なところだけを探しに行く。 2枚ほど紙をめくって、表の何行目に自分の名前が書かれているのか、上から順番に眺めていく。 『レスアンカーワン』 という文字列は、3番目に見つけられた。 「内ですね」 「はい。正直なところ、有利かどうかは微妙です」 私はトレーナーさんの返事がよく理解できず、聞き返す。 「あれ、そうなんですか」 「はい。条件がイマイチで」 裏面に送ってしまった紙を元に戻して、条件の項目を探す。 『福島レース場 第8R 距離:2000m』 と記載があった。 「あ、内のバ場、もしかして荒れますか」 「それもありますが、福島はそもそも、内とか外の有利不利がデータとして表れにくいんです」 トレーナーさんが同じ出走表を眺めながら説明する。 「直線も短いコースです。四コーナーのあたりで三番手、最悪、五番手くらいにはいないと。枠の有利も薄いところですから、離されたら内にいても間に合わ ないかもしれないレースです」 そういうと顔を上げて、それもありますが、という言葉と一緒に私の目を見つめてきた。 「大外の子の名前、見ましたか」 紙面に目を落とす。 大外枠の9番には、ずいぶん――もう2年くらいにわたって――見慣れた名前が書かれていた。 「……マジですか」 「大マジです。なんなら、お相手のトレーナーも同じタイミングで印刷したみたいで」 「向こうの人も驚いてましたか」 「ええ、本当に? って表情でした」 その反応を聞いて、少し安心する。少なくとも、私個人を先に対策されているというわけではなさそうだったからだ。 9番のところに書かれている名前を睨みつけるように見つめながら、その生徒のことを考える。 毎日顔を合わせること。寝る前にしゃべること。 私のすぐ後にトレーナーを見つけて、真面目にやり始めたこと。 消灯した後、スマホの光が割と眩しいこと。 二人ともレースに集中していなかったこと。お互いに一度ケンカしたこと。 私にもアイツにも、トレーナーがついたこと。 最近、二人とも同じようなペースでレースに出走してること。ひと月に2回は、相手が部屋にいないこと。 長いけれど意外と薄い内容が詰まった印象の過去が、私の脳裏をゆったりと流れていった。 あいつも同じことを考えてるんだろうか、と独りごちる。 レスアンカーワンさん、というトレーナーさんの声で、現実に引き戻される。 「その子の作戦とかは、良く知っていますか」 「いや、それがあんまり。レースについては話したことも無かったです」 「そうでしたか。そしたら、ちゃんと研究するしかありませんね」 トレーナーさんはそう言うと、残念、という素振りで、ちょっと苦笑してみせた。 「でも私、絶対負けないと思います」 私の言葉に、トレーナーさんが目を丸くした。 「それはまた、どうして」 「私のほうが、ずっと頑張ってきたので」 息を深く吸ってから発したその決意は、教室の壁に反響して、自分を奮い立たせる応援のようになって返ってきた。 「それでは、こういう流れで。最後に1ミリでも先にいれば勝ちですので」 パタン、と大きくて分厚い手帳を閉じる音が教室に響く。私たちの作戦会議が終わるいつもの合図だ。 私もペンを走らせる手を止めて、コースの概略図が書かれた紙をファイルにしまう。 「マークの子はスタミナを武器に逃げ切る作戦を立てているようです。吞まれないようなトレーニングを積んでいきましょう」 「分かりました。今までやったことない相手だから正直、不安です。」 「最近では逃げの作戦を取る子は少なくなりましたからね。私も経験が多くあるわけではないですが、任せて」 そう言うトレーナーさんは、自分の言葉を茶化したりすることなく、真っすぐな目をしていた。 「そうしたら、今日はひとまず、ゆっくり休んでください」 「お風呂も普通に入って大丈夫ですか」 「はい。今の体重なら食事規制もサウナの減量もいらないと思います」 すごいことですよ、と笑顔を向けてくれた。 「レスアンカーワンさんは無事是名ウマ娘の体現です。トレーナーとしても、ありがたいことです」 そんなことを言って、私に向かって深々と頭を下げた。 「でも、そんなに勝てていませんから」 「コンスタントに月に約2回、それを1年半以上続けているんです。中々できることではありません。地方トレセンの子と同じようなペースで走ってるわけですよ」 今まで褒められたことないところだったから、ありがとうございます、と言うところが思わず小声になってしまう。 「やっぱり、オグリさんの影響ですか」 「えっ」 オグリの名前が出て、ドキッとした。 実際のところ、私の気持ちをレースに向けさせたのは、どんなに口で否定したってオグリのおかげだ。 でも、それを素直に受け入れたり、ましてや本人に直接伝えることができるほど、私はまだ成長していない。 「別に、そりゃ、たまに話したりはしますけど」 「わかりますよ。でも、あなたの走りはオグリさんのいいところを、きちんと自分流に落とし込んだようなものだ。ただマネをしてるだけじゃない」 そう話すトレーナーさんは、スカウトしてくれた時と同じような、熱くて優しい表情をしていた。 「レスアンカーワンさんが個人的にオグリさんと仲がいいですから、併走トレーニングもしてもらえますし」 「その度に、ものすごい人の壁ができちゃいますけど」 引退した『スーパー・スター』が、どこぞの誰とも知れない生徒と併走トレをするものだから、前告知なしに始まったとしても生徒会や風紀委員が出張ってくるくらいの騒ぎになる。 遅めの時間にこっそり始めても、誰か一人が見かけたが最後、どんどん人が集まるのだ。 私としては、実際に私が走るレースよりも目線が集まる気がしてるから、ちょっと腹立たしくもある。 「GⅠウマ娘の併走というだけでもすごいのに、あんな引退レースを飾ったんですから仕方ないと言えば仕方ないでしょう。そんな生徒を引っ張ってこれるあなたがすごい、ということです」 彼女の名前も、レース名も示されていないのに、耳のどこか奥で、地鳴りのような歓声が聞こえてくる気がした。 思い出そうと思わなくても、どちらかを聞くだけで思い出してしまう”あの”レース。 きっとこれからも語られて、記憶と記録に残り、何度も見返されて、新しい人たちをも取り込めるだけの力を持った、物語のクライマックス。 その主語を飾る彼女が走るのだから、人が集まらないわけがない。それが分かっていても、ウマ娘の性なのか、少しだけ悔しい気持ちが湧きだしていた。 私の子供じみた、とても小さな嫉妬心から偶然生みおちたこの関係に感謝できるほど、私はまだ大人ではなかった。 ちらりとトレーナーさんの顔を見ると、私と同じようなことを思い出しているのか、少し遠い目をしていた。 「友達って言うか、たまたま、知り合いになっただけですから」 私とオグリの関係をどこまで知っているのか分からない表情をしながら、「そうですか」とトレーナーさんは言った。 「オグリキャップのトレーナーさんは、『オグリは教えるのがヘタだろう』って言ってましたよ」 トレーナーさんの大げさなモノマネと、真実を言い当てている言葉に、思わず少し息が漏れ出す。 「ふふ、そうですね。ホントにヘタです」 「『引退してもマスコミ対応とか進路相談もあるんだから、あんまり引っ張り出すなよ』とも言われちゃいました」 そういうトレーナーさんは、別段困っているような様子もなく、むしろ嬉しそうに頭の後ろをおさえている。 意識したわけでもないのにオグリの話を続けようとした私たちに横やりを入れるように、スピーカーから予鈴の音が鳴り出した。 私たちは慌てて、帰り支度を整える。いつもならこんなに話し込むことは無かったから、トレーナーさんも動きがぎこちなくなっている。 「ああ、いけない、もうこんな時間でしたか」 「すみません、つい」 「いや、私こそ。そしたらレースの日はこの時間に出発できるようお願いします」 はい、と返事しながら手早くレースの紙を受け取って、鞄を肩にかけた。 「お疲れ様でした」 施錠のために教室に残るトレーナーさんに挨拶して、私は教室を出た。 オグリのことを話そうと思ったわけじゃないのに、不思議と話題に上がってきて、私たちの時間を奪っていくみんなのアイドル。 地平線の向こうに隠れた太陽から漏れた光で少し薄暗くなった廊下を歩きながら、私は改めて、『オグリキャップ』の偉大さを実感した。 寮の部屋に戻ると、同室の子はまだ帰ってきていなかった。 あいつに限って居残り自主トレなんて珍しい、と思いながら、いつものルーチンをこなす。 サッと座学の復習をして、栄養過多にならないように食事を済ませ、今日のミーティング内容を思い返す。 メモで余白が埋まり、見にくくなったはずのレース表の中で、私はある一行――大外の枠に書かれた名前――のところだけを、じっと見つめていた。 何かを考えているようで、何も考えていない時間がしばらく経ったとき、ガチャリ、とやや乱暴にドアが開けられた。 別に悪いことはしていないけれど、その音でなんだかばつが悪くなってしまった私は、慌ててレース表を隠すように机の引き出しに放り込んだ。 引き出しの前に立ちはだかって後ろを振り返ると、ジャージ姿のルームメイトが前のめりにフラフラと部屋に入ってきた。 「あ、お帰り」 私の言葉が聞こえているのかいないのか、返事をしないまま床に膝をついて、顔をベッドに埋め込んでいる。 どさり、と鞄を下ろして5秒くらいした後、右手だけ挙げて何か言ったようだった。 「珍しいじゃん、自主トレ」 顔を埋めたまま返事をしたみたいだけど、音がマットレスに吸収されて何も聞こえない。 「汚れてるんだから、パッとお風呂入っちゃいなよ。私も今行くところだったし」 思わず、口からでまかせを言ってしまう。お風呂は先延ばしにするつもりだった。 おそらく意味のある言葉で返事はしていないのだろうけど、分かった、というように挙げた右手をヒラヒラさせている。 見られていないうちに準備しなくちゃ、と思った私はお風呂セットを引っ張り出した。 「先、行ってるよ。食堂もしまっちゃうから、早めに行きなね」 まだベッドに顔を埋めたまま姿勢を変えていないルームメイトに話しかけて、私は逃げるように浴場へ向かった。 シャワーで汗と汚れを落とした後、私はお風呂に浸かりながら、天井を見上げる。 モクモクと湯気が立ち込めて、伸ばした腕より先すら曇って見えにくい浴場の景色は、私だけを切り取って一人だけで居られるような心地がした。 オグリが二度目の毎日王冠を勝ったくらいの時期、私も自分のレースにより集中するようになった。 私が走るレースの日、都合の合う限り、オグリも見に来てくれる。 私はそれがイヤで、オグリの出るレース――大体はGⅠレースばかりで、私のと比べるとクラクラするくらい眩しいけど――の日程に被せて、自分の予定を組んでいた。 私のレース日程が近くなった時には、オグリも『私ばかりじゃなくて、イチにも頑張ってほしい』と言うので、朝の自主トレに混ぜてもらう。その時には、お弁当はナシ。 トレーナーさんにバレて、ほどほどにするよう注意を受けてからも、毎朝オグリに会う流れは崩せなくて、こっそり疲れの出ないくらいに二人でジョギングをする。 一緒に学園まで帰ってくると、いつも決まってオグリがパタパタと先にベンチまで走って行って、こちらを向いて座る。 その後、満足げな顔で手を振ってくる。 「何してんの」と聞くと、「イチの真似だ」と答える。 最初に聞いたときは『一度やってみたかったんだ』とも言っていた。 そんな日を繰り返して、彼女が昨年末に引退してからは、レースにもほぼ毎回見に来てくれている。 トレーナーさんの側で、良く似合うキャップと伊達メガネをして――いつか一緒に出掛けた時、私が選んだものだ――トレーナーさんの横で見ている。 入着したときには、ステージ上の光が反射してよく見えないけれど、この観客席のどこかで見てくれているんだろう、と思うと、気持ちがとても前向きになる。 オグリほど勝てているわけではないけれど、私の走りを見てくれる人がいる、という実感は、選手としての私を確実に支えてくれていた。 最初のミーティングから何回か回数を重ねたある日、トレーナーさんから、どのくらいレースに出走したいですか、と聞かれた。 どのレースを目指したいですか、とはトレーナーさんから聞かれなかった。デビューが遅れこんだのもあったし、G1路線はおろか、重賞なんかに手が届くような実力は持ち合わせていなかったからだと思う。 出遅れしていた私も、堅実に実績を積み上げられる道取りで走っていくことにしようと決めて、出られるだけ出たいです、と答えたのを覚えている。 トレーナーさんもまだ新人だったから、及び腰というか、自信がなかったのも理由の一つだろう。 『まるで、オグリキャップみたいだった』と言われて、我を忘れて食って掛かったことを思い出す。 思わず顔が熱くなる。これはきっと、お風呂に長く浸かっているからだ。 火照った頭で、その後の『オグリキャップに追いつける』という言葉も続けて思い出す。 言われた当時は、その言葉が無邪気に自信のもとになった。 けれど今思えば、「実力は足りないけれど、どこかでオグリキャップに並び立つことができるかもしれない」という意味の、事実ではあるが真実ではない、実に大人らしい言い回しだったのだろうな、と自覚した。 そんなトレーナーさんは、今では私以外にも新入生の子を何人か複数人担当するようになって、以前より忙しそうだけど嬉しそうな顔をしている。 自分が役に立ったのかな、なんて思ってちょっと誇らしい気持ちになる。 途端に、そんなことを考えている自分がなんだか急に恥ずかしくなって、口元まで身体をお湯の中に沈める。 一、二、三……と百まで数えてから上がろう、と子供に戻ったつもりで遊ぼうとしたら、あんまり熱くて五十を数えたところが限界だった。 大事なレース前に湯あたりして体調を崩しました、なんてとても言えたものじゃない。 大人らしくきっぱり諦めることにした私は、湯気で仕切られた個室のような空間を少し名残惜しく思いながら、浴場を出た。 尻尾までゆっくり乾かせて戻ってくると、すっかり部屋着に着替え終わったルームメイトが、ベッドの上で体育座りをしながらスマホを眺めていた。 「あれ、お風呂にいた?」 「いたよー」 「晩御飯はどうしたの」 「もう食べた」 せわしなく画面を触りながら、淡白な返事が返ってくる。 一体いつの間に、と思った私は、二つに折り畳まれ、ホチキスで留められた二つ折の紙が彼女のすぐ側にあるのを見逃さなかった。 どきり、と胸の奥が締まったような感覚がした。 やっぱり、見間違いでもなんでもなかったんだ、と現実逃避するように当たり前のことを思い直す。 そう考えると、スマホの上を滑る彼女の指も、本当に画面を操作しているのかどうか、怪しく思えてきた。 彼女を横目にお風呂セットを片付けて、向かい合うようにベッドに腰かける。 少し気まずい、緊張した空気が私たちの間に流れる。トレセン学園に入学して、初めて顔を合わせた時のような沈黙が、部屋の中を支配していた。 「ねえ」 モニーがスマホに目線を合わせたまま、声をあげる。 「イチ、今月の次のレースっていつなの」 いつもの砕けた感じとは違う、すこし芯の残るような硬い声だった。 「今週末だよ」 「ふーん」 相槌を最後に、モニーが口を閉じる。外で風に吹かれて窓に当たった小石が、カチン、と音を響かせた。 「イチの前走っていつだっけ」 モニーが先ほどよりは短い沈黙の後、普段なら絶対に部屋で話さない、レースの質問をしてくる。 「二週間前だけど」 思わず緊張してしまった私の声も、幾分か上ずってしまった。 「1600mのマイル戦だったよ」 返事をした後にモニーの指が素早く動いているのが見える。それから、目線が上から下へ、何回か行き来しているようだった。 「4着だったん?」 「いや、3着だよ」 私の答えに、モニーが「えっ?」と素っ頓狂な声を上げた。こちらに一度顔を向けて、すぐスマホを触り直す。 「ウソウソ、4着」 「は、なに、ウソついたってわけ?」 モニーが耳を少し後ろに絞った。どうやら、私の考えは当たっていたみたいだ。 「ゴメンって、えっ、怒ったの?」 私の名前でレース結果を検索していたのだろう。イタズラ心も手伝って、ひっかけクイズみたいなことをしてしまった。 そんなこと聞かなくても調べられそうなものだが、どうやらモニーもずいぶん緊張しているようだった。 「珍しいじゃん、レースの話するなんて」 「別にいいっしょ、たまには」 話を逸らすついで、私もモニーから情報を掘り出そうと、トレーニングの話を振ってみることにした。 「今日のトレーニングはキツかったの?」 「んー、いや、まあ。併走トレ」 「え、誰と?」 「誰でもいいでしょ」 「もしかして、タマモ先輩?」 モニーがタマモ先輩と仲がいいことは、オグリから教えてもらって知ったことだ。 私は幾ばくかの確証をもって、モニーに質問していた。 「なんだ、知ってんじゃん」 「タマモ先輩と併走なんて羨ましいよ」 「イチだって、オグリと走ってんでしょ」 そう切り返されて、私も黙り込む。 それからは、消灯を告げる放送が流れるまで、お互いにけん制を避けるように黙り込んでいた。 「じゃあ、おやすみ」 モニーはそう言うと、珍しくスマホを充電器に差してから、ベッドに入り込もうとしている。 「あれ、珍しいね」 「まあ、今日は疲れたし」 「タマモ先輩の併走って、やっぱキツイ?」 「うん、最後にはどうやっても差し切られるから」 そういった後、あっ、と声を上げる。自分が普段から逃げの作戦で走っていることをうっかりバラしてしまったかもしれない、と思っているのだろう。 その感じがなんだかおかしくなってしまい、少しだけ笑いが漏れてしまった。 「別に、モニーが逃げで走ってるのなんて知ってるって」 「イチはオグリみたいな控え方するよね」 「うん、まあね」 「やっぱり、元祖オグリギャルだし、直々に教えてもらってるってこと?」 「別に、そんなんじゃないし。モニーこそ、タマモ先輩は逃げるタイプじゃないから大変なんじゃないの」 「そうでもない。逆に、イチみたいな走りをする子のタイミング、知ってるから」 それに、と寝返りを打ったようなシーツの擦れる音を立てた後、はっきりした声で話してきた。 「イチは多分、タマモ先輩より速くないっしょ」 私は、モニーのストレートな挑発に、血液が全身に回ったのを感じた。 このタイミングでそんなことを言うのか。さっき私がひっかけたから、その仕返しのつもりだろうか。 自分でも信じられないくらい、激しい闘争心が身体の中を駆け巡っている。 そこそこに重たいシーツを少し持ち上げるほど、尻尾が動く。 今すぐ起きて運動着に着替えろ、勝負してやる――という言葉を飲み込んで、何とかモニーと正反対の方向に寝返りを打った。 乱暴に寝返りを打ってしまったのだろう、ベッドの軋む大きな音が、部屋の中に響いた。 「そうかもね」 どうしても震える声で、何とか言葉を音にする。 けれど、それ以上に何か返事を思いつくことができなかった。 何も言えなくなったのだろうと思ったのか、モニーが「おやすみ」ともう一度だけ言って、横になったようだった。 一度掘り起こされた熱はそう簡単に鎮まることなく一晩中続いて、私の眠気をすっかり吹き飛ばしてしまった。 目の冴えた私は、どんなに目を閉じても、その日は全く眠れなかった。 なんとか眠ろうと思えば思うほど、むしろ瞼の裏側は赤くなったように見えるし、聴覚は敏感になっていく。 私の背後から、ゴソゴソ、としきりに動く音が聞こえて、思わず身体を起こす。 窓から漏れてくる街頭の光と、暗闇に慣れた目が、どうやら眠れていないモニーの姿を映していた。 声をかけようかとも思ったが、そんな気分にはなれず、頭までシーツを被って横になる。 明日の朝、オグリに逃げる子の捕まえ方を教えてもらおう、そう思いながら一時間以上をかけて、なんとか眠ることができた。 レース当日の朝、いつもと同じ時間に目が覚めた。 やっと木や鳥が起き出したくらいで、まだ人も町も動き出していない時間。 身体を起こしてぐっ、と伸びを一つして、隣のベッドに顔を向ける。いつもどおり、モニーはぐっすり眠っていた。 あの日以来、私たちは普段通りを装いながら、水面下で鬼も逃げ出すほどの戦いを繰り広げていた……と思う。 モニーのほうはどう思っているかさっぱりわからないけれど、少なくとも私は「気合が入りすぎている」と注意を受けるくらいに燃えていた。 昨晩済ませておいたレース支度の鞄を持って、部屋を出る。 ラウンジを通り過ぎて、そこから玄関に通じる扉まで真っすぐ歩こうとしたとき、「イチちゃん」と声をかけられた。 びっくりして後ろを振り向くと、手ぬぐいに包んだお弁当箱だろうか、それを大事そうに両手で持つクリークさんが立っていた。 「おはようございます、イチちゃん」 「ああ、クリークさん。おはようございます」 「今日はイチちゃんの大事なレースだと聞いたんです」 大事なレース、という単語に、気持ちが引き締まる思いがした。 決して一つ一つのレースをないがしろにしてきたわけではないが、数をこなすことを第一にしてきた私にとって、『大事な』という言葉はとても新鮮に感じられた。 「そうですけど、クリークさんみたいにGⅠレースに出るわけじゃありませんから」 よせばいいのに、こんな時でも卑屈さが顔を出す自分の気質に嫌気がさす。 それがクリークさんにも伝わったのか、優しさの溢れる笑顔が、きゅっ、と真面目な表情を帯びる。 「イチちゃん、今日はモニーちゃんと走るんですよね」 「はい、そうですけど」 「私がオグリさんやタマモクロスさんと走るときは、レースの格なんて関係ありません」 そう言うと、クリークさんはキッチンで見たことが無いような、真剣な顔つきに変わった。 「ライバルのあの子に勝ちたい、一緒に走りたい、そのチャンスがやってきた。そうなったら、レース場でもトレーニングコースでも、私は勝つつもりで走ります」 私の空いている方の手を取って、その上に綺麗に結ばれたお弁当箱を置く。 「イチちゃん。私はモニーちゃんも一緒に応援しています。ですから、同じようにお弁当を渡します」 頑張ってきてくださいね、と言って、クリークさんは両手をお腹の前できれいに組みなおした。 クリークさんの言葉の意味をかみ砕いていた私は、しばらくその場に棒立ちになっていた。 しっかり飲み込んで、私の目を真っすぐ見据えるクリークさんに視線を合わせる。 「わかりました。ありがとうございます」 「行ってらっしゃい、イチちゃん。無事に帰ってきてくださいね」 「行ってきます」 お弁当を大事に抱えて、私はラウンジの扉を開けた。 下駄箱の上に鞄とお弁当を置いて、靴を履き替える。外に出て深呼吸を一つ。 3回繰り返したころ、またしても突然、後ろから声をかけられた。 「イチちゃん、頑張ってね」 ぎょっとして後ろを振り返ると、ナイトキャップを被った、幾分リラックスした服装のフジ寮長が立っていた。 「わ、はい、おはようございます」 「私の分も、しっかり走ってきてね」 「ありがとうございます」 「もう、あの時みたいに迷っていたポニーちゃんはいないみたいだね」 ニコニコした笑顔を崩さないまま、思い返したくない――主に子供じみた過去の自分が恥ずかしい、という意味で――記憶を突いてくる。 「はい。もう、誰にも八つ当たりはしません。自分の結果は自分で背負えます」 私は苦笑しながら答えた。 「うん、そうみたいだね。オグリからも、レスアンカーワンからも、大事なものを学んだみたいだ」 貼りつけたようなフジ寮長の笑顔が一瞬だけ変わるのを、私は見逃さなかった。 母親と言うより父親のような、厳しく叱ってしまった子供が真っすぐ成長してくれたのを安心するような、そんな表情だった。 「フジ寮長、どうかしましたか」 「いいや、大丈夫。ありがとう」 そう言うやいなや、手を素早く一度振った。顔の高さで止まった手にはトランプのカードが1枚挟まれている。 はい、と言われて差し出されたカードを受け取る。 「スペードの6、ですけど」 「そうだね」 「いつも思うんですけど、そういうの、どこで覚えるんですか」 「そうだな…… イチちゃんが勝ったら教えてあげるよ」 相変わらず、どうやっても敵わない人だな、と思わされた。 「それじゃあ、応援しているよ、イチちゃん」 ありがとうございます、と答えながらお辞儀をする。 顔を上げるころには、もうフジ寮長の姿は消えてしまっていた。 正門前でトレーナーさんと合流して、レース場に向かう電車に乗る。 2回乗り換えを挟んで、最後の駅からはバス。 住宅街の真ん中に突如現れる、巨大な建物にたどり着いた。 すでにお客さんで賑わっている入り口を横目に、関係者用の入り口に向かう。 そこで学生証やレース登録済みの用紙を確認してもらい、時間が来るまで控室で待機する。 控室は枠番が1~5番の子たちと、6~9番の子で部屋が分かれていた。 私はその前者に入り、先に着いていた競争相手に挨拶する。 他の子たちも聞いているけど、まずはトレーナーさんと最後の打ち合わせをする。 もう何度も経験して、すっかり慣れたと思ったレース前のこの時間が、今日は違った。まるでデビュー直後の一戦目の時みたいにドキドキしていた。 私の少し震える手を見たのか、トレーナーさんが「大丈夫ですか」 と声をかけてくれる。 「はい、なんとか」 「お気持ちは少しだけですが、分かります。緊張し過ぎずに」 緊張、という言葉に違和感を抱いた。 身体の外に動きが出てしまうくらいにドキドキしてはいるが、これは緊張ではない、と心の中で否定する。 初めて控室で体操服に腕を通し、ゼッケンをつけた自分を鏡で見た時、それはそれは恐ろしい気持ちが心の中で湧いていたことを思い出す。 自分は本当に勝てるのか、デビュー戦で勝てたのは実力ではなく、これから出走するすべてのレースに負けてしまうのではないか。それによって、学園を去ることになってしまうのではないか。 そんなことを考えていたこともあったが、案外自分は図太いほうなのか、五回も走れば落ち着くようになり、それ以降は神経が安定した状態になっていった。 それに比べて、自分が感じている今の震えは、明らかに何か性質の違うものだった。 ああ、分かった、と口の中でつぶやく。 「私、ワクワクしてるんだと思います」 トレーナーさんが目を丸くしてこちらを見る。 「ワクワク、ですか」 「はい。ドキドキしてるんですけど、なんだか今日はやれるって、そう思うんです。走るのがすごく、楽しみで」 私の言葉にトレーナーさんがゆっくり目を閉じ、しばらく何かを考えた後、書類をそろえて鞄の中にしまい始めた。 「あれ、作戦会議、終わりですか」 「はい。レスアンカーワンさんは作戦を忘れたことはありませんし」 それに、と言葉を続ける。 「今の様子なら、絶対に悪い結果にはならないと思いますから。どうかご無事に、頑張ってきてください」 そう言って、椅子から立ち上がった。 私も立って、お辞儀をする。 「ありがとうございます。そしたら、また後で」 顔を上げてトレーナーさんと目を合わせる。 「はい。次はウィナーズ・サークルで。」 他の子がいるのにも関わらず、ずいぶん大層な約束をトレーナーさんは取り付けてきた。 普段ならこんなことはしない人なのに、私の熱がきっと移ってしまったのかな、と思う。 扉の方に振り返り控室から出ていくまで、トレーナーさんがもう一度こちらを見ることは無かった。 パドックでのお披露目の時間になり、控室を出る。 長い地下バ道を通ってそこに着くまで、モニーとは一度も顔を合わせなかった。 順番に名前を呼ばれ、それぞれ全員が思い思いのポーズを取ったり、お辞儀をするだけだったり、個性のあるアピールをしている。 『2枠3番は、レスアンカーワン!』 アナウンサーの人が、場内に私の名前を高々と響かせる。何か派手にポーズを決めたりするのは恥ずかしいから、お辞儀だけ。 顔を上げると、何人かの人たちが私に向かって手を振ってくれたり、応援うちわを振ってくれる人、中には私そっくりの人形をこちらに掲げてくれる人を見つけた。 GⅠを走る子たちほどではないけど、とてもありがたい、応援してくれる人が私にもいる。そう実感すると、ますます自信が湧いて出てくる。 何人か挟んだ後、今日までずっとマークしている、あの名前が聞こえてきた。 『5枠9番、エイジセレモニー!』 そこで初めて、私はモニーの姿を見た。 今朝見た姿から一転して、軽く飛び跳ねた後に仰々しいお辞儀をしている。 睨みつけるというほどではないけど、私は彼女からしばらく、目が離せなかった。 モニーはレースを逃げることから、やはり一定のファンがいるみたいで、悔しいけれど私よりも少しファンの人が多く見えた。 向こうも私の姿は見ているはずだけれど、一度も言葉はおろか、目も合わせなかった。 きっと、私が挨拶しているときには、今の私と同じような目をしていたのだろう。 お披露目の時間が終わった後、やっぱりというべきか、私たちは言葉を交わさずにそれぞれの控室に戻っていった。 「それでは選手の皆さん、間もなく本バ場入場ですのでご準備ください」 係のウマ娘が扉を開け、合図が入る。 その声を聞き、部屋にいる全員が立ち上がった。 私の右の席に座っていた子は、トレーナーさんと最後まで入念にコースのチェック。 私の左の席に座っていた子は、トレーナーさんと何やら、願掛けのようなものをしている。 両隣の二人が立つまで、私は目を閉じてゆっくりと深呼吸を繰り返しながら、初めて感じる高揚感の良いところだけを、ゆっくりと抽出しようと試みていた。 皆が部屋から出たのを確認して、最後にもう一回深呼吸をする。 大丈夫、必ず勝てる。 ドアのすぐそばにある姿見でもう一度服装をチェックしてから、私は地下バ道に続く廊下を歩いて行った。 道の両側に取り付けられた蛍光管で照らされる地下バ道を歩く。 しばらく歩いて、とても長い登り坂に差し掛かる。外の光が差し込んで目がくらむその道の途中で、私は、思いもよらない人影を見つけた。 私よりも少し背の高い、綺麗な葦毛をなびかせて、ひし形の髪飾りをつけている女性。 その人の脚の間からは、ウマ娘であることが一目でわかる、やはり綺麗な葦毛をした尻尾の毛がのぞいていた。 相手もこちらに気付いたようで、こちらにゆっくりと歩み寄ってくる。 「オグリ!」 私が思わず名前を呼ぶと、そのウマ娘――オグリキャップは、手を胸の高さで振った。 「やあ、イチ」 「オグリ、どうしてここに」 「君のトレーナーが知らせてくれたんだ。今日はイチのとても大切なレースだって」 「帽子とか、変装は?」 「イチにはちゃんと姿を見せて会いたくてな。ちゃんと持ってきているぞ」 ふふん、という様子でオグリはそれらを鞄の中から取り出して見せた。 「忙しくないの」 「今日はちゃんと、予定を開けてきたんだ。どうしても応援したかったから」 そう言うと、オグリは私の手を取って力強く握り、胸元に寄せた。 「イチは絶対に大丈夫だ。私が一緒に走って練習したウマ娘なんだ。だから、必ず勝つ」 聞いたことないような、低くて、艶があって、力強い声。 私と雑談しているときのような柔らかさとは異なるけれど、この時初めて聞いたオグリの声は、私の中に自然と入って、じんわりと沁みた。 「うん、ありがとう」 「最後まで必ず見ている。だから、行ってらっしゃい」 「おお、オグリやないか」 私の後ろから、こちらも聞きなれた、快活な声が響いた。 驚いて後ろを振り返ると、目線の高さにいたのは――モニーだった。 「モニー」 名前を呼ぶ自分の声が、思わず硬くなっているのに気付く。 するとまた、ちょちょちょい!と声が響いた。 「もうちょい下や!ヒドいなぁ、もう」 声に従って下を向くと、そこにいたのはオグリと同じ、綺麗な葦毛をまとめ、赤と青の髪飾りをしたウマ娘だった。 「タマじゃないか」 オグリも驚いたように声を上げている。 「オグリもかい!なんや酷いなぁ。そこまで小さくはないやろ」 「すまない、わざとじゃないんだ」 「それがいっちゃん傷つくっちゅーねん!」 タマモ先輩とオグリが、まるで学園のラウンジや教室で話すくらい、リラックスした雰囲気を作り出している。 そんなやり取りを聞きながら、私は――多分モニーも――その雰囲気に入れていなかった。 私たちは目線を逸らすことなく、獲物の動きを絶対に見逃さない猟師のようにじっ、とお互いの顔を捉えていた。 オグリの声も、タマモ先輩の声も聞こえなくなって、私たちだけが地下バ道にいるような、そんな錯覚に陥った。 それは、そのうちに地下バ道から、煽り合ったあの日の夜の寮室にタイムスリップしたようなものに変わった。 手の内は明かしていない。それでもお互いにわかるところは調べつくして、色んな人の助けを得て、アンタに勝つために必死に今日まで努力した。 絶対に勝つのは私だ――実際のところはわからないけど、モニーも私と同じことを思っているに違いない、と確信した。 先に沈黙を破り、私たちを元の地下バ道に引き戻したのはモニーだった。 「何しに来てるの、『シンデレラの小間使い』さん」 モニーの言葉に、先に反応をしたのはオグリだった。 「なっ、モニー」 オグリは少し慌てたように、私とモニーを交互に見ながら間に立った。それに対して、タマモ先輩はケラケラと笑っている。 私はそれを聞いて、特に何を思うこともなかった、というのは嘘になるけれど、怒ったりとか、そういうような感情は何も湧いてこなかった。 ただ、これを言われっぱなしにするのは、私よりもオグリの方を貶めているように思えて、それが一番許せなかった。 うろたえるオグリの前に一歩出て、モニーの目をひるまずに見据えて、言葉を返す。 「こっちのセリフよ、『積乱雲のちぎれ雲』さん」 私の言葉を聞いて、モニーが表情を変えないまま、眉を片方だけピクッ、と動かした。 アンタにだけは絶対に負けない、たとえ試合に負けても、アンタとの勝負ははっきりつける。 相手の目の中に映る自分を見つめる。 そこには、自分でも恐ろしくなるような表情をした自分がいた。 モニーのことを見ているのか、それとも自分のことを見ているのか分からなくなってきたころ、良く響く笑い声が、私たちをまた現実に引き戻した。 「あっはっは! こりゃ敵わんなぁ」 距離が近い私たちの間に、タマモ先輩が笑いながら割って入る。 「なんやお二人さん、バッチバチやないか。知らんかったで。」 そう言いながら、タマモ先輩は音が立つくらいの強さでモニーの背中を叩いて、オグリを見上げた。 「ウチのモニちゃんは強いで、オグリ。怪物の娘さんなんか一撃や」 それを聞いたオグリは、私の手を強く取り、タマモ先輩を見返す。 「私のイチのほうがもっと速いぞ、タマ。それこそ、光よりもずっと」 うん、と二人は大きく一回頷いて、私たちの背中をレース場に向かって強く押した。 私もモニーも、いきなり押されたものだからよろけてしまって、びっくりした顔でそれぞれのパートナーを見つめた。 「ほな、あっちで決着、きっちりつけるんやで! モニちゃん、負けたら承知せんぞ!」 「君はレスアンカーワンなんだ、イチ。頑張ってきてくれ!」 二人の声に押されて、私たちは光が差す地下バ道の出口に向かって、脚を揃えて歩き出した。 「ねえモニー」 私は歩きながら、どうしても確認したいことがあって、モニーに話しかける。 「何、どうしたの」 「さっき言ってたの、本気?」 「割とね」 「そう。じゃあ、私も割と本気だから」 あともう一歩で外に出るということろで、私たちは示し合わせたように立ち止まって、お互いを見合わせた。 「私、絶対にモニーより前で踊るから」 「そ。そしたら、イチはレース中もライブ中も、私より前にいることは無いから」 そう言って、人の声が響くレース場に二人で足を踏み入れる。 その会話を最後に、私たちはゲート入場まで、一言も話さなかった。 「ねえモニー」 私は歩きながら、どうしても確認したいことがあって、モニーに話しかける。 「何、どうしたの」 「さっき言ってたの、本気?」 「割とね」 「そう。じゃあ、私も割と本気だから」 あともう一歩で外に出るということろで、私たちは示し合わせたように立ち止まって、お互いを見合わせた。 「私、絶対にモニーより前で踊るから」 「そ。そしたら、イチはレース中もライブ中も、私より前にいることは無いから」 そう言って、人の声が響くレース場に二人で足を踏み入れる。 その会話を最後に、私たちはゲート入場まで、一言も話さなかった。 遠くで小刻みにトランペットが鳴らされる。 その音を合図に私たちは準備ができた子から、順番にゲートに入る。 レース直前になって怯えてしまう子がいることもあるが、今回のメンバーは全員スムーズにゲートインした。 背中の方で、扉が閉まる音がする。 これまで数十回走ってきて、すっかり慣れたゲートの景色。 私はスタートの姿勢を取る前に、肩の力を抜いて真っすぐ立つ。それから、目を閉じて深呼吸を一回。 広いコースの真ん中でする深呼吸より、狭い空間でするそれのほうが、なんだか深く息が吸える気がする。 腰を落として、目を開く。脚は肩幅の広さに開き、手を前に出す。 後は、ゲートが開いて、この視界が明るくなるのを待つ。 私は金網上になっているところの隙間から、遠くの第二コーナーを見据えた。 さあ、早く。いつでも準備は大丈夫。 早く! 視界が明るくなって、ゲートが揺れる。 ガコン、という音が鳴ると同時に、私は芝を蹴り出した。 遠くを見つめていた視点を左右に振り、周りの状況を見る。 1、2番は私と同じスタートを切ったようだ。けど、2番の子が加速を失敗して後ろに下がっている。 サッと確認した後、より人数の多い左側に素早く視界を移す。 すると、9番ゼッケン――今回のマーク相手――が、最も先に出ているのを見つけた。 スタートが上手いのは情報通りだったけど、想像以上の集中力だったようだ。 そのまま右に重心を移して、内ラチ沿いに向かっていく。 それを見た6番が焦ったのか、9番に追いつこうと姿勢を低くしている。 9番に走らされているように見えた。これは追わなくてよい。 4番の子は6番に着いていくようなペース、5番の子は私の少し前。 7、8番の子はマイペースで進めることにしているのか、無理に内側に入ろうとせず、私のすぐ隣くらいで位置を決めたようだ。 長い直線を走る中、9番が一度だけ、ちらりと後ろを確認した。 6番が競り合おうとしているのを確かに見ると、スッ、と速度が上がる。 先頭だけは絶対に譲らない――そんなプライドが垣間見える走りだった。 第一コーナーに入って、9番が「14」のハロン棒を通り過ぎてから、自分がそこに到達するまでの時間を数える。 1、2、3。ともう少し。 大体、3.5バ身。 まだ、言うほど抜けているわけじゃない。大丈夫。 第一コーナーの中間点、一番膨らむところ。 オグリの走りを後ろで見て、その走りを無意識に真似してきたけれど、オグリのコーナーリングだけは今でも真似できない。 だから、トレーナーさんに言われてきた通り、コーナーでは失速しないことを意識して走る。 丁寧に、ラチのカーブの先端を見ながら、それに身体を沿わせていく。 この一瞬だけは、位置取りや周囲のことを一旦脇に避けて、身体の傾きと重心に神経を注ぐ。 吹っ飛んでしまいそうな遠心力を半身で感じながら、反対の脚でかろうじて踏ん張る。 芝から片方の足が離れるたびに、私はレース場の外からワイヤーで思い切り巻き取られるような感覚を覚えていた。 それに抗うために、もう片方の脚に、頼むからこらえてね、とお願いをする。 速くも、上手でもないけど、何とか周りきることに成功した。 向こう正面。多分、このレースの肝になるところ。 自分の周囲をすぐ確認する。コーナーに入る前と、そこまで全体的な位置取りは変わっていない。 もしかしたら、今回コーナーが特別に得意という子はいないのかもしれない、と分析した。 それなら、この直線で前に出る準備をしなければいけない。 バ郡の中で、少し位置をズラして9番を探る。 「10」のハロン棒を通過して、登り坂に入るところだった。 短いが確実に存在する坂を、9番は脚を細かく動かすことで素早く上りきっていった。 それを見て、良く知ってるじゃない、と思わず恨み言が漏れる。ピッチ走法を身に着けていることが分かってしまった。 このコースは最後の直線200mくらいから、また同じような坂がある。 短い直線の上り坂で速度を落としてくれないとなると、最後にはスタミナを中心に据えたスパート合戦になってしまう。 9番に逃げられるのは癪にさわるけど、やや長めになるスパートに備えて、一度息を入れなければいけない、と判断した。 私たちも遅れて、同じ坂に差し掛かる。 頑張れ、がんばれ、私。 自分を鼓舞しながら上り坂で無理やり加速して、バ群にもう一度再合流する。 後ろから足音がいくつか、私の左側から聞こえてくる。遅れていた2、7、8番が追い上げてきたようだ。 この3人に私は目をつけて、ここで息を入れよう、と潜伏することに決めた。 申し訳ないけど、この三人よりは後からでも絶対前に出られる。そんな自信があった。 隠れながら、二番手にいる6番をちらりと見る。 やっぱり9番に走らされていたようで、ずいぶん消耗しているようだった。 そう思っていた矢先、第三コーナーに差し掛かる手前で、9番がわずかに位置を上げたように見えた。 もう、コーナーに入るところで急ぎ足しなくてもいいじゃない。 「6」のハロン棒の脇を、9番が通過した。 私も慌てて加速する。「6」の数字が迫ってくる。 1、2、3、4秒。 まずい。差が開きすぎている。 素早く外に出る準備をしながら、私も第三コーナーに入った。 第一、第二コーナーとは違って比較的平坦とはいえ、苦手なのは変わらない。 けれど、そんな言い訳で間に合うような差じゃなかった。 早めにスパートをかけて、最後にハナ差で9番を差し切る。 差しのコツは、終盤となる前に好位につけることが大原則だ。今行かなければ、間に合わない。 ここまでの走りか、焦りを感じたからか、足先から鈍い痛みがこみ上がってくる。 歯を食いしばってそれに目をそむけて、コーナーで加速を試みる。 お願い、少しだけでもいい、アイツに届かせないといけない。 私の作戦を周りが感じ取ったのか、全員が私よりも前に行こうと速度を上げる。 9番に走らされていた6番の子に追いついてきて、距離が縮まってきた。 こんなところで垂れるわけには行かないの、お願い、ちょっとどいて! 6番と、私の後ろからやってきた7番の速度、自分の速さの加減を考慮して、早めに横移動を決めて外に抜け出す。 第四コーナーに差し掛かって、9番の通過した「4」のハロン棒の脇を、私は3秒弱の差で通り過ぎることができた。 先頭からマークの9番、速度の落ちた6番、私がいて、すぐ後ろ内目に7番。それ以外の子とはもう、勝負しなくていい。 6番の子は200mまでに追い抜けるだろう。 7番の子は息を入れていないから、私のほうがスパートの速度も距離も勝っている。抜かれない。 だから、後は9番、アンタだけ。 だからモニー、待て。 待って! 『さあ第四コーナーを回って一番手は9番エイジセレモニー、二番手には6番リボンオペレッタ、三番手には3番レスアンカーワン、四番手には7番アウトスタンドギグが上がってきました』 『差が詰まってきた、コーナーから直線コース、さあ先頭は9番エイジセレモニー、やや苦しいか、リードはまだ三バ身ほど、残り200mを切っています』 『6番リボンオペレッタも苦しいか、外、3番レスアンカーワン上がってくる、上がってくる、7番も負けていません』 『さあレスアンカーワン差し切れるか、差が詰まっています、後100mほど、三番手争いは6番と7番』 『しかし9番だ、9番のエイジセレモニー逃げ切りを計る、3番レスアンカーワン届くか』 『粘るか、届くか、9番速度を落としません、今ゴールイン!』 『勝ったのは9番エイジセレモニー、二着に3番レスアンカーワン、三着争いは接戦、7番アウトスタンドギグがやや優勢か!』 『好スタートから勝負強さを見せました、9番エイジセレモニー。迷いのない、見事な逃げ切り勝ちでした!』 第四コーナーまでは把握できていた周囲の風景が、たった400m弱の直線を走るだけで、何もわからなくなる。 真っ黒な視界に、歓声も拍手も聞こえない。酸素を求めて荒い呼吸を繰り返して、脚は立っているだけで精一杯だ。 そんな状態でも、ゴール板の前を横切るまでに、モニーが私よりも前にいたことだけは覚えていた。 あともう少しなのに、スピードは足りていたはずなのに、なぜか届かなかった、あと数cm。 その最後の瞬間だけが、繰り返し頭の中でチラついて止まらなかった。 レース係のウマ娘たちに支えられながら、ターフの上から移動する。 おおざっぱに汗と汚れを落としてもらって、ゼッケンを取る。 ここでゼッケンを取らないのは、勝った選手だけだ。 ゼッケンの数字が良く見えるように汚れを落とすモニーを横目で見る。モニーもこちらを見ていたようで、目が合った。 それまで疲れと痛みで何も思わなかった感情が、相手の顔を見た途端にこみあげてくる。 堰だけは切らないように、頭を振って地面に視線を落とす。 「歩けますか」と係の子が聞いてくれた。何とか帰れます、と答えて、うつむいたまま歩き出す。 モニーはそのままウィナーズ・サークルに戻って、私は地下バ道に続く道へ足を向けた。 壁に手をつきながら歩いていると、何もないはずの地下バ道で、何かに優しく受け止められるようにぶつかった。 「トレーナーさん、ですか」 「お疲れ様、イチ」 顔は上げなかったが、それは間違いなくオグリの声だった。 「よく頑張ったな」 そう言うと、背中と頭の後ろに温かい熱を感じた。 「ごめん、ごめん、オグリ」 「ううん、本当に接戦だった。格好良かったぞ」 レースで自分が感じたことのないとめどない悔しさを、オグリにぶつける。 負けても見えていないフリをしてきたこれまでの悔しさや至らなさが、モニーとのぶつかり合いですべて吐き出すような勢いで、オグリに泣きついた。 泣いても泣いても止まらない気持ちを、オグリはただ黙って、受け止めてくれた。 「とてもいいレースだった。レースの中身も、それまでも。二人が一生懸命積み上げてきたものが全部表れていた」 それに、と言葉を付け足す。 「私はイチが勝っても負けても、レースが終わってすぐのイチの側にいられて、とても嬉しい」 「バ鹿、それは違うでしょ」 「違わない。私はまだ走れないが、一緒にレースに参加できているようで嬉しいんだ」 オグリが手を離れて、屈みこんだ。 「ちょっと、今は見ないで」 「イチだって、私が負け込んでしまっているときに、いっぱい支えてくれた。今は、私の番と言うだけだ」 オグリがトレーナーさんを呼ぶ。 「本当に、とってもいいレースでした」 「トレーナーさん、あの」 ごめんなさい、と言いかける前に首を横に振っている。 「謝るのはナシです。レースに勝てるのは一人だけ、そういうものですから」 「さぁ、きちんと身体の汚れを落としたら、ウイニングライブですよ。2番手ですからよく見てもらえることでしょう」 トレーナーさんが私を勇気づけようとして、明るい声を出す。 「私もすごく楽しみにしているんだ。イチのレースに割り当てられた曲は、私のお気に入りでもあるから」 「でも、いわゆるお下がり曲だよ」 「そんなものは関係ない。私は、コースの上と、ライブの上で輝くイチが大好きだ」 ストレートな好意が、疲れてしまった身体に強烈に響いた。 「オグリ、そんな、何を言って」 「あっ、もちろん、料理を作る後ろ姿も、私を待ってくれる朝のイチも大好きだぞ」 「今、トレーナーさんもいるから」 思わずトレーナーさんの方を向くと、ちょっと困ったように、ただただニコニコした笑顔を浮かべていた。 「ふふふ、早く舞台監督さんと振付師さんとの打ち合わせに向けて、身体を休めましょう」 「笑わないでくださいよ」 「風のうわさには聞いていましたが、なるほどこれは、オグリギャルと呼ばれても仕方がないですね」 「トレーナー、その呼び方は少し、恥ずかしいぞ」 「えっ、なんでオグリが恥ずかしがるのよ」 私は、二人と話していて、自然と足が前に進んでいることに気が付いた。 また、もう一度モニーと走りたい。 それで今度こそ、私が勝つ。最後に前に出て、センターで踊る。 悔しさで苦くなっていた心境は、いつの間にかすっかり抜かれて、晴れやかで、甘くて刺激のあるような、前向きな気持ちに変化していた。 『友情激突』 『根性の逃げ切り勝ち エイジセレモニー』 『先日福島レース場で行われた第6R、芝・2000mでは、ルームメイト同士のエイジセレモニーとレスアンカーワンが激突。』 『いずれの選手もデビュー時期こそ遅かったものの、今期では珍しい逃げ戦法とオグリキャップに似た走りでファンを魅了する二人。』 『1800mまでが得意なレスアンカーワンはスタミナが不安視されたが、レース中盤の潜伏作戦で最後までエイジセレモニーを追い詰めた。』 『結果こそスタミナに定評のあったエイジセレモニーに軍配が上がったが、一般戦らしからぬデッドヒート。割り当て曲だった「Never Looking Back」にふさわしいレース展開となった。』 『「二番手のレスアンカーワン選手に勝つために、何か特別なことはされましたか?」』 『「そうですね、やっぱり、煽りに煽ったことでしょうか」』 『「今のお気持ちを一言」』 『「今回私が勝ったのでもうやりたくないです、って言うのは嘘ですけど、もう一度やりたいです。応援、ありがとうございました』 了 ページトップ Part12 その1(≫62~63) 了船長22/05/24(火) 01 57 57 「……はッ!」 「はあ、はあ」 「……ふーっ。夢か」 「んん……」 「わっ、……ああ」 「ん…… どうしたんだ、イチ……」 「ごめん、うるさくして」 「いや、大丈夫だぞ…… もしかして、痛むのか」 「ううん、それは大丈夫」 「本当か? 強くしてしまっただろうか」 「平気だって。ありがとう、オグリ」 「痛んでしまっていたら、すまない」 「大丈夫だから、ちょっと、イヤな夢見ただけ」 「それはよくない。……ほら、イチ」 「わ、ちょっと」 「私といるのに、怖いものを見せてしまってすまない」 「何言ってんの」 「私はイチといると、とても幸せな気持ちになれる。だから、イチにもそうあって欲しいんだ」 「寝ぼけてるでしょ」 「そうかもしれない。でも、それもいいかもしれないと思うんだ」 「わっ」 「ふふ、イチのほっぺは、あったかくてきめ細やかだな」 「……ずるい」 「横になってくれ、イチ。手が届かないから」 「……なんか、ヤだ」 「それなら、イチが落ち着くまでこうしている」 「……許す」 「ありがとう」 「ほっぺさするの、飽きないの」 「イチは、ご飯を食べるのに飽きないだろう?」 「オグリほど食べたら飽きるわよ、たぶん」 「それと同じだ」 「どういう意味よ」 「……ね、ちょっと」 「うん」 「すこし、壁によって」 「ああ、わかった」 「えいっ」 「わッ、イチ?」 「押し付けてやるから」 「びっくりしたぞ。よいしょ」 「……オグリ、やっぱりおっきいね。右腕、痺れない?」 「大丈夫だ。……イチは、いい匂いだな」 「おんなじ匂いじゃん」 「それが違うんだ。私にしかわからないのかもしれないな」 「……えいっ」 「ふふっ。イチ、手を」 「……ありがと」 「ううん。おやすみ、イチ」 「おやすみ」 了 ページトップ その2(≫191) 了船長22/06/15(水) 23 54 52 えっ、何よオグリ。タマモ先輩も、ちょっと、もう少しゆっくり。 ここに座るんですか。 大丈夫って、何が大丈夫なのよ。いつも通りしゃべったらええって、何をしゃべるんですか。 声が綺麗だから大丈夫って、何言ってんの。 タマモ先輩も、バカなこと言わないでくださいよ。二人がメッセージを撮影した方がイイですって。私のことなんか、お二人より知ってる人、絶対少ないのに…… これを期にバーッとブレイクするって、重賞も出てないのに。 え、もうカメラ回してるんですか。 え~っと…… 「皆さん、毎日お仕事やお勉強、お疲れ様です」 えっ、もう一言ですか? うーんと…… 「あと、いつも私たちを応援してくれて、ありがとうございます」 「私たちは、もしかしたら皆さんに名前を知られることなく、ある意味、生まれることもなかったかもしれません」 「二人みたいに特別な成績を残しているわけでもなく、それでも気にかけてもらえて」 「本当にありがとうございます」 「もしも今日がお誕生日だったり、良いことがあった人たち。おめでとうございます。何か、美味しいものを食べてくださいね」 これでいいですか。 オグリ、なんで涙ぐんでるの。タマモ先輩も、わざとらしく感心して…… もう、キッチン戻ってもいいですか! できたら二人にも分けてあげますから。 お、オグリ!すぐにお腹を鳴らさないの! 了 ページトップ Part13 その1(≫46~49) 了船長22/06/23(木) 01 33 22 「戻ったでー、お、なんかいい香りがするやんけ」 「お帰りー。そうでしょ」 「今日はモニちゃんの手料理かいな。珍しいやんなあ」 「そうそう。でもイチから自分で作るのは大変なんで、ケンタッキー買ってきちゃった」 「せやなあ、自分でそろえるんは大変……って、なんやとお! ケンタッキーを買ってきたァ!?」 「いいじゃないっすかタマさん。美味いっすよ」 「そら美味いにきまっとんねん! このバケツ一つでいくらしたんや、言うてみい!」 「えー、3000円くらい?」 「ちゃう! 10個なら2450円で、12個なら2940円や!」 「ちゃんと覚えてんの、すーご」 「こんなんクリスマスでもないと買われへん高級品やって言うのに……!」 「自分たちで稼いで生活してるんですから、もう誰も文句言いませんよ」 「せやけど、将来のために切り詰められるところは切り詰めんとあかん」 「たまーに贅沢したって、ウチらの稼ぎならヘーキですよ」 「こんな食事、家が2軒も3軒も建ってしまうで。せめて、クーポンとかは使ったんやろ」 「いや、帰り道でフラっと立ち寄ったんで、特に」 「な、なんてことや…… 家計の破滅や……」 「なんでそんなにショック受けてるんですかー」 「受けるやろこんなん! たった二人で、ケンタッキーのバケツ一つ分やぞ! 贅沢がすぎるっちゅーねん」 「バケツじゃなくてバレルっす、たまには贅沢もいいじゃないですか」 「こんな、鶏肉とちょっとのビスケットだけでお腹をいっぱいにしようなんて、おとん、おかん、チビ達、モニちゃんをどうか許してやってくれ。堪忍やで……」 「買っていってあげたらいいじゃないですか」 「そういうんとはちゃうねんモニちゃん」 「なにがですかー」 「ウチらはな、こういう立派なもの食べるときにはな、気後れしてしまうんや」 「そうですかー」 「分からんって感じやな」 「いや、分かんないすね。美味しく食べたらいいのに」 「こればっかりはな、そうもいかんのや」 「そうっすか……そしたら、これはどうですか」 「これ、って、刻み野菜やんけ」 「あ、それは付け合わせというか、これから一緒に食べる用。そうじゃなくて炊飯器のほう」 「なんや、ケンタッキーとごはんを一緒に食べようっちゅうんか」 「そういうことです、ほら」 「うわ! なんやこれ!」 「ふふふ、驚いたでしょう」 「な、なんでケンタッキーが、ごはんと一緒に炊かれとるねん」 「ケンタッキーの炊き込みご飯、です」 「な、なんて?」 「ケンタッキーの、炊き込みご飯」 「な、なんやってー! 炊き込みご飯やと?!」 「うーん、いいリアクション」 「な、なんで、炊いてしもうたんや」 「え、なんでって、そりゃ炊飯器ですけど」 「理由や!何を使ったかってことちゃうねん!」 「ああ、そういう。ご飯を普通に研いで、炊飯器にセットしてお水を張る。塩と胡椒を振って、上からまるっとチキンを載せちゃう」 「え、そのまんまでええんか」 「そーです。米研いで、水張って、チキンのせる。で、炊く」 「えええ、その結果がこれか」 「衣がイイ感じにふやけて、お肉と骨から出てきたエキスがご飯に染みわたり、味付けのスパイスがご飯とよく合うらしいんですよ」 「よく合うらしい……って、作ったことないんか」 「ええ。確か、身をほぐすようにチャッと混ぜて…… はい、お先に味見どうぞ」 「む、どれ…… うわ!」 「うまい?」 「うまい! むっちゃうまいでコレ!」 「おおー、どれどれ…… うわ、さすがアイツ、良く知ってんなー」 「なんて、なんて贅沢な炊き込みご飯なんや。一杯100万円は下らんで」 「ンなワケないじゃないですか。これだけだとさすがに身体に悪そうなんで、刻み野菜を混ぜてレタスと一緒に食べましょ」 「ウチのチビたちに作ってやったら、絶対に喜ぶやろなあ」 「あんまりチビって言うと、またキレられますよ? お家までアイサツに行きましたけど、チビって感じじゃあもうないっすよ」 「ウチにとっては、いつまでもチビなまんまや」 「そしたら、我が家のおチビさんも早く、手洗ってきてください」 「なんやとおー。しゃーない、洗ってきたる」 「柔軟剤のセット、忘れないでくださいよ」 「分かった。じゃあ、ウチも洗剤混ぜて……って、それは洗濯機やろ!」 了 ページトップ その2(≫95~97) 了船長22/07/04(月) 02 16 22 「待って、オグリ」 夕暮れの日差しが差す教室、二人きりのおしゃべりが終わって、教室を去ろうとするオグリの手を、私は引きとめた。 普段なら、私が自分からオグリの手を握ることなんてなかった。なにか、オグリに負けてしまったような、惚れてしまったような気がしてしまって嫌だからだ。 でも、燃えるような眩しい橙色の光に照らされた葦毛の後ろ姿を見たとき、今日だけは、なぜだかわからないけれど、オグリに触れていないと彼女がどこかに消えてなくなってしまうような、そんな恐怖にも似た感情が私を突き動かした。 オグリをこの手に引き留めて居なければ、あの教室の引き戸を一歩でも先に踏み出せば、途端に泉下の人になって、もう私のごはんも食べてくれなくなってしまって、煙を食べるだけになってしまうのではないか、と思わされた。 認めたくないとか、こっぱずかしいからとか、そんな普段の思いをすべて跳ねのけてしまうほど、強い気持ちが私の全身に宿っていた。 「どうしたんだ、イチ」 オグリが驚いたように目を丸くして、こちらに振り返る。透き通る葦毛と、同じように透き通った宝石のような目に私が映っている。 私はいつもの自分じゃ考えられないほど、今自分の目の前にいるオグリキャップを失いたくないと思った。 「オグリ」 「うん」 「今日は、一緒に帰ろ」 一秒だけでも長く、オグリの存在を確かめたいと思った。誰かに見られたら、またオグリギャルとかなんとかからかわれるだろうけど、それでも構わない。 私の提案に、オグリが顔をほころばせる。 「うん。一緒に帰ろう」 その返事に、私はひどく安心したような気持ちになった。 オグリが私の手を引いて、先に教室を出ようとしたところを、私はまた引き留めた。オグリが後ろにつんのめる。 「待って、私が先に教室出るから」 アンタが先に出て行っちゃダメだ。私がオグリの帰り道を先導して、寮まで連れて帰るんだ。そうじゃないと、どこかにふらっと消えてしまって、離れ離れになってしまうかもしれない。 混乱しているような表情のオグリの横を少しだけ足早に通り過ぎて、半分ほど開かれた引き戸の前に立つ。 私は緊張しながら、斜陽でどこか不気味に光る引き戸に手をかけて、すべて開け放った。 本来、誰もいないはずの教室に二人だけで残っていたから、廊下の照明は消されていて、教室の壁と夕日が作る影が底冷えするような暗闇を生み出していた。 暗闇の中に目をこらすと、もちろんそこには学園の壁があるだけなのだが、何かが見返してきて、こちらにおいで、と声をかけてきている気がした。 初夏には無いような――イマドキ、初夏なんてものもないくらい暑いけれど――不気味な寒さが、体の中から湧き上がってきた。 つないでいるオグリの手は、きっとまやかしだろうけれど、どういうわけか冷たく感じられた。その冷たさが末恐ろしくて、私の熱を、命を少しでも彼女に移すつもりで、強く握り直す。 「イチ、どうしたんだ」 引き戸を開けただけでしばらく歩きださない私を怪訝に思ったのか、オグリが後ろから声をかける。 「ううん、なんでもない」 「そんなに強く握らなくても、私は迷子にはならないぞ」 「ダメ、今のオグリは絶対にどこかに消えちゃうと思う」 普段なら、クラスメイトやタマモ先輩たちにからかわれているだけの言葉も、今の私には冗談に聞こえなかった。 「……そんなに言わなくてもいいじゃないか、イチ。なんだか様子が変だぞ」 オグリがむくれるように言って、握っている手を少し動かす。 後から思うと、私はあの時確かに、ちょっとおかしかったと思う。きっと誰に言っても分かってもらえないだろうけど、私は何かを思い込んで仕方なかった。 私は振り返って、オグリに向き直った。 「オグリ」 「うん」 「明日の朝も、オグリに会えるよね」 そう尋ねる私の口元は、きっと初めてのレースに出走する時くらい震えていたと思う。 「ああ、イチ。必ず会える」 オグリは何を疑うこともなく、そう答えてくれた。そのなんでもない答え方が、私を落ち着かせてくれた。 「イチのお弁当が楽しみだ。それで朝のトレーニングも頑張れる」 「また、お野菜ばかりでも食べてくれるよね」 「もちろんだ。カフェテリアでは食べれないようなものも入っているから、嬉しいぞ」 きっと私も、また朝早く起きて、クリークさんに挨拶しながらお弁当箱に料理を詰めるのだろう。 すっかりオグリの調子を上げるようなことになってしまって、当初の目論見からは完全に外れてしまっているけれど、それをどこかで楽しんでいる自分にもうすうす、気づいていた。 いつか差し入れの本当の目的を話さなければいけない時が来るだろうけど、それでもオグリはきっと、「気づかなかった」と言ってくれるのだろうとも思う。 「もうすぐ日も暮れてしまうぞ。……もしかして、帰り道が分からなくなってしまったのか?」 「そんなわけないでしょ。忘れ物がないか、ちょっと思い出してたの」 いくらなんでも明け透けなウソをついて誤魔化す。 私は手をつなぎ直して、前を向いた。ふう、と一つ呼吸をして、脚を暗闇にとられないように、床を踏みしめて教室を出る。一度出てしまえば、そこはなんてことのない、いつも通りの学園の廊下だった。 二人で昇降口に向かって歩く。私たちの足音が、誰もいない空間に響いて壁に吸われながら消えていく。 昇降口で靴を履き替えなければいけなくなって、手を離そうとオグリが力を抜いたとき、私はもう一度だけオグリを引き留めた。 「寮に帰るまで、側にいて」 「うん。分かった」 下駄箱の向こう側にオグリを見送った後、私も自分のローファーを取り出して上履きをしまう。この短い時間でも、オグリが消えてしまわないかという心配が頭をもたげていた。 急いで履き替えながら慌てて外に出ると、オグリは確かにそこにいた。 「良かった」 「約束したからな。今日はイチの側にいる」 オグリがこちらに手を伸ばして、私の手を取る。 「帰ろう、イチ。おなかがすいてしまった」 「うん。帰ろう」 寮までの短くない道のりを、地平線の向こうから照らす明かりを頼りにして、私たちはお互いに確かめ合うように、手をつないで帰った。 了 ページトップ その3(≫161~163、≫165~167) 了船長22/07/16(土) 21 15 15 「ヒマ」 「そうねえ」 「せっかくの中休みだって言うのに、どうして何もやることが無いのか」 「休みなんだからそれでもいいじゃない。お茶飲む?」 「飲む。いれて」 「ヤだ。お茶ぐらい自分でつぎなさいよ」 「んえ~、じゃあメンドい」 「なんなのよ、もう」 「トレーナーの指示を守って、じっと身体を休めなさい~~」 「その姿勢、首、痛くならないの」 「痛い。スマホも持ちにくい」 「せめてベッドに寝転ぶくらいにしときなさいよ」 「は~い」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「……あ」 「……ちょっと、欲しいな」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「ねえイチ、ゲーセン行かない?」 「何、藪から棒に」 「え、中学んときゲーセンとか行かなかった感じ?」 「行ったことあるけど、ずいぶん急だなって」 「じゃあいいじゃん、今から行こ。どうせ二人とも休みなんだし」 「このあたりにゲームセンターなんてあるの?」 「あるよ。本町のほう」 「そうなんだ。いつも府中駅の方に言ってたから知らなかった」 「『デュエルウノ』ってゲーセン知らない?」 「あー、CMで見たことあるかも」 「よし決まり。着替えよーっと」 「なんで急に行こうと思ったのよ」 「別に休みだし、あんまりヒマだから」 「そう」 ⏱ 「こっちのほう、来たことなかったな」 「マジ?」 「うん、行きなれてる所しか、なんだかあまり行きたくなくて」 「そんなんじゃ、イチの学生生活はキッチンとレース場でオシマイになっちゃうぞ?」 「……スーパーも行ってるし」 「本町駅から直通の通路とか、行ったことない感じ?」 「うん」 「へー。もったいない」 「何かあるの?」 「いや別に。フツーの通路」 「なんなの……」 「ほらほら、あれ」 「あ、ほんとだ。ボウリングのピン…… なんか、思ったよりデカくない?」 「ゲームだけじゃなくて他のも遊べるからね。よくトレーナーとデートしてる子もいるらしいよ」 「『お出かけ』でしょ」 「あんなの、誰がどう考えたってデートよ」 「まあ、それはそうだけど」 「この辺のアパートに、先生とか教官とか住んでるのかなー」 「さあ、どうだろうね」 ⏱ 「そんな学生と大人のカップルはよく、この辺のクレーンゲームを遊ぶんだとか……」 「だから、そういうのじゃないでしょって」 「だいたい、自分の担当だったり、憧れのウマ娘のぱかプチを取って喜ぶんだってさ」 「いいよね、自分のぱかプチ」 「え、イチは羨ましい感じ?」 「いや、ちょっと恥ずかしいけどさ、応援してもらえてる形があらわれてるみたいでいいじゃない」 「私はヤだなあ」 「そうなの?」 「なんか、特にそういうののために走ってるワケじゃないし」 「そう」 「勝ちたい相手がいて、そいつに勝つために頑張ってるから」 「何よその目。……次は、負けないから」 「こっちまでおいでよ、イチ」 「言われなくても、絶対に差し切ってやるわ」 「今日はそーゆーの、ナシにしよ。ふっかけたのは私だけどさ」 「分かった。ところで、遊ばないの?」 「いや、それが…… あ、あった」 「あ、タマモ先輩の。え、モニー、マジ?」 「いいでしょ別に」 「いや、なんかすごい意外。こういうの欲しがるタイプじゃないと思ってた」 「タマセンパイのは欲しくなったの。たまたま、スマホいじってたら見かけたし」 「ふーん。ま、秘密にしておいてあげますよ」 「マジでタマセンパイに言ったら引っ叩くから」 「言わない言わない」 「ぜったいウソ。絶対」 「言わないって。信用ないなあ」 「アンタはいいけど、うっかりオグリに話されたら絶対漏れる」 「わかったわかった、気を付ける」 「……今日、どのくらいお金ある」 「んー、出せて1000…… 1500円くらいまでかな」 「うし、私のと合わせて約3000円ね」 「頼むから自分の分だけで取ってよ」 「じゃ、タマセンパイの下にあるオグリのやつも取ってあげるよ」 「え、私のお金で?」 「いや、私の分で両方取れたらイチの出費はナシ。どう?」 「分かった。お願いだから、手抜かないでよ」 「任せときなさい、200円で取ってやるわ」 ⏱ 「モニー、頼むからこれで終わらせてよ」 「まあ、まあ」 「もうだいぶずらしたから、これで落とせるはず」 「信用できないわ」 「見てなって…… あっ、ああ」 「ちょっと、ホントに」 「お願い!」 「あっ!やった!」 「よっしゃー! 取れた」 「私の分まで使って、やっとタマモ先輩か」 「まーまー、もう300円くらいはあるでしょ。取ったげる」 「オグリのはいいよ、私は欲しかったわけじゃないし」 「いーや、こうなったらヤケ」 「他人のお金でヤケになるのはやめて。まあいいけど。はい」 「ありがっとう。それでは…… お、なんかいい感じじゃない?」 「確かに、取れちゃいそう」 「お、おお、行け、行け! やった!」 「ホントに100円で取れちゃった」 「ね、言ったでしょ。取れるんだって。はい、これ」 「ありがと」 「うーん、取れた取れた。楽しかったー。そんじゃ帰ろっか」 「え、このまま持って帰るの」 「そんなワケないでしょ。店員の人に言えば袋くれるよ」 「そうなんだ」 「そそ。すいませーん」 ⏱ 「サンキュー。楽しかった」 「出世払いで今日の分、返してよね」 「あー、もう忘れちゃった」 「これに関しては絶対逃がさないからね?」 「おお、こっわ」 「ふう。なんかお腹減っちゃった。帰ろっか」 「門限まではまだ時間あるし、プリでも取らない? 『@アオハルⅡ』ってのが楽しいのよ」 「うん、いいよ。私、あんまり絵描くのとか得意じゃないけど」 「ふふふ、イチ、ホントにゲーセン行ったことある?」 「あるってば。どうせこっちでしょ」 「あーお客さーん、プリクラは大体地下にあるんですよー」 「もう、先に行ってよ……」 了 ページトップ Part14 その1(≫23~25) 了船長22/07/23(土) 22 03 01 〇早朝。美浦寮キッチン。すでにキッチンの電気はつけられており、薄暗い廊下からそれが漏れ出している。 「ふぁ…… おはようございま、す?」(従来イチちゃん) 「あ、クリークさん、おはようございま……えっ」(高身長) トしばらく双方沈黙。そのうち、鍋が噴きこぼれる。 「あの、お鍋」 「え、わ、わあぁ」 ト入り口から駆け寄って、素早くコンロの火を切る。 「すみません、ありがとうございます」 「いえ、なんだか驚かせてしまったみたいで」 「てっきり、クリークさんが先にいたのかと。背丈もよく似ていたし」 「私も、クリークさんが遅れて来たのかなって」 ト双方顔を見合わせる。沈黙。 「あの、初めまして、ですよね」 「あっ、そうですね。初めまして」 「初めまして」 トやや沈黙。切り出すように話す。 「あの、何か手伝いましょうか」 「あっ、ありがとうございます」 「もしかして、何か煮てましたか」 「ひじきです。昨日買ってきていたので」 「あ、本当ですか。私の分使ってもらって大丈夫ですよ」 「あれ、冷蔵庫には1袋しか…… すみません、使っちゃいました」 「あれっ、そしたら勘違いかも、大丈夫ですよ」 「今日、買ってきておきましょうか」 「いえ、他のメニューで用意するので」 ト双方自分の作業をする。ややひと段落したところで、口を開く。 「朝ごはんですか?」 「いえ、お弁当です」 「お弁当、自分で作ってるんですか」 「はい。といっても、私のではないんですけど」 「えー。そうなんですね」 「はい。お昼はカフェテリアで食べてます」 「余った分は朝ごはんですよね」 「そうですそうです、意外と、そういう余ったところがおいしいんですよね」 「ふふ、わかります。私もよくお弁当作るので」 「本当ですか! キッチンにはクリークさんと同じくらい通ってると思っていたので、今まで会わなかったのが不思議です」 「確かに。でも、私は1週間ずっと通うこともありましたけど……」 「私も、1週間通い続けるときがありました」 ト沈黙。しばらく視線を合わせながら、間をおいて口を開く。 「……まあ、偶然ですかね」 「そうですね…… 良かったら、朝ごはん、一緒にどうですか」 「え、いいんですか?」 「はい。と言っても、ひじきの煮物はほとんど使っちゃったし、他の料理も詰めちゃうので……」 「そしたら私、野菜の切れ端でお味噌汁作ろうと思うんですけど、どうでしょう」 「いいですね、私はお漬物切っちゃいます」 「ありがとうございます、嬉しいです」 「昨日、美浦寮の寮長さんからぬか漬けを貰ったんです」 「えっ、私も貰いました」 トお互い見つめ合いながら沈黙。やや間をおいて、口を開く。 「……冷蔵庫」 ト二人で手を止め、冷蔵庫に寄る。 「……やっぱり、一本しかないですね」 「うーん、貰ったと思ったんですけど……」 「いや、私も絶対に貰ったんですよね」 「……まあ、いいか。お腹減りましたし」 「そうですね。はやく食べちゃいましょう」 ト二人で朝食をとる。レースの成績やお互いのルームメイトが似ていることの話で盛り上がる。 「ごちそうさまでした」 「ごちそうさまでした」 「いけない、もうこんな時間」 ト時計を見ながら素早く立ち上がる。 「そしたら、私は少し時間あるので、洗っておきますよ」 「ホントですか。助かります」 「ひじきの煮物、とても美味しかったので、そのお礼です」 「ありがとうございます。嬉しいです」 「私も同じような味付けにするので、同じような人がいて安心しました」 「私こそ、お味噌汁、ありがとうございました」 「いや、あんなめちゃくちゃなお味噌汁で、すみません」 「ああいうお味噌汁、料理をするようになってから好きになったんです」 「えっ、私もなんですよ。作ってみると、意外と美味しいじゃん、って思って」 「そうそう。キュウリとかぼちゃを一緒に入れちゃったりして」 「分かります! そこにとき卵とか流しますよね」 「すごい! なんだか私たち、気が合いますね」 「また明日会いましょ、さっきの煮物のレシピ、もしかしたら同じかも」 「ふふ、そうですね」 「ありがとうございました、そしたらまた明日」 「はい、また明日」 ト食器を水につけながら物思いにふけるイチと、お弁当を抱えながら走るイチ。 「「あの人、一体誰だったんだろう?」」 了 ページトップ その2(≫47~49、解説:≫53) 了船長22/07/27(水) 21 22 50 「オグリ、イチに食べ物クーイズ!」 「何よモニー、藪から棒に」 「おういあんあ」 「オグリは飲み込んでから喋りなさいよ!」 「うああい」 「はあ……」 「お食事中ですが問題です。これは何」 「えい」 「だから飲み込んでからにしなさいって」 「ルールは簡単、お二人で食材や料理の名前を答えてもらいます」 「簡単そうじゃない」 「答えていただきますが、同じ答え方は禁止とします」 「お味噌汁だったら、どっちかがおみおつけ、って言わなきゃいけないのね」 「そう!それじゃあ早速行きましょう」 「うん。よろしく頼む」 「飲み込むの早っ!」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「一問目。これは何」 「ネギだ」 「答えるのも早っ」 「オグリ正解! さあイチ選手、違う答えを出せるのか」 「えーと…… ひともじ」 「正解! では二問目。これは何」 「サツマイモだ」 「サッ……ちょっとオグリ、早いって」 「な、す、すまない……」 「オグリ正解! 対するイチ選手は?」 「え、えーと…… おさつ」 「おおー。では3問目。これは何」 「大根だ」 「だっ、は、早い……」 「イチ選手、出遅れ癖でしょうか。オグリ選手に遅れております」 「ぐっ…… えーと、なんだっけあれ」 「さあ、答えることはできるのか」 「えー、からもの!」 「んっふふ、正解です」 「どうしたんだ、モニー」 「何がおかしいのよっ」 「いや、なんでもない。なんでもない。さあ4問目、これは何」 「これはなんだ?」 「お味噌!」 「イチ、ブー。はずれです」 「えっ、どう見てもお味噌じゃない」 「ということは…… にんにく味噌だ!」 「オグリ、大正解! やるねえ」 「ちょっと、にんにく味噌なんて知らないわよ!」 「イチ、にんにく味噌を知らないのか?」 「それは知ってるけどっ」 「んっ、アッハッハッハ、耐えらんない」 「にんにく味噌はその言葉には無いじゃない」 「えー、じゃあ今作ってもらってもいいですよイチ選手」 「くっ…… にもじむし、でいいのね」 「あーダメだ、面白い」 「もう許さないからね!」 「わっ、怒った、逃げろっ」 「ちょっと待ちなさい、モニー!」 「あっ、イチ、モニー……」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「なぜイチはあんなに、顔を真っ赤にしていたんだろうか……」 「そうやなあ。クイズをやっとっただけっちゅーことやしなあ」 「モニーは多分、私に問題を寄せてくれていたとは思うんだが」 「寄せるというんは?」 「食材を使ったクイズだったんだ」 「ほう。何が答えやったん」 「確か、ネギ、サツマイモ、大根、にんにく味噌……」 「にんにく……? あー!」 「何かわかったのか、タマ!」 「……いや、なんもわからん!」 「な、タマ?」 「オグリが自分でわからんとあかんこっちゃな~」 「た、タマ! 教えてくれてもいいじゃないか」 「それはそれとして、モニちゃんはちょいととっちめんとあかんなあ」 「叱るのか?」 「ちょいと、おちょくりかたがやんちゃ過ぎな感じがするからな」 「ううん、また一人だけ、置いてけぼりになってしまっているような…… どういうことだったんだろうか?」 了 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 解説 ほのぼの日常SSのつもりで書いたら、なぜか謎解きみたいになってしまっていて申し訳ないです。そんな考えていただくほどのものではないのです( ひともじ、おさつ、からもの…… これらはすべて、「女房言葉」と言われているものです。有名なところではおかか(鰹節)、おもちゃ(遊具。もともとは「もてあそび」から、「持ち遊び」となり、「もちゃそび」と訛って、今の形に)、浴衣(もともとは「湯帷子」(ゆかたびら))などです。 ひともじ(ネギ)と、にもじ(にんにく)は早押しクイズでも頻出問題なので有名かも。 にんにく味噌の女房言葉はないので、「にもじ」(大蒜、にんにく)と「むし」(お味噌)をくっつけて造語にしました。本当は無い言葉なので、イチちゃんが怒ってます。博識イチちゃんカワイイ! 自分の中では、「イチちゃん=左耳に飾り=牝馬」という図式がすっかり定着してしまっており、だからこそ元が牡馬のオグリとのカップリングに華を添えているなと思っているんですが、その要素を前面に押し出したらどうなるんだろうと考えた結果生まれたSSでした。 女房言葉をどこかで知ったイチちゃんと、全く知らずに素直に答える(牡馬)オグリキャップ、そしてそれを面白がるルームメイトのモニちゃん…… 最高。という場面だけあったので。 ちなみにタマモ先輩は年長の博識な方なので、モニちゃんはしっかり怒られます。南無。 ページトップ その3(≫176~178) 了船長22/08/18(木) 15 53 04 そのウマ娘はあの日、主役ではなかった。 何かに勝っている訳ではなかった。もっと正確に言えば、彼女は競技に参加すらしていなかった。 「フレーッ、フレーッ、トーレーセーン!」 左耳に髪飾りをつけているのに、学ラン姿。でもなぜか前ボタン全開でサラシを巻いて、ただ羽織っただけみたいな着こなしをしていて、同じような服を詰襟 まできちんと留めて着こんでいる風紀委員の人たちとはまるで見た目が違っていた。彼女の姿は、なぜか僕の目を捕まえて離さなかった。 彼女の姿が美しいと思った。格好いいと思った。主役の選手ウマ娘たちを差し置いて、広げた腕も、すっくと伸びた脚も、言葉は悪いけど、一昔前の不良ドラ マに出てくるようなスタイルの学ラン姿も、とてもとても魅力的だった。 普段は朝夕に生徒たちを迎え入れ送り出している大きな校門は、きっと普段ではありえない熱気と人で満ち溢れていた。 その熱気に負けることなく、むしろ盛り立てるような勢いを持って、彼女は自分の声を空気とスピーカーに響かせていた。その声を受けてか知らずか、選手た ちの勝ち気もお客さんたちのエールも盛り上がっていくようだった。 たくさんの主役たちがいる中で、やっぱり彼女は、僕の目をくぎ付けにして離さなかった。そして、僕の三つめの目になっていたカメラのレンズもまた、自然 と彼女に向けられて、シャッターを切っていた。 競技が終わった後、会場いっぱいのお客さんやウマ娘たちを何とかかき分けて、僕の脚は一人のウマ娘の所へ向いていた。 「あのっ、すみません」 僕は彼女に声をかける。快晴の太陽が校舎や屋台に反射して、彼女をひと際輝かせるためのスポットライトのようになっていた。ドキドキしたけれど勇気を出 して、彼女の顔を真っすぐ見上げる。 ウマ娘は皆、端正な顔立ちをしている。けれど彼女は、他の誰にも負けないくらいに美しく見えた。 どういうわけか、胸が高鳴る。これはきっと人の波を泳ぎ切って走ったからに違いない。ぜいぜいと息を切らす自分を見て、彼女が少し心配そうに返事をして くれる。 「大丈夫ですか、ええと、あなた」 少しためらうように僕のことを呼ぶ。確かに、いきなり苦しそうにしてるお客さんから話しかけられたら、どうやって返事をすればいいか分からないだろうな 、と思った。 「はい、大丈夫です。ありがとうございます」 「汗凄いですけど、もしよければ、救護所まで案内しましょうか」 心配そうな表情で僕の顔を覗き込む。正直、案内されたいなと思った。けど、それでは案内されただけで終わってしまう。なんとか会話を続けないとダメだと 思い、質問を投げかける。 「あの、どうして学ラン姿なんですか」 「えっ?」 「いや、左耳飾りの子で学ラン姿なのはあなただけなので」 ああ、と納得したような顔をしている。コロコロと変わる表情が愛くるしく思えた。 「実はこの服を着るはずだった子が体調を崩してしまって。」 「えっ、そうだったんですか」 「本当はチアの団服だったんですけど、皆が『やれ、やれ』って」 「元々の方は大丈夫ですか」 「軽い熱中症みたいで。今日は一応休もうって」 事情が分かって、自分の中の謎も解けた。 「貴女は走らないんですか?」 「いいえ、私は今回は応援団ですから」 「あっ、そうではなくて、レースのことで」 彼女はそういうことか、というようにポンと手を打つ。その仕草がかわいらしく見えて、僕はまたドキリとした。その時の自分は、きっと彼女がどんなことをしてもいちいちドキドキしていたと思う。 「3週間後の福島レース場で走る予定です」 3週間後の福島レース場。茹だりきった僕の頭は、その言葉だけは必ず忘れないように深く深く記憶した。 「今度は僕が応援しに行きます。必ず行きます」 僕の声と顔が相当必死に見えたのだろう、彼女はふふ、と口元に手を当てて笑ったあと、僕の手を取った。 白手袋のすべすべとした触り心地と、布の上からでもわかる、彼女の手の柔らかさと熱、そして手を握ってくれたという事実が、僕のことを急激に襲う。 その瞬間、理由は分からないけれど、僕の意識はこの世ではないどこかに飛んで行ってしまった。 今でこそその理由ははっきりしている。なぜなら、今でも毎日彼女と顔を合わせて言葉を交わすたびに、この時ほどではないけれど、同じ気持ちになるからだ。 でも、当時の僕は――彼女も若かったから、その感情に言葉を当てはめることができなかった。ただ、果てしなく大きな熱だけが僕にはあった。 「ありがとうございます。応援団に入って、まさかそんなことを言ってくれる人がいるなんて」 「いや、えっと、その」 「必ず来てくださいね。待ってます」 そう言って、くしゃりと笑う。 その言葉のあと、僕は彼女と何を離したのかは何一つ覚えていない。 なぜなら、次に覚えのあるあの日の記憶は、クーラーで冷えた救護室の天井の景色だからだ。 枕の上で首を左右に傾けたときに見えた、サイドテーブルに置いてあった一枚の手書きのメモ。「体調は大丈夫ですか。福島レース場で待っています、私も頑張ります!」と書かれ、綺麗に折り込まれたノートの切れ端。 そのメモは、このヒミツの写真集の最初のページの左上に、彼女の学ラン姿の写真と一緒にしまってある。 これだけは、彼女はともかく、愛娘にもずっとナイショだ。 了 ページトップ Part15 その1(≫176~178) 了船長22/08/18(木) 15 53 04 「ねー、これなんかイチに良く似合わね?」 「まーじで? やりすぎっしょ。そこまで行かない行かない。ウチ的にはこっち」 「見して見して…… あー、たしかにイイね」 「目の付け所が違うんでね」 「アンタら、本人抜きで何の悪だくみよ」 「おお、ウワサをしたら」 「本人様的にはこの二つのうちならどっちが好き?」 「何が? えーと……」 『比べ越し 振分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき』 『いかばかり 嬉からまし もろともに 恋らるる身も 苦しかりせば』 「一体何見てんのアンタたち」 「和歌」 「そのうちの短歌ね」 「二人ともスマホめちゃくちゃデコるようなヤツなのに、勉強とか知識が多いのなんかムカつくわ」 「かっちーん。傷ついた」 「ウケる、怒るのか傷つくのかどっちかにしとけって」 「で、イチはどっちが好き」 「うーん…… 二つ目かなあ」 「っし!」 「うわー、マジかー」 「恋って入ってるし、なんだか良さげ」 「イチがそんな女だったとはー」 「確かに、ヤな女ー」 「何、何、何なのよ。分かんないんだからしょうがないじゃない。ちょっと、ワザとらしくくっつかないでって!」 了 ページトップ その2(≫156~161) 了船長22/09/12(月) 01 18 04 半月切りにしたにんじん、輪切りのれんこん、ささがきにしたごぼうと、斜切りにしたねぎ。 柔らかくこねたつみれに、旨味を取るために少しだけ入れた豚バラ肉。食事調整をしてる子もいるだろうから、ほんとに少しだけ。 お出しはお醤油ベースで、濃い目に味付をする。小皿にとって、ちょっと味見。 うん、おいしい。しょっぱくて、あったまる。 お鍋の様子を見ながら、グリルの中を覗く。普段は自分用の焼き魚なんかを調理しているけど、今日は違う。銀に光って脂を照らす白身魚の切り身はそこにはいなくて、白身魚よりももっともっと真っ白な――でも同じ焼色で焦げ目をつけている、まんまるなお 餅たちと目があった。 お餅を焼く方法はたくさんあるけど、グリルで焼くときは注意が必要だ。ちょっと目を離したスキに、文字通り「燃える」。焼き餅を焼くなんてもんじゃなくて、本当に火がつく。特にスーパーで売ってる切り餅はあっという間に火がついて、その後すぐ炭にな る。私も、夜食で食べようとして2回くらい燃やしてしまった。 グリルを引いて、お餅をひっくり返しながら、柔らかさを確かめる。うん、もうお鍋の中に入れてもいいかな。 そう思っていたら、お鍋の煮える音や換気扇の音、クリークさんがパタパタと盛り付けの準備をしてくれる音に混じって、ひときわ目立つきらきら星のメロディが聞こえてきた。 その音に反応して、私のお腹も少しだけぐぅ、となった気がする。ご飯が炊けたことを知らせる、しあわせな音だ。調理を始めてからもう1時間が経って、下ごしらえをいれたら2時間以上キッチンに立っていたことに気付かされた。 食器を用意していたクリークさんが、炊飯器に小走りで駆け寄って開閉ボタンに指を置く。こころなしか、クリークさんもワクワクしているような、浮足立っている様子だった。 パカッ、と蓋を開けると、素敵な白い蒸気が上って、それと一緒にクリークさんも「わぁ」と嬉しそうな声を上げる。キラキラした笑顔をこちらに向けて、私を呼ぶ。 「イチちゃん見てください、とっても美味しそうですよ」 お鍋とグリルの火を弱くして、クリークさんのもとまで近寄る。ふわり、としあわせなご飯の香りに混じって甘く香ばしい匂いをまとった蒸気が、私の鼻孔を駆け抜ける。 炊飯器を覗き込むと、そこには1時間以上前に私が思い描いていた通りの、小さい頃にたくさん食べた思い出そのままの栗ご飯が、たっぷりと、燦々と輝いていた。 「そしたら、もうよそっちゃってください。私もお吸い物盛り付けるので」 私は、思い通りに炊けていた喜びをクリークさんに悟られないように、あえて淡々と指示を出す。だって、なんだか恥ずかしいから。ニヤけているであろう表情も見られたくないから、コンロの火加減を直すふりをして顔も隠す。 キッチンの向こう側にいるお腹をすかせた寮生達にも栗ご飯の匂いが届いたのか、みんながドヤドヤと受け取りの列に押し寄せる音が聞こえてきた。 「えっ何クリークさん、今日の夜食マジ豪華じゃん!」 「そうなんです、イチちゃんが一生懸命作ってくれたんですよ」 豪華なんて言っても、そんな大したものじゃないですよ――とも返事はできなかった。恥ずかしい。ああもう、尻尾が動く。 火を扱っているから、と気を落ち着ける。一つ深呼吸して、気持ちをリセットさせる。キッチンで気を抜いて仕上げと盛り付けを間違えちゃ、お母さんに怒られちゃう。 きれいに焼き上げることができたお餅をグリルから取り出してお玉の上に載せ、静かにおつゆの中にくぐらせた。何人食べるかわからないけど、これだけ焼けば足りないことはないはず。 お玉にお餅がくっつかなくなったら、そのままお椀に静かに注ぐ。もう一回だけおつゆだけを注ぎ、それから具材をバランスよく盛り付ける。 ちらっと後ろを見ると、クリークさんがお茶碗に栗ご飯をよそってお盆の上にのせて、小皿を準備しているところだった。今日の小皿は、クリークさんお手製のポテトサラダ。小さい子でも食べられるようによく選んだ刺激の少ない具を、優しい味のマヨネーズで味付けした、いつまでも食べられる美味しいやつ。 私は出来立てで湯気を立ち上らせる大きなお椀を手に、夜食を待つみんなの方へ振り向いた。みんなの視線が私の手元に注がれて、待ち切れないという顔でじっと見つめている。不思議な緊張感が漂ったけど、その様子がなんだかおかしくて、少しだけ吹き出しそうになった。 私はわざと芝居めいて、ゆっくりとお椀を運ぶ。私の手の動きに合わせて、みんなの顔と視線が動く。お盆の前までたどり着いたら、今日の主菜をどん、と気合を入れて配膳した。その後、私はまるでウイニングライブの歌い出しのように深く息を吸って、今日の献立を発表した。 「栗ご飯とお月見汁、つけあわせにはクリークさんのポテトサラダです。お待たせしました」 レースで選手たちがゲートが開く瞬間を待ちわびるような、一瞬で永遠のような沈黙の後、一番前で待っていた子がお盆を手に取る。それはまるで本当にゲートを飛び出した最初の選手だったのだろう、彼女に追いつかねば、というような勢いで、後ろに並ぶ子 たちが一斉に、列を崩してキッチンに詰め寄る。 「お腹減った!」「待てない!」「おかわり!」「まだ食べてもないじゃん!」 それからは、一刻も早くみんなに食べてもらうために、私は一生懸命お月見汁を注いで、クリークさんは一生懸命ご飯とポテトサラダを盛り付けた。あれだけ焼いて煮込んだお餅とお月見汁も、たくさん炊いたはずの栗ご飯も、山盛りできていたポテトサラダも 、気が付けばもうあと一人分もないくらいの量になっていた。 みんなの反応と料理の反響を聞く間もなかったけれど、一番最初に食べ終わって食器を洗いに来てくれた子のキラキラな笑顔と「ごちそうさまでした」の言葉で、評判はきっと良かったんだろうな、と信じることができた。 いつもの夜食と様子が違ったのを察したイナリさんがやってきて、「私もいっぱいくれ!」と言って一口すすったあと、「こりゃたまんない味だねい!」って嬉しそうにしていたのも印象に残ってる。お醤油味だからかな。 私が小さい頃、毎年、中秋の名月の時期に家族みんなで食べたお月見汁と、栗ご飯。お母さんが作って、お父さんがキャンプで使うような折りたたみの机と椅子を組み立てて、私がみんなの分を家の外まで運んで机に置いた、思い出の料理。 どうして思い出したかというと、クリークさんに「明後日、イチちゃんにお夜食を作って欲しいんです」と一昨日の夜にお願いされたからだ。美浦寮では、夕飯を食べそこねた子達向けに、寮長さんが夜食を用意していることは聞いていた。栗東寮では、クリー クさんがカレーをよく用意している。 今日、クリークさんは練習とメディア対応でどうしても遅くなってしまうから、いつも通り用意ができない。だから代わりに、と頼まれた。最初は大人数用のレシピなんて分からなかったけど、クリークさんの役に立ちたかったのと、挑戦してみたい気持ちもあ って、頑張ってみようと引き受けた。 しょっぱくてあったかい、でも甘くてお腹いっぱい食べたくなる、特別な夕ご飯。覚えてる限りは思い出して、味付けはお母さんに教えてもらった。お鍋の要領で作れるから大人数向けだし、ご飯もお餅も食べるからお腹もいっぱいになるし、ちょうど良かった 。 少しだけ残ったお月見汁と栗ご飯を、クリークさんと二人で分ける。ひとくち食べて、クリークさんが目を丸くする。 「とってもおいしいです!」 「ありがと、お母さんの直伝レシピなの」 「お月見汁もご飯がすすむ味付けです」 「お父さんもその味付け好きなんだ」 「私も好きです。美味しいです〜」 漫画だったらお花の絵が描かれるんじゃないかと思うような素振りで、クリークさんがお箸をすすめている。お月見汁を食べながら、ふいに残念そうに口を開いた。 「お月様がいないのが残念ですね〜」 「きれいに売り切れてよかったけど、これじゃただのけんちん汁ね」 そう私が言うと、何かを思い出したような動きをしたクリークさんが、珍しく食事中なのに席を立ち、キッチンの保存棚を探り始めた。私があっけに取られていると、手に2つ切り餅を持ったクリークさんがこちらを向いた。 「実は、お餅があるんです」 「え、じゃあ焼いちゃいましょ」 「丸くはないですけど、お月見汁ですね」 ふふふ、と二人で笑いながら、コンロにお餅を入れ、火を点ける。浮かべるほどのおつゆはもうお椀に残っていなかったけれど、子供のときに食べたお母さんのお月見汁とおなじものが食べられそうで、胸の一番深いところから、静かな喜びがもちあがってくる ような気がした。 二人でお餅が焼けるのを待っていると、聞き慣れた声がラウンジから聞こえてきた。 「イチ、クリーク、ご飯を食べているのか?」 オグリちゃん、とクリークさんが返事をする。 「今日のお夜食はイチちゃんが作ってくれたんですよ」 「そうなのか! それでクリークのカレーとはちがう、美味しい匂いが漂っていたんだな」 そう言うと、オグリのおなかからぐぅ、と声が鳴る。 「私も貰えるだろうか」 「残念だけど、もう売り切れちゃいました」 嬉しそうにしているオグリをくじくのが愉快で、わざといたずらっぽく答えてやる。すると、なっ、という声を上げて、オグリが肩を落とす。 「そうか……残念だ……」 「今日のメニューはお月見汁に栗ご飯、ポテトサラダでした」 追い打ちをかけるように、想像させてしまうように献立名まで教えてやる。 「お月見汁か、私も食べたかったな……」 「とーっても、おいしかったですよ」 「もうお餅しかないから、それなら焼いてあげられるよ」 頼む、とオグリが小さい声で言うので、クリークさんと同じところを探してまるごと一袋分の切り餅を運んできてやる。 「みんなやクリークはイチのお月見汁を食べられたのか……イチの夕飯を、私も食べたかった……」 個包装されたお餅を取り出しながら、みんなを羨ましがるオグリを見て、これがホントのヤキモチか、なんてことを考える。 オグリをやりこめた愉快な気持ちを胸に、私はグリルにのせたお餅用のトレイの上に、いっぱいに切り餅を並べて、グリルの火を着けた。 了 ページトップ その3(≫171~173) 了船長22/09/12(月) 23 22 23 ☆イチちゃんママのおいしい栗ご飯レシピ☆ お母さん ワンちゃんこんばんは、どうしたの? いつもお月見のときに作ってくれた、栗ご飯の作り方教えて あら! いいよ。どうしたの? 明日、寮の皆に作らなきゃいけなくて そうなの。それは大問題ね。 ちょっと待ってて? うん、ありがと まず、買ってきた栗をさっと洗って、暖めたお湯に20分から25分付け込んでおく。 お湯につけるの? 皮を剥きやすくするためよ。待っている間に、お米をお水に浸しておきましょう。 ごはんを浸水させておくのは炊きやすくするため? そう! さすがワンちゃんね。 お湯につけ終わったら栗を引き上げて、皮をむくの。 やったことないんだけど、剥き方のコツってある? 栗のお尻を切り落として、一番かたい皮を手で剥いた後、その下にある薄い皮を包丁で浮かせるとラクチン 栗って皮が2枚あるの知らなかった 鬼皮と渋皮って言うのよ。賢くなっちゃったわねえ 剝き身にした栗はすぐお水につけておいてね アク抜き? ワンちゃん、トレセン学園で超能力でも習った? そんなわけないって ごぼうとかでもやるから知ってるだけ ワンちゃんすごいわ、なんでも知ってるのね 栗を浸している間にお米に塩を小さじ半分から1くらい振っておいて 炊き込みご飯みたいな感じ? そう。おばあちゃんは小さじ1と半分くらい入れるんだけど、我が家ではお月見汁を一緒にいただくでしょ? あれの味を濃いめにつけるから、少し減らしているの。パパもそろそろ健康に気をつけなきゃだし あ、後でお月見汁も教えて! 分かった! お塩を全体になじませたら、栗をかさばらないようにのせて、後は普通にご飯を炊くだけよ 炊飯コースって普通で大丈夫? うん! ちゃんと浸水させてるから、1時間でもふっくら炊けるわ そういえばさ、栗って切らなくていいの? 我が家には食いしんぼうさんが二人いるから、栗は切らずに炊いてたの。 もし食べやすいようにしたかったら、2回くらい包丁で切っておくとちょうどいいわ 分かった。ありがと ワンちゃんちゃんとご飯食べてる? 必要なものがあったら言ってね 大丈夫。元気だしちゃんと朝昼晩食べてるから レースを勉強しに行ったと思ったら、お料理スキルまで身に着けてるからお母さんびっくりしてるわ それはたまたま、色々あっただけ 前に帰省してくれた時に言ってた意中の人とは最近どうなの? ワンちゃん? 教えてくれてありがと! おやすみ! おやすみ、連絡くれて嬉しかったわ 了 ページトップ
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雑誌Link あ い う え お か き く け こ さ し す せ そ た ち つ て と な に ぬ ね の は ひ ふ へ ほ ま み む め も や ゐ ゆ ゑ よ ら り る れ ろ わ を ん 書籍Link あ い う え お か き く け こ さ し す せ そ た ち つ て と な に ぬ ね の は ひ ふ へ ほ ま み む め も や ゐ ゆ ゑ よ ら り る れ ろ わ を ん ▼ 世界の古典名著・総解説 最終更新日:2014.09.15▼ 90 P2 政治権力 メリアム 有賀弘 P4 大衆国家と独裁 S・ノイマン 舛添要一 P6 孤独な群衆 リースマン 舛添要一 P8 パワー・エリート ミルズ 杉浦克己 P10 後期資本主義における正当化の諸問題 ハバーマス 佐々木毅 P12 社会的費用論 カップ 村田喜代治 P14 社会主義経済の機能モデル ブルス 名島修三 P16 アジアのドラマ ミュルダール 中内恒夫
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目次 目次Part42つ目(≫97~101:夏合宿~昼の部~) 3つ目(≫112≫114≫121≫123:夏合宿~夜の部~) Part4その1(≫63~65) その2(≫81) その3(≫180)≫171、≫174より派生 Part6その1(≫104)≫100、≫101、≫104より派生 その2(≫144) Part7(≫45) Part8(≫111) Part9(≫144~148) Part10その1(≫36~37) その2(≫101~103) その3(≫105~108)(***その2(≫101~103)の修正版) Part11その1(≫96~98) その2(≫140~141) Part14その1(≫119) その2(≫152) Part15その1(≫56~61)≫18より派生 その2(≫147、149~152) Part16その1 グランドライブ編1 (≫58~65) その2 グランドライブ編2 (≫77~82) その3(≫101) その4 男装オグリとイチのデート (≫121~125) その5 (≫149) その6 グランドライブ編3 (≫169~175) Part17その1(≫75) その2 (≫103~108) その3 (≫123) その4(≫143)≫137より派生 Part18その1(≫75)≫124から派生 その2(≫165) Part19その1(≫41) その2(≫55~56)≫45、47より派生→≫58から60、72へと派生 その3(≫77) その4(≫103)≫106へと派生 その5(≫165) Part4 2つ目(≫97~101:夏合宿~昼の部~) 「なんでこんなことになったんだろう……」 にっくき芦毛のライバルに抱きしめられた布団の中、己は小さく呟いた。 正面からこちらの胸元に顔をうずめるように抱きついてきているコイツはがっちりと腕を回し、そのまま静かな寝息をたてている。 かろうじて逃した右腕が自由になるだけの状態で抜け出すこともできず、ため息をつく。 「なんなのよ……」 鼻から吸った空気に嗅ぎたくもないコイツの匂いが混ざる。 どうしてこうなったのだろうと、自分は肩までかけた布団の中、これまでのことを振り返り始めた。 トレセン名物夏合宿。デビューを終えた子は自分の実力を高め、秋から再開するレースを戦い抜くために。そうでない子は早くトレーナーやチームからスカウトされるだけの地力をつけるように。皆が目の色を変えてトレーニングに励む、二ヶ月近い強化合宿だ。 自分も例にもれず今まで以上の成果を出すべく教官の指導を受けていたのだが、今年は少し様子が違っていた。 「……また、砂浜ボッコボコにしてる」 スタミナとスピードを高めるための砂浜ランニング中、もう見慣れてしまった足跡を前にひとりごちる。 裸足で走っているからだろう、五指の形まできれいに深く掘り下げられたいくつもの足跡。自分が目の敵にし、日々嫌がらせをしている転入生、オグリキャップのものだ。 アイツの走り方は少し変わっている。 常人離れした関節と身体の柔らかさ、そしてカサマツ時代に鍛えたという足首の強靭さからくる走り方は、このように砂浜やダートコースに深く蹄跡が刻み込まれてしまう。「アイドル」さまは足跡まで派手なことで、などと心中で嫌味をこぼしてみるも、それ以上にどこまで常識外の走り方をすればこのような足跡がつくのかと末恐ろしく感じてしまう。 ……あたしがアイツに感心したなんて、殺されても言えないし、ムカつくから明日の弁当の献立に嫌いそうな野菜と酢の物を増やしてやるけど。 そんなオグリ本人はといえば、この半マイルビーチの一番向こうまで早くも走っていってしまっているようで。折返しの灯台の下、わずかになびく芦毛が夏の陽光に光ってみえた。 「――ああ、もう!」 足元の砂を強く蹴り、身体を前に押し出す。 息を吐いて、吐いて、吸う。腕を振り、つま先で砂を搔き掘るように回転させる。 ぐんと加速した身体を前傾に、己はもういち段階走りのギアを上げた。 「アイ、ツに! 負けるっ、わけには! いかないの、よッ!」 本当なら自分はあと半周だけのこのランニングを終え、走っているオグリに「怪物さんも海では力がでませんかー? 砂に足を取られて、本来の走りが全然できてないじゃない!」などと皮肉の一つでも飛ばしてやるつもりだったのだ。 それをアイツときたら、早々に筋トレを終えてランニングに合流してきて。 ……ムカつく……! ポッと出が注目されるだけじゃなく、レースの勝ちも掻っ攫っていって。負けたくないという対抗心と、アイツへの怒りを足に込め、自分は長いラストスパートを掛け始めた。 ● 「……ん、イチ! イチもランニングだったのか」 「……ぜ、は……はっ、はぁ…………」 結局。 半マイル先からアイツがゴールの海の家に帰ってくるのと、こちらがラストまで走り切るのは、ほぼ同時だった。 二往復していたはずだからゆうに3,200mは走っているはずのオグリは頬に汗をかく程度なのに、こちらはがむしゃらなラストスパートで息も絶え絶えになっている。 ……ムカつく……! 膝に手をつき息を整えているこちらを見下されているようで腹が立つ。平然とした顔で見下ろしてくるオグリにも、この程度で死にそうになっている自分にも。 「……はーっ、は、ふぅ……。…………で、何、オグリ」 ようやく息を整え体を起こし返事をすれば、ヤツは嬉しそうな顔で「ああ」と頷いた。 「今日、イチの部屋に行ってもいいだろうか。カサマツの皆から、『お友達で食べる用に』とお菓子が届いたんだ」 「はあ? それならあたしじゃなく――」 いや。 ここでこちらの部屋に引き込んで消灯時間ギリギリまで引き止めておけば、眠気でぼうっとしたオグリから嫌いな食べ物や苦手なものを聞き出せるかもしれない。 そうすれば、なぜか夏合宿の間も続いている嫌がらせ弁当にもこれまで以上の効果が見込める。 「――いや、そうね。わかった。ありがたくいただくわ」 「っ! そうか、ありがとう。では夜にお邪魔させてもらう。同室の子たちには……」 「同室の子たちにも配れば許してくれるわよ。どうせアンタ基準で大量に送られてきてるんでしょ」 「そうだな、うん、そうしよう。ありがとうイチ」 「べ、別にッ!? くれるって言うからもらっておくだけよ! 勘違いしないで」 「いや。私にとっては、故郷の味をもらってくれるだけで嬉しいんだ」 「ぐ……」 まただ。 たまにコイツは、こうやって良心100%でクサくて返しにくいことを言ってくる。そのたびによくわからないけど心臓が跳ねて止まらなくなるから、いい加減にしてほしい。 「ま、まあいいわ、わかった。じゃあ9時以降ならいつでもいいわ」 「わかった。9時過ぎに行こう」 じゃあそういうことで、と約束をしてその場は別れた。シャワーを浴びるため宿舎へと戻る途中振り向いてみれば、もうオグリは二本めのダッシュで奥の灯台の下までたどり着くところだった。 「……スタミナまで怪物ね……」 つぶやく。 自分はもう今日の分のメニューは終わった。あとは宿舎に戻って夕食までの時間で足のケアなどをするつもりだったが、 「……もう一本、だけ」 アイツにあてられたわけでは決してない。断じて違う。違う、が。 ……アイツより先に終わるのもシャクだから……! もうひと走りしようと、踵を返してビーチへと戻ることにした。 ページトップ 3つ目(≫112≫114≫121≫123:夏合宿~夜の部~) 「――お邪魔します。すまない、イチ。遅い時間に」 「べつに。いいわよ」 果たして、オグリは約束通り21時を少し過ぎた頃にこちらの部屋の戸を叩いた。 ドアを開けると入ってきたのは、一抱えはあろうかという大きなビニール袋。キャベツなら8つは入る大きさのそれを両手で抱え、オグリは畳の上に置いた。 「うっわオグリ先輩、すんごい量ですね……。あたしらの顔より大きいじゃないですか」 「ああ、色々送ってきてくれたみたいで、気づいたらここまで大きな包みになっていたそうなんだ」 事前にオグリが来ることは同室の友人たちにも伝えてあったので、皆興味深そうに真ん中に置かれた座卓に集まってくる。 「わ、すごい! お土産用の箱がこんなにたくさん!」 「そっちのそれはしこらんといって、カサマツの銘菓なんだ。水飴とニッキの味で美味しいぞ」 「オグリさんオグリさん、こっちは? お魚みたいな形してますけど」 「そっちのは鮎鮨街道、これもカサマツの名物の鮎菓子だ」 「へえ……」 次々と説明されるお菓子を皆で美味しい美味しいといただく。 流石にここまで来て食べないのも失礼だと思い、鮎を模した焼き菓子の包を開いた。 「ん、チーズ……?」 噛み締めた生地の奥からはチーズのような餡が出てきて、驚いて口元を抑える。 「そうなんだ」 嬉しそうにこちらに振り向いたオグリはなぜかあたしの隣に座り、「これはもともと鮎のなれ寿司を運んでいたときのいわれから同じ発酵食品のチーズを……」などと説明してきた。それを聞きながら一匹を食べ終えると、途端に口をつぐみ、おずおずとこちらを伺ってくる。 「……なに、どうしたの」 「いや、その。美味しいか?」 「……美味しかった」 「そうか! ありがとう、これは私も大好きな和菓子なんだ!」 喜色満面といった表情で自分も鮎の包装を開けるオグリの横顔を見つめる。 まずい、と嘘を言うこともできたし、それで彼女に何らかの精神的なダメージを与えられるかもしれないとも思ったが。 ……お菓子に罪はないから。 うまいものをうまいといっただけ。あたしは絆されてない。 小さく頷き、決心を固め直した。 ● 「でも良かったねイチちゃん、オグリ先輩が部屋に来てくれて!」 「は?」 一通り菓子を食べ終えた頃。同室の友人の一人が変なことを言いだした。 「オグリ先輩、聞いてくださいよ。イチちゃんったら部屋で私達にオグリ先輩の話ばっかりするんですよ~」 「そう、なのか?」 「そうそう! 今日はちょっと元気がなさそうだったーとか、足が痛いみたいだからーとか、ピーマンは嫌いじゃないらしいとか、口を開けば先輩のことばっかり!」 「ちょ、違……」 「どんだけ好きなんだよ―、って話ですけどね! 最近じゃあうちらは皆、応援ムードなんです」 「そうなのか……。それはその、少し、照れるな」 「ばっ、違うから!」 立ち上がり、抗議の声を上げる。 オグリの話ばっかりしているのは、どれだけコイツが調子に乗っているかということを広めるためで、つまりはいつもの嫌がらせの延長だ。 ミーハーなファンもどきと一緒にされるのは心外極まりない。 「……違うのか?」 「~~~~~ッ!」 立ち上がったこちらを下からオグリが見つめてくる。 その捨てられた子犬のような目に、続けようとした言葉が喉で詰まった。 「……知らない。勝手に想像すれば」 言い返すことも馬鹿らしく座り直し、横にいるオグリにきっぱりと告げる。 「勘違いしないでよね! 四六時中アンタのこと考えてなんてないんだから!」 「ああ、わかってる」 涼しげに頷かれるのは、それはそれで腹が立つものだと気づいた。 そのまま他愛もない話を続けて、気付けば予定していた通り消灯時間も目前に迫っていた。 とりあえず机の上を片付けて、寮長の見回り対策に布団を敷いていく。 「……やばっ、見回り来たよ!」 「うそ!? まだオグリ先輩いるのに!?」 「~~っああもう! こっち入って隠れて!」 「あ、ああ」 焦る皆と一緒にそれぞれの布団に入り、電気を消す。おろおろしているオグリの手を引いて、布団に頭が隠れるように引っ張り込んだ。 「……すまないイチ、私まで君の布団に……」 「ああもう、いいから! そのままだとはみ出る、あたしに抱きついてなさい!」 「わかった」 こちらの胴に両腕を回し、胸元に顔をうずめるようにしてオグリは布団の中で抱きついてきた。 ……意外と柔らかい身体してるのね……。 暗闇の中、抱きつく感触だけが伝わる。呼吸で上下するオグリの頭を胸元に右手で押し付けながら、2つ隣の部屋を寮長が見回りしている音を伺う。 物音が隣の部屋に来、こちらの部屋の扉が開き、スリッパ履きのヒシアマゾンさんとフジキセキさんが「……寝てるな」「寝てるね」と小声で確認する。やがて扉が閉まり去っていき、己はやっと行ったかと息を吐いた。 気付けば電気を消して布団に潜り込んでから20分近くが経っており、皆もじっとしているうちに眠ってしまったらしい。 今ならオグリも自室に帰れるだろうと布団をめくり、その手が固まった。 「……ちょっと、うそでしょ」 「すぅ……すぅ……」 布団に押し込まれ隠れていたオグリは、このライバルは。 よりにもよってあたしの布団で、あたしに抱きついて胸を枕にしながら。 すっかり夢の世界へと旅立ってしまっていた。 「なんなのよ……」 静かに寝息を立てている顔を覗き込む。 風呂上がりらしいシャンプーの匂いが布団の中で濃くなり、体温の熱気とともにのぼってきた。その匂いに、変に頭がくらくらとしてしまう。 同性同士なのにどきっとするほど整った顔と、それに似つかわないあどけない寝顔。 しっかりと抱きつかれてしまっているから、抜け出すこともできない。 「……ああ、もう……」 息を吐く。 唯一動く右手でしっとりとした前髪を撫でると、うすく微笑んだ寝顔に変わった。 ……あたしも眠くなってきたから。起こしてから部屋に返してーとかやってると寝るのが遅くなるから。 だから、断じてこれはコイツのためなんかじゃないのだ。 右手でオグリの頭を抱えながら目を閉じる。 「……おやすみ、オグリ。……あたしの胸を枕にするんだから、いい夢見ないと承知しないから……」 自分の心臓だけがやけにうるさくて、眠気なんて微塵も来る気配がなかった。 Part4 その1(≫63~65) ≫63 二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 15 34 30 レスアンカーワン。あいつは変わっちまった。 オグリキャップに憎しみを抱いて、数々の嫌がらせをしていた彼女は、もういない。 彼女が最近、新人ながら専属トレーナーも決まり、めきめきとその実力を上げてきているらしい…という噂を聞き、彼女のトレーニングを見に行ってみることにした。 私と同じく、オグリキャップを面白く思っていないウマ娘は少なくない。そして、レスアンカーワンは、その筆頭だ。以前に話した時は、嫌がらせの弁当のメニューを考えるのに苦労しているようなことを言っていた。 ぽっと出のオグリキャップなんかに、でかい顔はさせない。いつか走りでねじ伏せてやる。私はそう思っているが、それはそれとしてレスアンカーワンの気持ちもわかるつもりでいたから、彼女を止めるような真似はしなかった。気が済むまでやればいい。そう思っていた。 だが、しかし。 …なんだあれは。まるでオグリキャップじゃないか、あの走法は。 そして何より驚いたのは、それを指摘したトレーナーに、彼女が満更でもないような反応を示したことだった。 自分が嫌っているオグリキャップに似ていると言われて、なぜ嬉しそうな顔をする? 私には理解できなかった。あれほどオグリキャップを憎んでいたレスアンカーワンとは思えなかった。 何が彼女を変えた? ……という妄想が浮かんだので投下 ≫64 二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 17 11 36 「腑抜けたな、レスアンカーワン」 「…なによ」 「お前は変わっちまった。オグリキャップ憎しのお前はどこにいっちまったんだ?」 「わたしは何も変わってない」 「今日の朝練の弁当のおかずはなんだ?おいしく食べてもらって嬉しいか?」 「〜〜!そんなこと言わないで!」 「嫌がらせ弁当は効果ないみたいだな。やっぱり靴を隠すか、ああ隠すより画鋲かな。さすがに鈍感なオグリキャップも気づくだろうからな嫌がらせに」 「…やめて」 「ん?ならお前がやるか?お前がやらないなら、代わりに私が」「やめてよっ!!!」 ……やっぱりだ。 レスアンカーワン。こいつは変わっちまった。 オグリキャップを憎んでいた彼女は、もういない。 目をみればわかる。こいつは、オグリキャップに絆されちまった。 「…冗談だよ。私のやり方じゃないからな。お前みたいな嫌がらせは」 「……!」 何かを言いかけて、口をつぐむレスアンカーワン。 そうだ、彼女に私の嫌味を責める権利はない。彼女がオグリキャップに嫌がらせをしてきたことは事実なのだから。 「私は私のやり方でオグリキャップを潰す。レスアンカーワン、お前は指を咥えて見てるがいい」 「…汚ないやり方をするの?」 「さあな。私はお前みたいな嫌がらせは得意じゃない」 「……」 「だが…レースでは何があるかわからないからな。思わぬ事故とかがあるかも」 そう言って薄く笑って見せる。本気ではない、安い挑発だ。だがオグリキャップに脳を焼かれたレスアンカーワンを食いつかせるには、それで十分だった。 「……やらせない」 「ん?何を」「あんたなんかに、オグリはやらせない!」 被せるように叫ぶレスアンカーワン。 「オグリは…あの子は…!」 “あの子は” か。思わずため息が出てしまう。 「もういい、オグリキャップは私一人で潰す。だが忘れるなよ、レスアンカーワン」 その時、私の目には何が浮かんでいただろうか。彼女に対する幻滅か、憎しみか、或いは哀れみか。 「お前が今までやってきたことは」 動きを止めるレスアンカーワン。 「決して消えないんだからな」 彼女が何かを言う前に、私は踵を返してその場を去った。 角を曲がる前、微かに彼女の声が聞こえた。 「そんなこと…そんなこと、わかってるよ…」 その2(≫81) ≫81 二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20 58 01 タマモ「さぁ始まりました第一回『オグリキャップ対レスアンカーワン夫婦喧嘩記念』。実況は私タマモクロス、解説は足は速いが鮮度は落ちぬ事でお馴染みスーパークリークでお送りします。よろしゅうな」 クリーク「よろしくおねがいします」 タマモ「早速ですが怒りっぽいイチを差し置いてオグリが先制を仕掛ける波乱の展開になっておりますが、このレースをどう読みますか」 クリーク「今回はオグリちゃんの言い分が正しいと思うのでこのまま押し切るでしょうね」 タマモ「う〜む取り付く島もないママの切り捨て。スーパーコンピュータ富嶽もオグリキャップの勝利を導き出してる模様」 イナリ「イチはオグリに押されると弱いからな〜残当」 イチ「あんたら好き勝手言いすぎよ!何さ、あたしだってレースじゃなきゃオグリにだってね」 オグリ「イチ…お願いだから安静にしてくれ…もし万が一があったら私は…」クゥーン イチ「……あーもう!わかったからそんな情けない顔しない!耳も垂らすな!犬か!」 タマモ「はいレース終了です。イチに賭けた人はご愁傷さまです」 その3(≫180)≫171、≫174より派生 ≫171 二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 19 37 57 このオグリには有馬やらファイナルズで勝った時に観客席最前列にいたイチに向かって「君のおかげで勝てた!」とか言い放ってイチをイチ躍有名人にしてほしいんだ 前々から噂されていたオグリを支える親友ということで知名度爆上がりして取材されたり何故かぱかプチも作られたりして本人はまんざらでもなくなってほしいんだ でも途中から彼女本人じゃなくて「オグリの親友」という肩書きしか見られてないと感じ始めて曇ってほしいんだ 嘘なんだ 曇ってほしくはないんだ それはそれとしてイチのぱかプチをモデルになった本人にゲーセンで取ってもらって喜ぶオグリは見たいし枕元に置いててほしいんだ ≫174 二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 12 47 19 親友の引退レースが発端で名が売れたら曇る余裕はあんまりなさそうなんだ。どちらかというと「私もG1で勝ってみたかったなあ」くらいの爽やか曇り(?)がちょうどよさそう イチちゃんがイチちゃんのぱかプチを取ると喜ぶのに、イチちゃんがオグリのぱかプチを取って笑うと「イチ、私のほうが……」ってムッとするオグリですか!???!?!!?!?!??!?!エッ!???!???! ヤバ 死 ≫180 二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 20 35 24 イナリ「さぁ始まりました『第2回オグリキャップ対レスアンカーワン夫婦喧嘩記念』、実況は火事と喧嘩は江戸の華で御馴染みイナリワン、解説は喧嘩の時はまず目と鼻と歯を狙う事で御馴染みタマモクロスでお送りします」 タマモ「そこまでやらんわ、脛は蹴るかもしらんが」 イナリ「早速ですが今回のレースはどう見ますか」 タマモ「ぬいぐるみに嫉妬するなんて子供じゃあるまいし、今回はイチに分があるとちゃうか」 イチ「大体あんた自分の分身に嫉妬するなんておかしいわよ!これがあんたの子供だったら子供に嫉妬するダメ親じゃない!」 イナリ「おっと斬新な切り口で攻めてきたぞ」 オグリ「確かにそれは駄目だな…私が悪かった」 イナリ「おおっとイチ念願のオグリ打倒なるか!」 オグリ「……よく見るとイチと親子のようだな。きっとイチは良い親になる」 イチ「ファ!!!??!!。?ー。?ー?」 イナリ「あちゃーここでまさかの差し返し、イチ墓穴を掘ったか」 タマモ「イチに賭けたと思われるナカヤマが笑い転げてるのを見届けた所でお別れやで。また次回」 Part6 その1(≫104)≫100、≫101、≫104より派生 ≫100 二次元好きの匿名さん22/02/06(日) 22 07 45 あの、オグリが間違えてイチちゃんのことお母さんって呼んじゃう展開ありませんか? ≫101 二次元好きの匿名さん22/02/07(月) 04 41 17 そ、それ聞いたクリークが「私がいながらオグリちゃん!」とむくれる展開もありませんか? ≫104 二次元好きの匿名さん22/02/07(月) 12 36 07 「お母さん…あっ」 「はぁ?なに寝ぼけたk(いや、待てよ私。オグリは人前で他人をお母さん呼びなんて赤っ恥を晒したのよ?これは全力で追い打ちをかけるべきよ!相手の弱みにつけこむ、それが勝負の鉄則よ!)」 「イチ…?」 「あらあら〜オグリちゃんどうしたのでちゅか〜?ママが恋しくなっちゃったのかな〜?」 「えっ?えっ?」 「ほ〜らイイコイイコしてあげまちゅよオグリちゃん♪(ホーッホッホッ!見たか私の渾身の赤ちゃん言葉!正直恥ずかしいけどあんたを道連れに出来るなら耐えられるわ!さぁ恥ずかしさで涙目になってる所を見せなさい!!)」 「イチ…まさかクリークと同じ趣味を持っていたのか?前々から仲が良いと思っていたがそういう事なのか…?」 「えっ」 「そんな…イチちゃんがでちゅねされる側ではなくする側だったなんて…オグリちゃんがイチちゃんの物に…」 「ちょっと待って下さい、不可思議な言葉を立て続けにぶつけないで下さい」 「アホやな〜!クリークの母性に日夜晒されてるオグリがそんな事で赤面するわけないやろ!勝負を仕掛けるタイミング間違えとるで!」 「それより大変だタマモ!クリークがイチにあてられて様子がおかしくなってる!」 「みんな下がれ早く!クリークの母性が爆発する!」 「ほわあぁあああああ!(byイチ)」 その2(≫144) ≫144 二次元好きの匿名さん22/02/10(木) 23 04 04 「イチ、緊張しているのか?」 「あ、当たり前でしょ!初めての挨拶なんだから失礼のないようにしないとだし…」 「大丈夫、お母さんはすごく優しいんだ。きっとイチのことも気に入ってくれるよ。」 「うぅ…だといいんだけど…。ねぇ、アタシの服変じゃないかな…?」 「家を出る前も言ったけど今日のイチはいつもよりキレイだぞ。あっ、もちろんイチはいつもキレイだが…。」 「そういう事じゃないわよバカ!でもありがと、おかげで少し落ち着いた。」 「イチ、着いたぞ。ここが私の家だ。」 「ここがオグリの実家…。」 「じゃあ入るぞ。お母さん、ただいま。」 「わっ、待って!まだ心の準備が…!」 「おかえりなさい、早かったわね。あら?その子は…」 「は、はじめまして!レスアンカーワンと申しますっ!あの、オグリキャップさんとは学園を卒業してからお付き合いさせていただいてる仲でして…。」 「あなたがイチちゃんね!話しは聞いてるわ、さぁ入って入って!」 「お、お邪魔します…。あの、これつまらないものですが…。」 「ふふっ、いいのよ、そんなに畏まらなくても。まったく、アンタには勿体ないくらい良い子じゃない。」 「そうなんだ。イチはすごく優しくて料理も上手で私のサポートもしてくれてすごく助かってる。本当に私には勿体ないくらい素敵なお嫁さんだ。この間なんかも…」 「ちょっ!?ちょっとオグリ!わかったから、それ以上は恥ずかしいから…!」 「あらあら、惚気てくれちゃってまぁ…。さて、ふたりとも長旅で疲れたしお腹も空いたでしょ。何か作って来るから少し休んでなさいな。」 「本当か!?久しぶりのお母さんの料理楽しみだ…!」 「あっ、お義母様!私も手伝います!」 「ふふっありがとう。それじゃあ…。」 Part7 (≫45) ≫45 二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 00 24 21 「アンタってホントよく食べるよね。」 「?ああ!イチが作ってくれる料理はどれも美味しいからな!いくらでも食べられるぞ!」 「はいはい。それにしても作り甲斐のある食べっぷりだこと…。」 (うーん、オグリの食べてる様子ってなんか既視感があるんだよねー。なんだろう…。 ああ、うちで飼ってるわんこに似てるんだ…。 うんうん、あればあるだけ食べちゃうところとかそっくり…。 そういえば、しばらく帰ってないからそろそろ会いたいなぁ…。 頭撫でてる時なんかは耳を倒して撫でられやすいようにしてたっけ…。 そうそう、こんな風に…って) 「あれ?」 「ん?もういいのか、イチ。」 (え、なんでアタシオグリの頭に手を置いてるの?もしかして物思いにふけてる時に無意識で撫でちゃってた!? ど、どうしよう…。なんて誤魔化せば…。) 「イチは撫でるのが上手なんだな…。最初はびっくりしたけど、すごく気持ちよかった。」 「え、えーっと…。」 「クリークもたまにこうして頭を撫でてくる時があるんだが、もしかして寝癖でもついていたか?」 「そ、そう!寝癖!寝癖がついてたの!まったく!身だしなみには気をつけなさいよね!」 「そうだったのか…。一応朝練の前に鏡で確認はしたんだが…。とにかくありがとう、イチ。助かったよ。」 「ど、どういたしまして…。」 「イチ、ひとつお願いがあるのだが聞いてくれないか?」 「な、なによ。改まっちゃって…。」 「その…、寝癖がついていない時でもさっきみたいに頭を撫でてほしいんだ…。」 「えっ!?」 「クリークに撫でられる時とはまた違って、イチに撫でられるとすごく安心してなんだか心がポカポカした気持ちになるんだ。だから、また撫でてほしい。ダメだろうか…?」 (くっ!その耳をペタンと倒して上目遣いで見つめてくるのは反則でしょ…!なんでこういうところもそっくりなのよ!あーもう!) 「わ、わかったわよ!やってやるわよ!でも、人前では絶っ対にやらないから!」 「本当か!ありがとう、イチ!じゃあさっそく…」 「…オグリ、アタシの話聞いてた?」 「?この時間なら登校する子も少ないし、今は私とイチのふたりきりで人前ではないと思うのだが…?」 「やんないわよバカ!」 Part8 (≫111) ≫111 二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 23 18 53 タマ「イチのお母さんか…どんな人なんやろ、緊張するな…」 モニー「タマ先輩も緊張とかするんですね」 タマ「レースとはまたタイプがちゃうからな、どんな人か知っとるかモニー?」 モニー「ノリが軽くてちょっと変なことする人だってよく言ってます、それ言ってるときのイチの顔満更でもなかったのでいい人だとは思いますよ」 タマ「まぁイチのお母さんやし悪い人ではないやろうけど」 モニー「そういえば、イチを産んだときから見た目全然変わってないらしいですよ」 タマ「ホンマかそれ、凄いな…イチのお母さんやしスラッとした綺麗な人なんやろなぁ」 モニー「そうでしょうねぇ」 イチママ「どうも〜イチちゃんのお友達さん!」 タマモニ「あ、どう」 タマモニ「!!!!???」 Part9 (≫144~148) ≫144 二次元好きの匿名さん22/03/23(水) 23 25 18 【中央生専用掲示板】 レスアンカーワンとか言うオグリギャルwwwww 1:一般ウマ娘 デキてるよね? 2:一般ウマ娘 距離感クッッソ近いよな 3:一般ウマ娘 一緒にお弁当食べてるの何回見たことか 4:一般ウマ娘 距離感近い友達ってだけじゃないの? 5:一般ウマ娘 ベンチで二人肩寄せ合って寝てたのも見たぞ 6:一般ウマ娘 →4 でもあのお弁当毎日イチちゃん先輩が作ってるみたいだよ 7:一般ウマ娘 →6 中身見たことあるけど凄かったよ冷凍食品ポイッと入れてとかそんなんじゃなくてそこそこ時間かかりそうなやつだった 8:一般ウマ娘 マジ…? 9:一般ウマ娘 →7 愛妻弁当…? 10:一般ウマ娘 俗に言う通い妻 11:一般ウマ娘 バレンタインのとき本命よって言ってオグパイにチョコ渡してるの見たぞ 12:一般ウマ娘 それ結構話題になってたけどどんな感じだったん? 13:一般ウマ娘 オグパイに生徒達が群がってたら颯爽とイチちゃん先輩が現れてチョコを渡したオグパイが義理チョコというやつかありがとうと言ったら本命よと言い放った黄色い歓声があがった保健室に一人担ぎ込まれた 14:一般ウマ娘 マジかよ…ホントにデキてそうだな… 15:一般ウマ娘 ずいぶん差したなイチちゃん… ───────── 87:一般ウマ娘 今すぐテレビ点けて!凄いことになってる!? 88:一般ウマ娘 今外にいるから貼って 89:一般ウマ娘 90:一般ウマ娘 エッッッ!!!??(困惑) 91:一般ウマ娘 ファァァーーーーwwwwWWW!!!?? 92:一般ウマ娘 デキてる(確信) 93:一般ウマ娘 デキてる(確定申告) 94:一般ウマ娘 これでデキてなかったら逆に怖いわ ───────── 192:一般ウマ娘 ねぇ…オグリが「今日は気持ちよくしてくれ」って言いながらイチちゃんと同じ部屋に入っていったんだけど… 193:一般ウマ娘 !!!?? 194:一般ウマ娘 こいつらうまぴょいしたんだ! 195:一般ウマ娘 …え?マジで…そういう…? 196:一般ウマ娘 オグリが「痛い!イチやめて!」って叫んでるんだけど… 197:一般ウマ娘 オグリ先輩が…猫ちゃん…? 198:一般ウマ娘 オグリ「吾輩は猫である」 199:一般ウマ娘 イメ損 200:一般ウマ娘 夏目漱石の方がイメ損されてないか…? ✎このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています Part10 その1(≫36~37) ≫36 二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 22 10 37 【中央生専用掲示板】 イチちゃんのママさんさぁ… 1:一般ウマ娘 デカすぎなんだわ 2:一般ウマ娘 ボン・キュッ・ボンなんだわ 3:一般ウマ娘 なんだったら゛追加してもいいんだわ 4:一般ウマ娘 ゆっさ♡ゆっさ♡ 5:一般ウマ娘 おちちたわわなんだわ 6:一般ウマ娘 レースしてるときもライブしてるときもばるんばるんしてるんだわ 7:一般ウマ娘 君の愛馬が!ユサユサ 8:一般ウマ娘 男゛の゛人゛が゛可゛哀゛想゛だ゛よ゛ぉ゛立゛て゛な゛い゛よ゛ぉ゛!゛!゛!゛!゛ 9:一般ウマ娘 勃ってるのにな 10:一般ウマ娘 あれで旦那と高校生の子供もいるんだぜ 11:一般ウマ娘 旦那さんはOKしてるの?あんな露出ヤバい勝負服着てるの 12:一般ウマ娘 最初は断固反対だったけど必死の説得で許可貰ったらしいよイチちゃん先輩も許可だしたらしい 13:一般ウマ娘 ほぇ~なんでアンカーワンさんはOKしたの…? 14:レスアンカーワン 二人に押されてOKしちゃったのよ「露出度だったら他の子達の方が凄くない?」って言われて… 15:一般ウマ娘 あ、先輩…トレーニングお疲れさまです 16:一般ウマ娘 言われてみれば私の勝負服も露出度で言えばイチママと同じぐらいでお父さんにめちゃくちゃ心配されてたわ 17:レスアンカーワン 悔しかった…だって乳かっぴらいてる人たちに比べたらしっかり隠れてるだけマシなのホントだもの…… 18:一般ウマ娘 ママと同じ学校通ってるだけでもキツいのに、あんな格好で走って踊って私にだけチュウされたらアタシだったら死んでまうわ 19:レスアンカーワン それだけじゃないのよ…お母さん休み時間のたび私のクラス来るのよ…食堂で一人飯してたら確実に相席してくるのよ…しかもお母さんと比べられたりもするのよ「お母さんに比べれると物足りない」って…… 20:一般ウマ娘 その人、顔から下見て言ってそう(偏見) 21:レスアンカーワン よく分かったわね 22:一般ウマ娘 お悔やみ申し上げます 23:レスアンカーワン 死んでへんわ その2(≫101~103) ≫101 二次元好きの匿名さん22/04/13(水) 01 06 48 「ごちそうさまでした」 ご飯大盛り・コロッケ3つ・味噌汁一杯・漬け物少量、至って普通である…しかし普段は文字通り山盛りの量で食べないと満足しない彼女ことオグリキャップ関して言えば、この量で満腹というのは異常事態である 「あの…無理な減量は体に良くないですよ…?」 「クリーク…無理なんてしていない、本当にこれで満腹なんだ」 「何かあったんですか?」 心配そうな顔をし見つめてくる 「調子が悪いなら無理せず休まれた方が…悩みがあるなら聞きますよ…」 皆に迷惑をかけたくなかったから自分だけで何とかしようと思っていたのに心配をかけてしまっては意味がない私は意を決し話すことにした 「胸がドキドキするんだ…」 「あら…。」 「顔が熱くなって…」 「あらあらあら…。」 「夜も眠れなくなって…」 「あらあらあらあら…。」 「イチのことばかり考えてしまうんだ…」 「あらあらあらあらあらあら、あらあらあらあらあらあら!!」 「どうしたんだ!?大丈夫か!?落ち着くんだ!!!」 「すいません、いきなりきたので」 普段はこうじゃないんですよ…と申し訳無さそうに小声で付け加え汗を拭いながらクリークは何か思いついた顔をした 「それをイチちゃんに相談してみてはどうでしょうか?本人に聞いてみるのが一番だと思いますよ!」 そう言うクリークは手を左頬に添えながら顔を傾け何故か嬉しそうな顔していた 「わかった聞いてみる」 クリークの様子に困惑しながら答えた 「応援してます!!!」 応援? ─────────── 「ねぇ、どうしたの」 たまには食堂で二人で食べないかと呼び出したはいいものの、中々切り出せず、不審がられてしまった 「え!?な、なにがだ!?」 「様子が変なんだけど」 「な、なんでもないぞ!!?」 声が裏返った、我ながらわかり易すぎる 「絶対ウソじゃん…わざわざ私を呼び出して…悩みでもあるの?話してみなさいよ」 いつ切り出そうかと機会を伺っていたら、あちらから聞いてくれた、彼女にまで心配をかけてしまったことに罪悪感をおぼえる 「実は…あるヒトのこと考えたら胸がドキドキするんだ…」 食事中の生徒達が皆が一瞬手を止めこちらを見た、すぐに食事を再開したが先ほどとは違い、話し声はせず食器の音だけが鳴っていた、皆こちらを意識し耳をたて、私が次に発する言葉を今か今かと待っていた、よく見ればクリークもいた「頑張って!」言わんばかりの顔でこっちを見てくる もう言ってしまったからには引き返せない 「だ、だからイチに…あ、あど、あどばいすぅ…というか…なんというか…相談したくて…」 「…へぇ」 イチは悲しそうな嬉しそうな不機嫌とも言えそうな表情をしていた 「その相手は誰なの」 「え!?えっと…すまない…言えないんだ…」 何故か言いたくなかった恥ずかしかった 「わたし?」 先ほどまでカチャカチャと鳴っていた音の一切が消え静まりかえる、そんな時間が数秒…体感にして数十秒…今だ状況を把握できていない周囲をよそに彼女は畳みかける 「私が好きなの?」 復旧しかけた脳に追撃をくらい脳がショートした、ここが90年代の漫画なら頭が爆発してチリチリになっていただろう 「騒がしくなってきたから、そろそろ帰るわ、また明日ね」 そう言い放ち足早に食堂を出た 残されたのは今だ放心状態の芦毛ウマ娘とすっかり食べることを忘れ黄色い声をあげている生徒達だけだった イチと私で分散していた視線が全て私にそそがれる 背中にチクチクと刺さる視線を感じながら顔を伏せ逃げるように食堂を後にした ─────────── 自室に戻りベットに倒れ込む 手を顔に添える、あまりの熱さに驚いて顔から手を離した、私がタコならすでに茹で上がってることだろう、正直レース終わりでもこんなに顔が熱くなったことはない 『わたし?』 『私が好きなの?』 あの言葉を思いだすたび顔が熱くなる 「明日からどんな顔して会えばいいんだぁ…いちのばかぁ…」 おわり その3(≫105~108)(***その2(≫101~103)の修正版) ≫105 二次元好きの匿名さん22/04/13(水) 01 43 51 「ごちそうさまでした」 ご飯並と・味噌汁一杯・漬け物少量、かなり少ない量のご飯…しかもアスリートである彼女が、この量で満腹というのは異常事態である 「あの…無理な減量は体に良くないですよ…?」 「クリークさん…無理はしていないんです…本当にこれで十分なんです…」 「何かあったんですか?」 心配そうな顔をし見つめてくる 「調子が悪いなら無理せず休まれた方が…悩みがあるなら聞きますよ…」 皆に迷惑をかけたくなかったから自分だけで何とかしようと思っていたのに心配をかけてしまっては意味がない私は意を決し話すことにした 「オグリのこと考えたら胸がドキドキするんです…」 「あら…。それって…」 コクリと頷き相槌をうつ 「あらあらあらあらあらあら、あらあらあらあらあらあら!!」 「お、落ち着いて下さい…恥ずかしいです…」 「すいません、いきなりきたので」 普段はこうじゃないんですよ…と申し訳無さそうに小声で付け加え汗を拭いながらクリークさんは何か思いついた顔をした 「それは言った方が言った方がいいですよ、アスリートとしてご飯を食べれないのは大問題ですし…それに…大事なことですから…言って解決するなら、それが一番ですよ…」 そう言うクリークさんは手を左頬に添えながら顔を傾け微笑んでいた 「わかりました言ってみます」 少し悩んだが私は決めた 「応援してます!!!」 「………はい!」 ─────────── 「イチ、どうかしたのか?」 たまには食堂で二人で食べないかと呼び出したはいいものの、中々切り出せず、不審がられてしまった 「え!?な、なにがあ!?」 「様子が変なんだぞ」 「な、なんでもないよお!!?」 声が裏返った、我ながらわかり易すぎる 「ウソだ…わざわざ私を呼び出して…悩みでもあるのか?話してみてくれ」 いつ切り出そうかと機会を伺っていたら、あちらから聞かれた、頬が熱くなる、聴こえてしまうのではないかと言うほど高鳴った鼓動を抑え、意を決す 「アンタのこと考えたら…胸が…ドキドキするのよぉ…」 食事中の生徒達が皆が一瞬手を止めこちらを見た、すぐに食事を再開したが先ほどとは違い、話し声はせず食器の音だけが鳴っていた、皆こちらを意識し耳をたて、私が次に発する言葉を今か今かと待っていた、よく見ればクリークさんもいた「頑張って!」言わんばかりの顔でこっちを見てくる もう言ってしまったからには引き返せない 「だ、だからアンタに…あ、あど、あどばいすぅ…というか…なんというか…相談したくて…」 「そうか…」 オグリは考え込みながら悲しそうな表情をしていた 「私が好きなのか?」 先ほどまでカチャカチャと鳴っていた音の一切が消え静まりかえる、そんな時間が数秒…体感にして数十秒…今だ状況を把握できていない周囲をよそに彼女は畳みかける 「私のことが好きなのか?」 復旧しかけた脳に追撃をくらい脳がショートした、ここが90年代の漫画なら頭が爆発してチリチリになっていただろう 「冗談だ、お弁当の内容を考えすぎていたんだろう…すまない私のせいで…イチとは、こうやって学食を食べるだけでも楽しい、だからしばらくはそうしよう、そろそろ帰る、また明日会おう」 そう言い放ち食堂を出た 残されたのは今だ放心状態の栗毛ウマ娘とすっかり食べることを忘れ黄色い声をあげている生徒達だけだった オグリと私で分散していた視線が全て私にそそがれる 背中にチクチクと刺さる視線を感じながら顔を伏せ逃げるように食堂を後にした ─────────── 自室に戻りベットに倒れ込む 手を顔に添える、あまりの熱さに驚いて顔から手を離した、私がタコならすでに茹で上がってることだろう、正直レース終わりでもこんなに顔が熱くなったことはない 『私が好きなのか?』 『私のことが好きなのか?』 あの言葉を思いだすたび顔が熱くなる 「明日からどんな顔して会えばいいのよぁ…おぐりのばかぁ…」 おわり Part11 その1(≫96~98) ≫96 二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 16 25 05 ある食事会の日の風景 「ふう···ただいまタマ」 「おーお帰りー、オグリ。お邪魔してます」 「イチ、もう来てたのか」 「こらこら、そうじゃないでしょ」 「むっ···ただいまイチ、いらっしゃいませ」 「うん、よろしい」 「イチは厳しいな。お母さんみたいだ」 「誰が誰のお母さんよ」 「イチが私のお母さんみたいだ」 「···説明しろって意味じゃない」 「違うのか?」 「ハァ···もういいわ」 「タマ達はどこに行ったんだ?」 「タマモ先輩とクリークさんは何故か足りなくなってた料理の材料を買いに出掛けました」 「」ピタッ 「タマモ先輩曰く『おっかしいなぁー、昨日まで確かにあった筈なんやけどなぁー、昨日寝る前に確かに確認したのに授業が終わって一旦帰ってきたら足りなくなってるわー、しゃーない買いに行ってくるわー。···それはそれとしてオグリは何か知らへん?』ですってよオグリさん?」 「」メソラシ 「オグリ」 「ナ、ナニモシラナイゾ」ギギッ 「ふーん」ジーッ 「」ダラダラ 「へぇー」ジジーッ 「」ダラダラダラ ─────────── 「ま、知らないんなら仕方ないか」 「ううっ···す、済まないイチ。夜中にお腹が空いてしまって、つい」ショボン 「はぁ···そういう時は私かクリークさんにLINEでも送ればいいでしょ。大体アレは材料であって料理じゃないでしょうに」 「だが、その、夜中に私のお腹ためにイチ達を起こして迷惑をかけるのはやっぱりダメだ」 「···気を使うポイントがずれてるのよ、アンタは」 「?イチ?」 「えいっ!」パチン 「あいたっ!?」 「うりうり」ムニムニ 「な、何をするんだ、酷いぞイチ」 「餅みたいね、アンタのほっぺ」ムニムニ 「私のほっぺは食べても美味しくないぞ」 「···いい、オグリ。私は誰?アンタの何?」 「それは···レスアンカーワン、私の親友だ」 「っ!」 「イチ?」 「あーなんでもない···コホン。そう、アンタの友達よ。ならつまらないこと気にしてないで困った時は頼んなさい」 「そうか···そうだな、わかった。ありがとうイチ、私はいつもイチに助けられてばかりだ」 「心配しなくてもこの貸しはいつかまとめて返してもらうから」 「ああ、任せてくれ。その時はどんなことでも全力でイチを助けてみせる」 「(···ばーか、こっちはとっくに返しきれない程のものアンタから貰ってるわよ)」 ─────────── 「それはともかくイチ」 「ん、なあに?」 「そろそろほっぺを放してくれ。本当にお餅になってしまう」 「えっ、あ、ゴメ···」「ただ今帰りまし···あらぁ?」 「」「ああ、お帰りクリーク、タマ」 「タマちゃん」 「なんや、どしたんクリーク?早く入ってくれんとウチが入れんやろ」 「ちょっと学食でお茶してきましょうか、一時間位」 「へ、なんでや?今戻ってきたばかり···ちょっ、そんな引っ張んなや!?」 「もう、ダメですよタマちゃん。お二人の邪魔しちゃ、めっです」 「クリークさん?!ちょっと待って!誤解だから行かないで!話を!話を聞いてください!」 「なあ、イチ。もう私は(お腹が)我慢出来そうにない」グウーッ 「このタイミングで誤解を招きそうなこと言うなー!」 その2(≫140~141) ≫140 二次元好きの匿名さん22/05/14(土) 17 01 31 『お花見』 「ひゃー、流石に混んどるなぁ」 「満開ですもんね、桜」 「まぁみんな考えることは一緒っちゅーわけやな。お、犬もおるやん」 「場所はこの辺でいいかな……」 「なぁ、イチは犬と猫どっちが好きなん?」 「なんですタマ先輩藪から棒に」 「ん、いやー?さっき犬おったやん?せやからなんとなくなー」 「……それなら断然、犬です」 「断然ときたか。なんでや?」 「そうですね、すぐに鼻を近づけてきたりして懐っこいところ、尻尾を振って駆け寄ってくるところ、お手とかも嫌がらずにしちゃうところとかですかね」 「おお結構言うやないか。しかしまぁ、犬が好き言うたらそんなもんやろな」 「ならなんで聞いたんですか……」 「なんとなく言うたやろ……あ!おーい!オグリぃー!」 ─────────── 「!」 タッタッタッ 「イチ、タマ、遅くなってすまない」 「かまへんかまへん。ウチらも今着いたとこやし。道ぃ迷わんかったか?」 「そう言えば方向音痴なんだっけ、オグリ」 「大丈夫だ。この公園は朝のランニングで通るからな」 「あ、そうなんだ。ねぇオグリ」 「む、イチ、なんだかいい匂いがするな」 「えっちょっ、顔近っ」 「ハンバーグの匂いがする。うん、今日のお弁当が楽しみだ」 「そっちか……」 「相変わらず食いもんにはめざといやっちゃなー。犬みたいな嗅覚や」 「さっきも尻尾振って走ってきてたし。本当に犬みた……い…………」 「どうしたイチ。お腹が空いたのか?」 「まだ来たばっかりやろがい!……ちゅーのは置いといて……なるほどなぁ?」 「いや、これはその、オグリはウマ娘だし!その、あの」 「イチ、慌てなくていいぞ」 ギュッ 「……お手までしよったわ」 「わ、わ、わ」 「大丈夫か?イチ!?」 おわり Part14 その1(≫119) ≫119 二次元好きの匿名さん22/08/08(月) 20 40 44 モニー「ねぇ横で色々やられてるとアタシ寝れないんだけど…アンタ明日も練習あるでしょ…もう寝なよ」 イチ「ごめんもうちょっと…もうちょっとだから…」 モニー「…はぁアンタと変わりたいよ…目的を忘れて色恋に現を抜かせれて羨ましい〜…あぁ〜でも今より遅くなるのはイヤかなぁ〜」 イチ「好きなんかじゃないわよ!!」 モニー「そこなの?後半に関する言及はないの?結構酷いこと言ったよ?なんだったら前半も中々なこと言ってんよ?それはいいの?」 向かい部屋「うるさいよ!」 イチモニー「ごめんなさーい」 その2(≫152) ≫152 二次元好きの匿名さん22/08/14(日) 08 23 52 ねぇモニーちょっといい? なによ 前言ってたチア服届いたんだけどさいきなり皆の前で披露するの恥ずかしいし心配だからさ先にモニー見てくれない?感想聞きたいの まぁ…別にいいけど ありがとーじゃ着替えてくるから チア服…かなり露出あるけど大丈夫なの…? アイツのことだしそんな露出あるやつ選ばないか… おまたせしましたー! Part15 その1(≫56~61)≫18より派生 ≫18 二次元好きの匿名さん22/08/22(月) 02 25 11 イチちゃんを慕う娘がいてちょっとむむってなるオグリを見てみたい イチはすごいウマ娘だからな……!なんて思いながらも 日常の端々でモヤモヤした気持ちが残ってて 流石に練習の時までは引き摺ってなかったけど タマとかに 今日なんか変やで? なんて言われて かくかくしかじかしたら なんやホの字か〜? なんて揶揄われて ??? ってなって でも練習の時はそないでもなかったな! って言われて イチは…ちゃんと走らない私なんて見たくないと思うから 的なことを言って タマは こりゃ相当やなぁ なんて言って 後日イチに 大変やろけど応援してんで! って激励?しに来る ≫56 18 22/08/27(土) 02 15 19 『あ、あの!』 「……………」 「…………?」 「……アンタのお客さんじゃない?」 「! そうなのか?」 『あ、や、えーっと、その……違うんです…』 「………てことは、アタシ?」 『はい!』 「……ふ、ふふふ………」 『えっと、その! 昨日、その……走ってるところ見ちゃって、それで……すごく速くて、その…綺麗で!きょ、今日、併走!していただけませんか!』 「ふふ、ふふ………勿論、構わないわよ」 『!ありがとうございます!! じゃあ、放課後、絶対来てくださいね! 絶対ですよ!』 「ふ、ふ、ふふふっ……どーよ! これがアタシのカリスマよ! ………あ、でも…そっちとの折り合いがつかなくなっちゃうわね……折角アンタが空けてくれたのに」 「ううん。…構わない。イチは、凄いウマ娘だから……私だけが独り占めしてはいけないと思う」 「う、ぎ、ぎぎ…っ……ま、まぁ、とにかく! ありがとね! 絶対埋め合わせはするから!」 ───────── ………何なんだろう。 「…………………」 「オグリ………野菜ばっかそんな山盛りで足りんのかいな」 ───────────────── ………どうして、こんなにモヤモヤしているんだろう。 「…………………」 「オグリ? …オグリ〜? ちょ、ちょいマニキュア塗りすぎてへんか??」 ───────────────── ……喜ぶべきことなのに。 「オ〜グ〜リぃーーっ!!!」 ! 「す、すまない…タマ。じゃあ、始めようか」 ……とにかく、今私がすべき事は…走る事だ。 ───────── 「あっかん……もー無理……もーいッ歩も動かれへん…! 併走、誘ってもらっておーきにな、オグリ」 「こちらこそ。むしろ、急に誘ってしまって……迷惑じゃなかっただろうか……?」 「えーてえーて! ウチもここんとこ他のと併せしとらんかったしな、そろそろしときたいと思うてたんや! ……それよりウチはむしろ……今日のアンタのが気になったけどな。どないしてん」 「…………」 「タマは、魔法使いみたいだな…」 「いや、自分が分かりやす過ぎんねん。ウチの地元やったらツッコミのオンパレードやで」 「……そうなのか」 「例えやで? ほら、包み隠さず言うてみんかい! アンタとウチの仲やんか、な!」 タマは、やっぱり魔法使いみたいだ。私の気持ちを分かってるみたいに言葉を入り込ませてくる。 「…うん、ありがとう…タマ。じゃあ、聞いてくれるか?」 「よし来た! 十中八九は…あのイチとかいう娘のことなんやろけど………て、ハハハ。ホンマアンタ分かりやすいなぁ」 ───────── 「ふーん………要するに、その後輩いうのにイチが慕われとって……取られたって思ったんや。…く、ふふ……それであんななるって……アンタ、イチにホの字なんちゃうか?」 「ホの………?」 「………んー、まぁ、ええわ。忘れて」 取られたと、思ったからなのだろうか。あの時、イチに言ったことも…私は多分、本当にそうだと思ったから言ったんだ。 なのに、どうして……こんなに、胸が気持ち悪いんだろう。 「………分からないんだ」 「………ん〜、まぁ、そんなこともあるわな。ウチだって分からんことなんかごっつぅあるし。でも、アレやな! 走っとる時はそないな感じせんかったけど、それはどうなん?」 「! それは…………」 それは、分かっている。 何故、靴裏から飛んだ柴と一緒にモヤモヤを置いていくことが出来たのか。 それは……… 「……きっと、イチは、見たくないと思うから。ちゃんと、きちんと、走ることが出来ない私のことを」 「………ほぁ〜…………」 「……こりゃあ、相当やなぁ」 「? 何か、変だっただろうか」 「…ううん、何もあらへん。……いやぁ、それにしても……今日の風はホンマ気持ちいいなぁ」 ───────── 「…これで、いいかな……や、ちょっと焼き過ぎ…? …!……はーい! …って、タマモ先輩? モニーなら今出てますけど……待ちます?」 「や、お構いなく! ちょっとした野暮用やしな。……にしても、美味そうな匂いやなぁ……これ、明日の弁当?」 「? そうですけ「誰のん?」 ………誰だって、いいじゃないですか」 「……ほ〜ん。……結構、似たり寄ったりなんかもな」 「え?」 「んーん、なんでも! 色々骨折るやろけど、ウチは応援してるさかい…頑張りや!イチ!」 「? へ?え……ぁ、はい……ありがとうございます……?」 その2(≫147、149~152) ≫147 二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 13 51 16 ――ロクでもないヤツ、なんてものはホントどこにでもいるらしい。 私を人気のない校舎の裏に連れてきたふたりのウマ娘を見て、そう思わずにはいられなかった。 「悪いなァ、いきなりこんなところまで連れてきて」 「ウチらね、ちょーっとアンタにお願いしたいことがあんのよ」 口の端をつり上げて歯をむき出しにする、下品な笑い方。 生理的な嫌悪感でしっぽがムズムズした。 そういやこんな不良ウマ娘も、トレセン学園にはいたんだっけか。 「……で、私に何の用ですか」 「聞いたぜ。お前あのオグリキャップと仲いいんだろう?」 「そんなのあなたたちには関係ないでしょう」 「オイオイオイ、ちっとは口のきき方に気を付けた方がいいんじゃねぇのか!?」 ふたり組の片割れが私の襟首を締め上げる。 喉に感じる鋭い痛み。 どうせレースでもロクに活躍できない不良ウマ娘、と高をくくっていたけれどかなりの腕力だ。 「なぁに、カンタンなお願いだ。あのオグリキャップ様に頼め。ちょっとカネを貸してくれ、ってな」 ふざけるな、と言おうと思ったけれど。 締め上げられた喉からヒュウヒュウと空気が漏れるだけだった。 「それになぁ、お前ムカつくんだよ。オグリキャップに金魚の糞みたくベタベタしやがって。 どうせ有名ウマ娘とコネを作っとこう、とかそんな理由なんだろ?」 「アタシらに目をつけられた時点でなぁ、もう終わりなんだよ。同じトレセンにいるんだから逃げられるわけがねぇ」 ふたりの不良が獲物をいたぶるように私をにらみ付ける。 私の抵抗する気力はとっくに折れてしまっていた。 ────────────────────────────────────────────────────── 「まずはお前の持ってる分だけでいいから、出せや。あとはオグリキャップから金借りてこい」 「どうせオグリキャップはたっぷり稼いでるんだし、少しくらい分けてくれたっていいじゃん」 怖い。どうしようもなく怖かった。 もちろん、オグリから金をたかるなんて絶対にイヤだ。 でも理不尽な暴力を受けた私のメンタルはもう限界で。 ――オグリなら、きっとお願いすればお金を貸してくれるんじゃないか。 そんな考えが、頭の中をよぎってしまう。 「オラ、返事はどうなんだよっ」 締め上げたまま体をゆすられる。 喉が痛くて呼吸すらままならない。 とりあえず今だけでも苦しみから解放されたくて、私は不良の申し出を受け入れるしかなかった。 心の中で、何度もオグリに「ごめんなさい」と謝りながら。 私はこくこくとうなずく。 了承の合図と受け取ったのか、不良は私を締め上げる手を離した。 「ようやくわかってもらえたか。助かるわぁ。今月結構ピンチだったから」 「そんじゃ今持ってる分だけでも出してもらえる? ああ、それと」 不良の片方がにやにやと笑いながらスマホを取り出した。 「脱いで裸になれ。写真に撮ってやるからよ。もし誰かにバラしたら拡散してやるからな」 「恥ずかしくて脱げないってか? 何なら手伝ってやってもいいぜ」 下品な笑いを浮かべながら、ふたり組は私ににじり寄ってくる。 本気だ。このふたりは、本気で私から全てをむしり取ろうとしてるんだ。 私のお金も、プライドも、大切なものも、何もかも。 「たすけ――」 「おっと、今さら騒ぐんじゃねぇ」 不良の手のひらが私の口をふさいだ。 もう片方が私の制服のホックに手をかける。 スカートを外され、中に履いているスパッツまで下ろされて。 もういっそ死にたい、と心の中で叫んだ、その時だった。 ────────────────────────────────────────────────────── 「な に を し て い る ?」 銀髪のような芦毛をなびかせて。 私が今まで見たこともない、殺気すら感じるほどの怒りを浮かべながら。 オグリキャップが、そこにいた。 「何をしている?」 いつの間にか不良ふたりは直立不動になっていた。 それくらい怖いのだ、今のオグリが。 「黙っていてもわからないぞ」 たとえ野生のヒグマと直面したとしても、今のオグリと比べればたぶん大したことない。 そう思えるくらい今のオグリは怖かった。 あの食いしん坊で、天然で、優しいオグリとは別の存在に思えてしまう。 にらまれるだけで心臓が止まりそうだ。 「イチに何かしたのか」 オグリは服を脱がされけている私の方をちらりと見る。 まあこの状況を見れば、何かよからぬ事があったのは明らかだ。 ずいっ、とオグリが不良たちと距離を詰める。 不良たちは恐怖で固まってしまっているのか、逃げようとすらしなかった。 「何をしたんだ……どうした、話せないのか」 なおもオグリは近づくと、両手でそれぞれの不良たちの肩をつかんだ。 肩をつかまれた瞬間、不良たちは「ひいっ」と情けない声を上げていた。 「私が大食いなのは知っているだろう。もちろん肉だって食べる。いや、むしろ大好物だ」 不良たちがカチカチと歯を鳴らし始めた。 震えているのだ。 このオグリという「怪物」からにじみ出るオーラに圧倒されて 「活きのいいウマ娘の肉は――さぞ美味いんだろうな」 「たっ……たすけっ……」 「い、命だけは……」 不良たちふたりはカタカタ震えながら、その場に水たまりを作っていた。 ────────────────────────────────────────────────────── 不良たちが戦闘不能になったのを見届けると、私はそそくさと服を着直した。 それからオグリに手を引かれ、寮の私の部屋へと向かう。 幸いモニーはいなかった。そういえば今日はタマモ先輩と併走するって言っていたっけ。 「あの不良たちに何をされた? 話してくれ」 怒っているようにも見えるけれど、さっきのように怖くはなかった。 むしろ心配の色の方が濃いように見えたから。 隠しても仕方ない。私は不良たちにされたことを全て話すことにした。 「――とまあ、こんなところ。ああ、先生やたづなさんには内緒ね。あんまり大事にしたくないし」 「ダメだ! また同じことがあったらどうするっ」 オグリの大声に少し驚いてしまう。 でも本気で心配してくれてると思うと、少し嬉しい。 「こういう時は大人を頼らないとダメだ。でないと手に負えないと思った時には、すでに手遅れになってしまう」 「そっか……そうだよね」 「あと、頼るなら私を頼れ。イチに悪いことをするヤツは、全部食べてしまうからな」 「ははっ、いくらオグリでもさすがに無茶でしょ。えっ、冗談……だよね?」 まさか不良ウマ娘たちも、あの時は本気で「食べられる」と思ったのだろうか。 いや、さすがにそれはないだろう。無いと思う……たぶん。 「ところでイチ、あの不良たちに傷つけられなかったか」 「少し喉は痛いけど、あとは何ともないよ」 「す、スカート、脱がされていただろう。まさか変な事をされて――」 「何もないって!」 「よかった。私はてっきりイチが傷物にされたかと思って」 「いや傷物って表現!」 「とにかく無事でよかった。けれど、イチがまた今回のように悪いヤツに絡まれたりしないか不安なんだ」 「まあ気を付けるよ。でもあれだけオグリがしっかり脅してくれたから、大丈夫だと思うけど」 「いいや、それでも心配なんだ。できることならイチから一秒たりとも目を離したくない。私はそれくらいイチが大切なんだ」 オグリが私の手を包むように掴んだ。時に怪物と呼ばれる彼女の手は温かくて、柔らかかった。 「さ、さすがに心配しすぎでしょ……」 ぷいっ、と私はオグリから顔をそらした。 今の赤くなった顔は、できれば見られたくなかったから。 ────────────────────────────────────────────────────── あれから数日後。 私はモニーと買い物のため外出していた。 そういえば、あれからあの不良たちとは会っていない。 風の噂では学園から姿を消した、なんて話もあるようだけれど。 ぶるる、と私のスマホがメッセージの着信を震えて知らせた。 「イチってば、今日スマホいじってばっかりじゃない?」 メッセージを確認する私を見て、モニーは面白くなさそうに文句を言ってくる。 「……ごめん」 「いや、そんな深刻な顔で謝らなくても。どうしたのさ、何かあったの」 モニーと出かけている間だけで、メッセージの着信はとっくに10件を超えていた。 さすがにいちいち返信はできない。 というか、なんて返信したらいいのか。 『イチ、今日は出かけているのか。部屋にいないから心配したぞ』 『買い物に行っているのか。どうして私に声をかけなかった?』 『またアイツらに絡まれたら大変だ』 『今どこにいるんだ?』 『電話してもいいか』 『ああ、やっぱりイチが心配だ』 『お互いの居場所がわかるアプリを入れておけばよかった』 オグリから送られてくる大量のメッセージ。 ちらりとスマホをのぞき見たモニーはひきつった苦笑いを浮かべていた。 「これは……愛されてるなぁ」 「愛されてるっていうか、過保護なのよ。私だって自分の身くらい自分で守れるってば」 「そういって危険な目にあったから、こうして心配されてるんでしょ」 「ぐぬぬ。まあ、これからは気をつけるわ」 「それに……私だって、心配なんだからねっ」 ぼそり、とモニーが何やらつぶやいていたけれどあえて返事はしなかった。ひとりごとのようにも聞こえたから。 とりあえずオグリには「大丈夫だから。ごめんね」とだけ返信しておく。 それから私は、少しだけ顔の赤いモニーと買い物を続けた。 Part16 その1 グランドライブ編1 (≫58~65) ≫58 二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 18 25 58 『イチ..?あー、あのオグリキャップの親友の』 『オグリちゃんとよく一緒にいる娘ですよね!かわいくて結構好きです!』 『一緒にいるオグリキャップが幸せそうな顔してるのが印象的でしたね』 『レースは、どうなんだろう?よく知らないですね』 よせばいいのに、ついつい気になってしまう。私はネットで時々、自分の名前、"レスアンカーワン"を検索してしまう。 検索して一番に出てくるのは、"イチ"の評判、オグリと一緒にいる写真。 レースの成績なんかはそれなりにスクロールしなければ見つからない。 私はレースの成績の割にはファンが多い。 でもそれは、例えばウララちゃんのような、頑張り屋なところが評価されてとかそういうわけじゃない。 ただオグリとよく一緒にいるから、オグリの親友というイメージが付き、所謂箱推しのような形でファンが増えた。 だから、私のレース成績のこととか余り知らない人が多い。 彼らが好きなのは、オグリと一緒にいる"イチ"であり、レスアンカーワンではないから。 "レスアンカーワン"を応援してくれている人は、いない訳ではないが、殆どいない。 全く不満がないと言えば嘘になる。 でも、特に嫌なわけではない。 それに、これは、私への罰のようなものだから。 オグリに嫌がらせをしようと絡みにいって、その結果が生んだ状況だから、これは私が甘んじて受け入れるべきことなのだろうと思っている。 でも、こうしてネットで検索して改めて突きつけられると、モヤモヤとした気分が強く感じられる。 この気持ちを放っておくのも良くないと思い、気分転換に少し散歩をすることにした。 門限も近かったから、学園内をうろうろと散策することにした。 ────────────────────────────────────────────────────── 暫く学園内を歩き回り、模擬ライブ会場の近くを通りかかる。 何人かの娘達が集まって踊っていた。 ライブの練習だろうか。 そんなことを考えながら前を横切ろうとすると、突然後ろから声をかけられた。 「あ!レスアンカーワンちゃんだよね!少し時間いい?聞いて欲しいお話があるの!」 突然自分の名を呼ばれ驚いて振り向くと、そこにはスマートファルコンがにっこりとした笑顔で立っていた。 「突然ごめんね。少しだけでいいの。今、急いでたりする?」 何の話かは分からなかったが、一線で活躍する娘に名前を知ってもらえていたという嬉しさがあり、話を聞くぐらいならいいかなと思った。 「ええ、まあ、特に予定はないので、大丈夫ですよ」 「本当!よかったぁー。えっとね、実は私達、グランドライブっていう大きなライブを計画しているんだけどね」 そう、嬉しそうにファルコンさんはグランドライブ計画の説明を始めた。「どう?グランドライブ参加してくれない?」 説明を終えたファルコンさんが期待のこもった眼差しを向けてくる。 「うーん..確かにウィニングライブ以外の形っていうのは目新しさがあっていいと思います。 でも、私なんかより適任の人はいっぱいいますよ。グランドライブ実現の為には観客も多く集めなきゃいけないですよね?私なんかよりも、もっとファンが多い人に声をかけた方がいいと思います」 先程まで、ファンのことでモヤモヤを抱えていたせいか、つい僻んだことを言ってしまった。 でも実際、オグリみたいなスターを呼び込んだ方が計画成功 私みたいなのが参加しても.. ────────────────────────────────────────────────────── 「ファンの数は関係ないよ!」 ファルコンさんは語気を少し強めてそう言い切った。 「私が言うのもおかしな話かもしれないけれど、ファンの数が多い娘ばかりを集めても、それは形を変えたウィニングライブにしかならないと思うの」 だから、と彼女はしっかりと私の目を見据えて言った。 「ファンの数は関係ない、関係なくしなきゃいけない」 「でも、観客が集まらなかったらどうしようもないですよね」 「う..そこはなんとかする。なんとかしてみせる!」 だから、お願い。とファルコンさんは顔の前で手を合わせてお願いしてきた。 その時は、ファルコンさんの理想に共感しないわけじゃなかったし、参加したくないわけではなかった。 ただ、勉強とトレーニングの両立でも大変なのにそこにグランドライブも加わるとなるとやはり迷わずにはいられなかった。 だから、少し考えていた。 すると、ファルコンさんが言った。 「それに、さっきはああ言ってたけど、イチちゃんもファンの数は多いよ!」 ファンの数を引き合いに出して断ろうとしたこと、その後で迷っている素振りを見せたから、多分、励ますつもりで言ってくれたのだろう。 私の本名も、愛称も知ってくれていて、いつもなら喜んでいたのだと思う。 ────────────────────────────────────────────────────── いつもなら、「そんなことないですよ」とか笑いながら当たり障りなく流せる。 でも、今は、そうできなかった。 「多くなんてないです。皆さん実質的にはオグリのファンみたいなものですし」 まただ。ファルコンさんは何も悪くないのに、つい刺のある言い方をしてしまった。 やっぱり、断ろう。こんな私が参加しても、きっと迷惑にしかならない。 あの、と口を開いた瞬間、横から誰かが割ってはいってきた。 「やあやあ。ファルコンくん。この娘を勧誘しているのかい?」 「あ、タキオンちゃん」 割って入ってきたのはアグネスタキオンさんだった。 この前、皐月賞を獲った、これまた一線級よウマ娘だ。「ふーむ。その顔から察するに、余り良い反応を貰えていないようだねぇ」 「うっ。さすがタキオンちゃん。鋭い..」 タキオンさんの乱入に邪魔されちゃったけど、ちゃんと断らなきゃ、とタキオンさんに向けていた目線をファルコンさんに戻した。 その時、タキオンさんが興味深げな顔で、おや?と私の方へ近付いてきた。 「君、確かどこかで..ああ、そうだ。オグリ君の親友、イチ君、だったかな..?」 今日は厄日だ。 いつもなら、ここまでモヤモヤすることもないのに。 ────────────────────────────────────────────────────── むしろG1を獲るようなウマ娘に自分のことを知って貰えているなんて嬉しくなってもおなしくないのに。 今日に限って。 エゴサなんて、やっぱり録なことにはならない。 私は少し伏し目がちになりながら、小さく「はい」とだけ答えるので精一杯だった。 その様子を見ていたタキオンさんは、少し顎に手をあて、何かを思案する素振りを見せたかと思えば、直ぐに私の耳に顔を近付けて囁いた。 「君という存在を皆に刻み付けるチャンスだよ。レスアンカーワンくん」 驚きと困惑が私を襲った。 私の名前を知っていたことに驚いたのは勿論。 私の抱えているモヤモヤを知っているかのような発言も さっき、私のことはなんとなく知っている程度というような言動をしていたことも私を混乱させた。 「なんで..」 私は驚きと混乱で、思わずそう口に出していた。 「なんで、とは、何に対してのことかな?」 タキオンさんはそう、意地の悪い目をしながら、ニヤリと笑った。 少し冷静になり、一つの考えに思い至った。 もしかして最初の、私のことをオグリの親友と言ったあの言葉は、私の反応を見るためだったんじゃないか、と いや、でもなんのために? というか、何で私の悩みを知って..? ────────────────────────────────────────────────────── もしかして、ファルコンさんとの会話、聞いてたんじゃ..? 「恐らく君の想像通りだと思うよ」 クックックッと彼女が笑う。 「そして私の予想通りでもあった、という訳さ!」 両手をばっと左右に広げ、人差し指と薬指をピンと立たせた謎のポーズを取りながら、彼女は言った。 この人は心が読めるんだろうか。 それともそう思わせているだけ..? もし会話を聞いていたならいつから聞いていたんだろう? わからない。 それに、ずっとニヤケた笑みを浮かべていてなんだか少し腹立たしくも感じるけれど。 でも、私は彼女の言葉で気持ちが揺らいでもいた。 「君にとっても悪い話ではないはずだ。どうだい?私達と共にグランドライブを成功させてみないかい?」 タキオンさんは、またさっきの変なポーズをして、勧誘してきた。 なんだか、掌の上で踊らされているようにも思ったが、私の気持ちは傾いていた。 心のモヤモヤも少し晴れていた。 答えが分かったから。 私が、何にモヤモヤとした感情を抱いていたのかの。 ううん。本当はずっと分かってたんだと思う。 それに自分への罰だなんだと蓋をしてきた。 でも、彼女の言葉でその蓋が開けられてしまった。 でも-- ────────────────────────────────────────────────────── 「でも、私はファルコンさんみたいな、凄い目的とか、理想とかないですから。足を引っ張るだけだと思います」 この言い方では参加自体が嫌とは言っていないということに言い終えてから気が付いたが、時既に遅し。 先程まで、私が不機嫌な態度をとってしまっていたせいで、困ったような顔をしていたファルコンさんの表情が明るくなった。 一応断りの文言を言ったはずなのに、まるで気にしていないかのように。 対照的に、タキオンさんは先程までのニヤケているような笑みが消え、真剣そのものな表情になっていた。 そして、私の目を見据えて、口を開いた。 「何かを成し遂げたいと思う気持ちに、大層な理由なんて、必要ない。私はそう考えているよ」 彼女は、直ぐに元のニヤケた笑みを顔に浮かべ、またまた謎のポーズをして声を張り上げた。 「グランドライブは皆のエゴをぶつける場所さ!」 エゴ、マイナスの意味で使われているその言葉に、何故だか私は惹かれた。 「それに、参加者皆がファルコン君と同じ目的を共有しているわけではない。私とて、そうさ。ただ、私の目的の為に利用出来ると考えたから、こうして参加している」 ファルコンさんがエッというような顔をしているのが視界の端に見えたが、タキオンさんは構わず続ける。 「君も存分に利用したまえ。グランドライブとは皆のエゴの、夢のためにある」 ────────────────────────────────────────────────────── 私は、オグリと一緒にいる"イチ"として好かれていることが、特段嫌な訳ではない。 でも、全く不満がないと言えば、嘘になる。 私を"レスアンカーワン"として応援してくれる人は殆どいない。 でも、いない訳じゃない。 メイクデビュー以降、レースの度に観客席から私の名前を叫ぶように呼んで、応援してくれている人達がいる。 数百人、もしかたら数十人にも満たないかもしれないけれど、確かにいる。 私は、私なんかをそんな風に応援し続けてくれている人達に、"レスアンカーワン"のファンに「勝てたよ」でも、「応援ありがとう」でもなくって、「私のことを好きになってくれてありがとう」って伝えたい。 そして、私は、"イチ"のファンに"レスアンカーワン"の存在を、叩き付けたい。 こんなの、完全に私のエゴ、我が儘だ。 でも、もし、それが許される場だと言うのなら、その為に使ってもいいと言うならば.. 気付けば、口を開いていた。 「私、参加したいです。いえ、参加させてください。グランドライブに!」 その2 グランドライブ編2 (≫77~82) ≫77 二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 18 53 36 グランドライブ計画に参加してから数週間経った。 毎日、トレーニングの後にライブの練習や勧誘で忙しく、自由な時間なんて殆ど無くなった。 でも、不思議と後悔を感じたことはない。 参加したいと言ったときに「私は全て分かっていたよ」とでも言いたげな表情をしていたタキオンさんの顔を見た瞬間を除いて、だけど。 そんなある日、いつも通り、朝のお弁当を渡してオグリに渡して、食べ終わるのを待っていた時のことだった。 オグリが珍しくお弁当の中身や味のこと以外で私に話しかけてきた。 「イチ..その、最近寮に戻る時間も遅くて、とても忙しそうだが、何かあったのか..?」 オグリにはすっかり伝えたつもりだったが、どうやら伝えていないという事実を失念していたらしい。 トレーナーさん、モニー、そしてクリークさんには話していた。 だから自然とオグリにも話していたと思い込んでいた。 「ごめん。そういえば言ってなかったね。実は私、今グランドライブ計画に協力してて、それでレッスンとかで帰るのが遅くなってるの」 「グランドライブ..ああ、噂になっているやつだな。イチも参加していたのか」 その会話の後はいつも通り、オグリがお弁当を食べ終えるまで会話はなかった。 「ご馳走さまでした」 「はい、お粗末様でした」 「今日も美味しかったぞ。ありがとう」 そう言ってオグリは私にお弁当箱を差し出した。 ────────────────────────────────────────────────────── 「ありがと」 いつも通り、そのまま朝練に向かおうと立ち上がりかけた時、オグリが少し不安気にも見える顔で私に言った。 「もし、イチが大変なら、朝の弁当は無理しないで大丈夫だぞ。私は、イチの邪魔はしたくない」 オグリが私を引き留めるなんて珍しかったから何を言われるのか少し不安だったけど、彼女の言葉を聞いて、安心した。 「無理なんてしてないよ」 そう笑いかけた。でも、オグリはまだすっきりしてないようで、「本当に無理してないか?」と尋ねてきた。 「本当だよ。もう一年ぐらい続けてるから、むしろ作らなかったら調子が狂っちゃう」 オグリはようやく安心したように、「そうか。良かった」と呟くように言った。 しかし、オグリはまだ何か考えているのか、まだ少し難しい顔をしていた。 「オグリ、どうしたの?」 「いや、うん。イチと一緒にライブが出来たら楽しいだろうなと思ったんだ。私も、グランドライブに参加しようかな」 「ダメ!」 ────────────────────────────────────────────────────── 口に出した私が驚く程の声でそう口に出していた。 「イチ..?」 「あ、いや、違くて、オグリと一緒にやるのが嫌とかじゃないの。ただ..」 「ただ..?」 オグリはさっきよりも不安そうな顔をしていた。 当然だ。後から思い返しても、私がなんであそこまで強く言ってしまったのか分からないほどなのだから。 ただ、困惑と同時に、ある強い思いを抱いてもいた。 私は、オグリにも.. 「ただ..オグリには、観客として私を観てて欲しいの。"私"を、観て欲しい」 そこで漸く私は我に返った。 「あ、いや、ごめん。何言ってるんだろうね。オグリがやりたいって言うのに、私がダメって言う権利もないのにね。アハハ。ごめん。ホント」 早口でまくし立てる私のことをじっと見つめた後、オグリは、頷いた。 「分かった」 「え..?」 「イチがそう言うなら、私は観客として観ようと思う」 オグリは真っ直ぐに私の目を見据えながらそう言った。 その声音からは私への信頼を感じた。 ────────────────────────────────────────────────────── 「~~っ!もう、本当..そういうとこが..」 私はそう小さく口にしながら、恐らく赤くなっているであろう顔を見られないように、オグリから目をそらした。 「何か言ったか?イチ」 「..別に..ずるいなって..」 私は何を言っているのだろう。 「ずるい..どういうことだ?」 「何でもない!じゃあ、私行くから!」 私はそう言ってお弁当箱を抱いて、そのまま駆け出した。 「いや、何で追いかけて来てんの!?」 私が駆け出した直後、オグリがそのまま後ろから追いかけてきた。 ────────────────────────────────────────────────────── 「イチ、すまない。何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか」 その言葉を聞いた私はスピードを緩めながら、否定した。 「怒ってるわけじゃない」 オグリもスピードを緩め、私の近くで止まる。 「じゃあ、どうしたんだ?」 「何でもない」 私がそのまま再び歩きだそうとすると、オグリに腕を掴まれた。 「何か、嫌な気持ちにさせてしまったなら正直に言って欲しい。私はイチに嫌われたくはないんだ」 本当にずるい、これで振り切って行けるわけないじゃないか。 「オグリにドキドキさせられたなんて!本人に向かって言えるわけないでしょ!」 そうヤケっぱちで言い捨て、オグリの腕を振りほどき、走り出す。 オグリは私の言葉に、声の大きさか内容にかは分からないけど驚いたみたいで、今度は追いかけて来ることはなかった。 オグリに変な不安を抱かせたり、最後に無理矢理腕を振りほどいたりしたことに罪悪感を覚えつつ、私はそのまま駆けていった。 イチの言葉に驚き、その場に取り残され暫く呆然としていたオグリキャップは、誰に向かって言うでもなく、一人、ポツリと呟いた。 「確かに、私はずるいな。イチと過ごす時間が減るのが寂しくて、私も参加すると言ったなんて、絶対に言えないから」 その3(≫101) ≫101 二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 14 14 23 モニー「はいこれ、お祝いのケーキ」 イチ「お祝い? えっ、なんもお祝いされるようなことなんかないけど」 モニー「だって、ほら。できたんでしょ・・・彼氏」 イチ「彼氏!? いないってば、そんなの」 モニー「見たんだよ、商店街でイチと帽子をかぶった男が歩いてるの。男の顔はちらっとしか見えなかったけど」 イチ「男となんて出かけるわけないでしょ?きっと見間違いだってば」 モニー(見間違いなわけない。あれは間違いなくイチだった) モニー(どうして隠すんだろう。私には話してくれないんだろうか) モニー(ルームメイトで、ライバルで、親友だって思ってたのに) モニー(もしかして・・・そう思ってたのは、私だけ?) イチ「ねえモニー」 モニー「な、なに?」 イチ「それ、たぶん・・・変装してたオグリだと思う。GⅠレースの後だから、あんまりファンから声をかけられると落ち着かないからって。それで帽子で髪と耳を隠してたの」 モニー「うそでしょ、それじゃあ私の勘違い?」 イチ「うん、まあ、そうなるかな。でもさ」 モニー(は、恥ずかしい・・・) イチ「ケーキは、半分こしようか」 モニー(そう言って、困ったように笑いながらイチはケーキを切り分けてくれた) イチ「うん、おいしい。モニーは私があそこのケーキ屋さん好きだって知ってたんだね」 モニー「もちろんでしょ。だって――」 ――私はイチの、友達だもの。 その4 男装オグリとイチのデート (≫121~125) ≫121 男装オグリとイチのデート がやがやと騒がしい休日のショッピングモール。 私はオグリとふたり、連れ立って出かけていた。 「今日のイチはずいぶんと可愛い服を着ているな」 オグリが真顔で言い放つ。 さらっと事もなげに言ってくるのが、ちょっぴり腹が立つ。 こっちは顔が赤くなるのを抑えるのに必死だというのに。 ちなみに、いつもより張り切ってオシャレをしたのは内緒だ。 「べ、別に可愛くなんかないわよ。それよりオグリはなんでそんな・・・男の子みたいな格好なの」 今日のオグリはロングヘアを後頭部にまとめ、帽子をかぶって目立たなくしている。 耳も隠れているから、よほどじっくり見ない限りオグリキャップだとはわからないだろう。 「今日はなるべく、目立たないようにしたんだ。ファンに声をかけられないように」 「あら、オグリってファンサービスとか苦手なタイプだっけ?」 そんなことはない、とオグリは首を振る。 「せっかくイチとのお出かけだからな。イチとの時間を大事にしたいんだ」 どくん、と心臓が飛び跳ねた。 本当に何なんだ、この芦毛の怪物は。 「あっ、あそこ、キッチン雑貨のお店! ちょっと見てくるっ」 耐えきれずにオグリと距離をとる。 動揺したせいで変な汗まで出てきた。 大丈夫かな、クサくないだろうか。 別にオグリはそんなこと気にしないとは思うけど、そんなことまで気にしてしまう。 すぐにオグリは追い付いてくる。 そう思っていたのだけれど、オグリがやってくる気配はない。 ────────────────────────────────────────────────────── 「――あ、あの! いっしょに写真撮ってもらえませんかっ」 さっきまでオグリがいた方向から、黄色い声が聞こえてくる。 振り向けばオグリが知らない二人組の女から声をかけられていた。 「オニイサン、すっごくカッコいい! 銀髪が似合う男なんて生で初めて見た」 「もしかして外国のヒト?ねぇお願い、ちょっとだけでいいから」 頭の悪そうな若い女に囲まれても、オグリは落ち着いていた。 さすがはGⅠで何勝もしているウマ娘。 戸惑ってはいるようだけど、取り乱すことなく対応していた。 その光景を見て思い知らされた。 私なんかとは格が違うのだ、オグリキャップというウマ娘は。 気が付いたら私は駆け出していた。 もちろん全速力ではないけれど。 それでもショッピングモールを走るには、ヒトにとっては十分に危ないスピードだった。 「――おい、気をつけろ! どこ見てんだ!?」 「ウマ娘じゃないか、危ねえな」 どすん、と重い衝撃。 見上げればいかにもガラの悪そうな若い男がふたり立っていた。 片方の男は、私がぶつかったところを痛そうに押さえている。 その光景を見て、私は背筋がすうっと冷たくなった。 「おいおいおい、ウマ娘が店の中を走り回ったらダメだろ」 「トレセンに通報されたくなかったら……わかってるよな?」 ウマ娘がヒトにケガをさせるのは、正当な行為でない限り許されない。 トレセンに入学してから何十回も言い聞かされてきたことだ。 「ご、ごめんなさい。私の不注意で」 こんな混み合ったお店で、走ってぶつかってケガをさせたなんて知られたら、トレセンを退学になってもおかしくない。 それだけはなんとか避けたかった。 ────────────────────────────────────────────────────── 「まあ、こんな可愛いウマ娘ちゃんとお知り合いになるチャンスなんてそうそうないからな」 「悪いようにはしねぇ、ちょっとお兄さん達と遊ぼうぜ?」 ニヤニヤと笑う男どもの、ねっとりとした視線。 私の耳、胸、お尻、太ももから、つま先まで。 気持ち悪い。本当に気持ち悪い。 でも、ここで抵抗したら、私の立場が悪くなってしまう。 覚悟を決めた――その時だった。 「イチ!!」 帽子をかぶったオグリが駆け寄ってくる。 その姿をみた男どもは、挑発的な表情をオグリに向けた。 「なんだテメェ、この子の彼氏か?」 「彼氏ならよぉ、お前にも責任取ってもらおうか。さっき思いっきりぶつかられてな、まだ痛てぇんだ」 殴りかかりそうな勢いで男どもはオグリに詰め寄った。 このままじゃオグリもただではすまない。 私のせいだ。私のせいでオグリに迷惑をかけてしまう。 私のせいで、もしオグリがレースに出られなくなったりしたら―― ――イチ、大丈夫だ。問題ない。 ウマ娘だけに聞こえるくらいの、小さなささやき。 そんなかすかな声が、私にとっては何よりも頼もしかった。 「申し訳ない。ここは私が誠心誠意をもって、対応させてもらおう」 そう言ってオグリは帽子を脱いで、まとめていた髪をほどいた。 芦毛のロングヘアがさらりとなびく。 まるで風になびくカーテンのように舞う髪からは、ふんわりと花の香りがした。 もし三女神がもし目の前に現れたとしたら、きっとこんな感じなんだろう。 気付けば、私もガラの悪い男たちもぽかんと口を開けていた。 オグリの姿に見とれてしまっていたのだ。 ────────────────────────────────────────────────────── 「た、助かった……」 がくり、と力が抜ける。 よろけた私をオグリが支えてくれた。 「大丈夫か。立てるか?」 大丈夫、と言おうと思ったけれど思ったように脚に力が入らない。 情けないことに、男どもに絡まれたせいで思ったより私はビビッてしまっていたらしい。 私が歩けなくなっていることに気づいた店員さんが、バックヤードにある休憩スペースを使っていいと声をかけてくれた。 「すまない。少しの間、休ませてもらえるだろうか」 ひょい、とオグリは私を抱え上げた。 いわゆるお姫様抱っこ、というやつで。 トマトみたいに赤くなった私は、あっという間にバックヤードに連れ込まれてしまった。 ちょこん、と休憩スペースの椅子に座らされる。 オグリは膝をついて私と視線の高さを合わせた。 「……すまない、すぐに駆け付けられなくて」 「別に怒ってないし」 「もう心配ないぞ、私がいるからな」 「わかってるわよ、そんなの。だってオグリが来てくれたんだもの」 とはいえオグリはまだウマ耳がふにゃりと垂れてしまったままだ。 まだ私を危ない目に合わせてしまったことを気に病んでいるらしい。 「ああ、もう、私は大丈夫だからっ。せっかくだし美味しい物でも食べて帰りましょう」 しょんぼりしたオグリに少しでも元気を出してほしかった。 私はぴしゃりと自分のひざを叩いて、立ち上がろうとして。 焦っていたせいか、椅子に足をぶつけてよろけてしまう。 「イチ、危ない!」 がっしりと私を支えてくれたオグリに、そのままもたれかかる。 やわらかい感触、花のような香り、そして――オグリの匂いがした。 ────────────────────────────────────────────────────── 「私はそこまでお腹は空いていない……本当だぞ。だから今日はもう帰ろう」 「やだ」 オグリが私を心配してくれているのは、痛いほどわかる。 わかるけれど、それでも。 「なあ、そろそろ離れた方がよくないか」 「やだ」 それでも、私はオグリに抱きついたまま離れない。 「……やれやれ、今日のイチはずいぶんわがままだな」 諦めたように、ふっと笑ったオグリの手が私をそっとなでる。 今日はオグリを困らせて、甘えてばかりだ。 でも、せめて今日くらいはいいだろう。 そう開き直って、私はオグリにぐりぐりと鼻先をすり寄せた。 その5 (≫149) ≫149 二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 20 36 28 部屋にはオグリと私、ふたりきりだ。モニーはどこかへ出かけたのか、戻ってくる気配はない。 「なあイチ、これを受け取ってくれ」 ムカつくくらいキリっとした顔をしたオグリが、小さな小箱を取り出した。 たぶん5センチ四方くらいだろうか。 オグリがその箱を開ける。閉じ込められていた煌めきがきらきらと輝いた。 私にだってわかる。これがダイヤモンドだってことくらいは。 「え、なにこれ、指輪・・・?」 「ああそうだ。受け取ってくれ。これは婚約者の証しだ」 「で、でも・・・ウソでしょ、私ウマ娘よ?」 「気にするな、カサマツじゃ全然ありだ」 私の精一杯の抗議を、オグリはまったく意に介することなんかなくて。 くいっ、と私のあごを持ち上げる。 私はもう身動きなんてできなかった。 オグリの顔が、唇が近づいてくる。 怖いわけではないけれど、無意識のうちに目をつぶっていた。 視界はなくても気配はわかる。 アイツの唇が、もう少しで、触れそうに―― ― ―― ――― 「……だめっ!」 目を覚ませば、見慣れた部屋。そしてモニーの穏やかな寝息。 「なんなの……意味わかんない」 ずいぶんと妙にリアルな夢だった。本当にムカつく。 どうして起き抜けにこんなモヤモヤした気持ちにならないといけないの。 それもこれも、あのやたら顔の良い芦毛のウマ娘のせいだ。 起きるには少し早い時間だけれど、二度寝はできそうにない。 仕方なく私は、ちょっとだけ手の込んだお弁当をアイツに作ってあげることにした。 その6 グランドライブ編3 (≫169~175) ≫169 二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 19 14 33 思えば、不思議だ。 あの日、私はエゴサをしていなければ、グランドライブには参加していなかったかもしれない。 ファルコンさんが私に声をかけなければ、 タキオンさんの言葉が私のエゴの蓋を開けていなければ、今、私はここにはいないだろう。 この計画に参加しなければ卒業まで関わることもなかったであろう娘達と肩を並べ合っている。 二人には感謝している。 私の思いを皆にぶつけるチャンスを貰えた。 私の思いに気付かせてくれた。 だから、私の「夢」のためにも、彼女達の「夢」のためにも、今日は、絶対に成功させる。 今日はグランドライブ当日。 それぞれの「夢」を胸に抱いて、私達は躍り、歌う。 「やあ、イチくん。調子はどうかな?」 「さすがに緊張しますね。タキオンさんは..いつも通りですね」 「はっはっは!そう見えるかい?」 少なくとも緊張しているようには見えなかった。 「緊張してるんですか?」 「多少はね。これだけの時間を費やして来たんだ。緊張しない方がおかしいさ」 少し意外だった。全校生徒の前であれだけの演説をぶっていた彼女でも緊張するのだなと思った。 いや、あれだけのことを言ったからこそなのだろうか。 ────────────────────────────────────────────────────── 「二人ともー。十分後には始まるよー」 そうファルコンさんが私達を呼びに来た。 「ああ、すぐ行くよ」 「すぐ行きます!」 返事をして立ち上がった私は、ふと思い立って、二人を呼び止めた。 「あの、ファルコンさん。タキオンさん」 「どうしたの?」 「どうかしたかい?」 「その、ありがとうございました。私が、今日、ここにいるのは、お二人のおかげです」 私は深々と頭を下げた。 「お礼を言われるようなことはした覚えはないよ」 「そうだよー。私の方こそ皆にお礼を言わなきゃいけないのに」 「それに、終わった気になるのはまだ早いよ。グランドライブは、これからだよ」 確かに、その通りだ。 私は気を引き締め直し、二人と共に、待機場所へと向かった。 ────────────────────────────────────────────────────── ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「よーさん人おるなー。大盛況やな」 「ああ、だが、正面の位置を取れなかったのは残念だ」 「ステージの通路?かしら、がぐるっと一周してるように見えますし、此方にも来るんじゃないですかね~」 「変わった形のステージですね」 今日、私はタマとクリーク、モニーと共に、グランドライブを観に来ていた。 タマの言った通り、観客はとても多く、移動するのが難しい程だ。 あの日、イチに観客として観て欲しいと言われてから今日まで、ずっと楽しみにしていた。 何故、イチは私に観て欲しいと言ったのか、その理由はまだ分からない。 だからーー 「観ているぞ。イチ」 ────────────────────────────────────────────────────── ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「うぅー。緊張してきたー」 トップバッターである私達は、既に360度一周しているステージの真ん中にある、砦のようなオブジェクトの中で待機をしていた。 緊張した空気がここには立ち込めていた。 そんな中、誰かがポツリと漏らした緊張の言葉を、ファルコンさんは聞き逃さなかったようだ。 「よし!皆で円陣をくまない?少しはリラックスできるかも!」 ファルコンさんの提案があり、皆、めいめいに円形になるように並んだ。 20人近くが一つの円になり、手を重ねたから、かなりぎゅうぎゅう詰めになってしまった。 「せま!」 「きついー!」 そんな声も聞こえてきたり、それで笑った娘もいて、皆自然と張り詰めていたものが溶けていった。 「よーし!じゃあいくよー!」 ファルコンさんの掛け声で皆がざわつきを沈める。 「トレセーン!ファイッ!」 オー!と声を合わせ、重ね合わせた手を掲げる。 皆、緊張が解れたようで、笑みを交わしながら、再びそれぞれの待機位置へともどって行った。 そして、その直後、スタッフさんからもう始まるという旨の声がかかる。 私は最後に、ふう、と一息付き、前を見据えた。 ────────────────────────────────────────────────────── ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 観客席の照明が落ちて行き、辺りに光を与え続けているのはステージを照らすライトと皆の持つペンライトの光だけになっていく。 既に観客席は静まり返っている。 ウィニングライブとは違う、不思議な高揚感が会場を包んでいた。 そして、曲が、始まった。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 目の前の跳ね橋が降りていき、少しずつ会場の景色が目に入り始めた。 ステージに向かって行進をする。 やっと皆合えたね。 そうだ。やっとだ。やっと、私のエゴを"私"のファンにぶつける時が来たんだ。 絶対に、成功させる。 最初は私は後ろで、ウィニングライブならバックダンサーの位置で踊る。 グランドライブは皆が輝く、皆が夢をぶつける場。 今は、センターにいる娘達を輝かせる。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ────────────────────────────────────────────────────── 「よく見えないですね~」 「ああ、向こうの画面もステージに隠れて余り見えないな..」 観客の山とステージの形に邪魔をされ、イチ達が踊っているステージの正面は小さくちらちらとしか見えなかった。 カメラが写した映像が投影される大きなモニターも観客席の上についているのだが、ここからだとそれも余り見えない。 イチからはこの辺りの席を取っておいて欲しいと言われていたのだが、聞き間違えたりしてしまっていたのかと、不安になってきていた。 だが、どうやらそれは杞憂だったようだ。 正面で踊っていたイチ達は左右半分程に分かれ、イチは私達のいる方へとステージを走ってきた。 彼女達は、ステージの階段を上り、少し高い位置にある、広場のようになっている位置に並んだ。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ステージを移動し、階段を上った先にある、開けた場所に出る。 多分、この辺りの人達は、さっきまで私達の姿はよく見えてなかったはずだ。 だから、今度はここにいる人達に最高の私達を観てもらう。 そして、もうすぐだ。 私が、このライブで一番輝ける瞬間。 観ていてね。皆。オグリ。 次々と前に立つダンサーが入れ替わっていき、私も徐々に前に出ていく。 そして、最後に一気に、一番前に 「君と勝ちたい!!」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ────────────────────────────────────────────────────── 一瞬。 一瞬だった。 イチのその姿を見た瞬間、周囲から音が消えた。 ステージにいる彼女の姿は、キラキラと輝いて見えて..とても、綺麗だった。 イチが、真ん中にいたのは、時間にすれば10秒もなかっただろう。 けれど、その一瞬の彼女の姿が瞼に焼き付いて、離れなかったんだ。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ Part17 その1(≫75) ≫75 二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 21 16 45 ~~レース前~~ イチ「……ねえ。あなたの髪飾り、ちょっと貸して」 オグリ「どうするんだ?」 イチ「いいから! すぐに返すから、早く!」 オグリ「わ、わかった」(髪飾りを外す) イチ「ん」 オグリ(イチは私の髪飾りを手に取ったまま、じっと見つめていた) オグリ(どうするつもりなんだろう、と不思議に思っていたら) オグリ(そっと、イチは私の髪飾りに口づけた) イチ「ねぇ……頭、出して。髪飾りつけるから」 オグリ「ん」 イチ「絶対勝って。おまじない、ちゃんとしておいたから」 オグリ「ああ、イチは私の勝利の女神だからな。絶対に勝利をプレゼントするから、帰ったら美味しいご飯を頼む」 イチ「寮の冷蔵庫に、もう仕込みはしてあるわよ。だから、その……頑張ってね」 ほんのりと赤く頬を染めたレスアンカーワンに送り出され、オグリキャップはパドックへ向かった。 レースの結果は――もちろん、言うまでもないだろう。 その2 (≫103~108) ≫103 二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 17 49 21 「あ、あの!」 ある日、オグリと街を歩いていると、同い年ぐらいの女の子に、声をかけられた。 「すみません。その、フ、ファンです!」 緊張しているのだろう。少し上ずったような声でその女の子は言った。 「だってさ、オグリ。私は向こうで待ってるね」 いつものようにオグリのファンだろうと思った私は、オグリに目を向け、そう言った。 しかし、その娘が次に発した言葉は、私にとって想定外のものだった。 「あ、あの、いえ、えと、私、イチさんの、ファンで..」 「え、私?」 驚いて、つい聞き返してしまった。 オグリとセットで写真を求められたりすることはあるけど、オグリじゃなく私のファンだと言う人に声をかけられたことはなかったから。 「はい!私、デビュー戦の時に貴方の走りを見てから、ずっと、イチさんの、レスアンカーワンさんのファンで..」 そんな前から、と驚くと同時に、嬉しさと、なんだか気恥ずかしさが込み上げてきてむず痒くなった。 オグリの顔をチラリと見ると、何故か自慢気にも見えるニコニコな顔をしていた。 あんたは私の保護者か。 ────────────────────────────────────────────────────── 「えーと、ありがとう。すごく嬉しい」 私は素直に嬉しさを伝えた。 後は、何すればいいんだっけ。 オグリと一緒によくファンサをしていて慣れていた筈なのに、今は、緊張で上手く頭が回っていなかった。 「あ、こういう時はやっぱり握手かな」 私が手を差し出すと、ファンの娘はすごく嬉しそうに、私の手を握り返した。 「ありがとうございます!あと、サインもお願いしていいですか?」 「もちろん!」 彼女はバッグの中からメモ帳とペンを取り出し、お願いしますと私に差し出した。 私は、残念ながら自分のサインなんて考えたこともなかったから、少し味気のない、シンプルなサインを描いてメモ帳を返した。 飾り気のない地味なものだったが、それでも彼女はすごく喜んでくれた。 こんなに喜んでくれるとなんだか地味なものになってしまったのが少し申し訳なく感じられた。 サイン、考えとこうかな.. そんな私の気持ちを余所にファンの娘は本当に嬉しそうだった。 若干の後悔を感じつつも彼女の喜びが私にまで伝わってきて、私もすごく、嬉しくなってきた。 「あ、あの、ありがとうございました。宝物にします!」 彼女はそう頭を下げて、お礼を言ってくれた。 ────────────────────────────────────────────────────── 「こちらこそ、ありがとう。本当に嬉しいよ」 こんなにも私を推してくれている彼女に何か返せることはないだろうか。 そうだ。 「ねえ。良かったら一緒に写真取りませんか?」 「へ?え。ぜ、是非、お願いします!」 あわあわとスマホを取り出し、スマホを構えた彼女に肩を寄せて並び、ツーショットを撮った。 私も自分のスマホで記念に一枚、撮影した。 この時、私は嬉しさと興奮で、側で待ってくれているオグリのことをほっぽってしまっていた。 後から考えると待っててとか一言ぐらいかけておくべきだったのだろう。 でも、この時の私はその事に気付きもしていなかった。 「ありがとうございます!私、今日のこと絶対忘れません!」 その後も少しファンの娘と会話していると、突然、しっぽに何か触れた気がした。 気のせいかな?と思って特に振り向きもせず、会話を続けていると、今度は間違いなく、何かが私の尻尾を撫でた。 ────────────────────────────────────────────────────── 「ひゃ!?」 ビックリして少し小さく悲鳴をあげてしまつまたので、ファンの娘が「どうしました?」と心配してくれた。 「ううん、なんでもないよ。大丈夫」 そう笑顔で答えたが、内心は全然大丈夫じゃなかった。 私の尻尾に触れている何かは、フワッとした心地の多分、私の尻尾と同じようなものだ。 そして、それは徐々に私の尻尾に巻き付くような動きをしている。 まさか、と思い、後ろ目でチラリと尻尾の方を確認すると、綺麗な芦毛の尻尾が私のそれに巻き付いているのが見えた。 オグリ!?なんで急に..てかこれって.."尻尾ハグ".. 思わずオグリの方を向くと、なんだか少し怒っているような、拗ねているようなそんな目で私の顔を見ながら、頬を赤らめているオグリの顔があった。 やば、もしかして怒らせちゃった..? いや、でもそしたらこの尻尾はなんで.. そんな私の様子からファンの娘もオグリの様子に気がついたようだ。 オグリの表情を見た彼女は、あっ。というような顔をした。 そして、どうやら私の足の間から尻尾も見えたのだろう。視線を下に向けた彼女は、数秒、フリーズしたように動かなくなったが、突然、顔が真っ赤に変わった。 「あ、あのすみません。長々と、そろそろ失礼いたします。本当にありがとうございました!」 顔を真っ赤にさせた彼女は早口でそう言うと、オグリに向かってこう言った。 「あの、オグリさん。私、応援してます!」 そして、ファンの娘は早足で去っていく。 私は彼女の背中に向かって「ありがとう。またね」と別れを告げる。 ────────────────────────────────────────────────────── 「あの、オグリさん。そろそろ尻尾を..」 ファンの娘がいなくなり、近くを歩く人達の視線が気になり始める。 「嫌だ」 「や、その皆に見られてるからさ..」 やっぱり怒らせてしまったのだろうか? なんだか拗ねたような声に心配が増していく。 「オグリ、怒ってる?ごめんね。ほっぽっちゃってて」 「怒ってるわけじゃない」 え?どういうことだ。じゃあどうして、いや確かに怒ってるのに尻尾を絡ませるとは思えない。じゃあこれって..? 「オグリ、妬いてるの..?」 まさかと思いながらも、そう尋ねてみると、オグリは赤らめた顔を小さく縦に動かした。 ドキッと心臓が高鳴る。 オグリ、嫉妬なんてするんだ..しかも、私のことで.. 多分、私も今、顔真っ赤だな。 「ねぇ、オグリ。じゃあさ、手、繋ご。このままだと歩きにくいしさ」 私の言葉に漸く尻尾をほどいてくれた。だが、ファンとの交流と、オグリの意外な感情で、私はすっかりテンションがおかしくなってしまったのだろう。 どうやら歩いている内に、無意識に尻尾を絡ませていたようだ。 寮の近くでタマモ先輩と出会ったときに、指摘されて気が付いた。気がついた時の私の顔は人生で一番赤くなってたと思う。 それどころか、別の生徒にも見られていたようで、後日、学園中の噂になってしまったのはまた別のお話。 その3 (≫123) ≫123 二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 21 28 58 寮の自室でスマホをいじっているモニーはふと顔を上げる。 目に入るのは、ルームメイトの空のベッド。 イチは朝から出かけている。 どうせ、お相手はあのオグリキャップだろう。 イチは気付いているんだろうか。 私と遊ぶ時間も、おしゃべりする時間も、めっきり減ってしまったことを。 きっとしばらくは帰らないだろう。 私は自分のベッドから、おもむろにイチのベッドへともぐり込んだ。 イチの使っているシーツ。 イチの使っている枕。 イチの使っているコンディショナーのにおい。 こんなにもイチを感じることができるのに――イチはここにはいない。 それが寂しくてしょうがなかった。 イチをオグリキャップに奪い取られたような気分だ。 「ムカつく……ぽっと出のくせに、調子に乗って……」 気が付いたら、私はそんな言葉を口に出していた。 その4(≫143)≫137より派生 ≫137 二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 22 14 32 イチちゃんが素直に「どうしたら許してくれるのか」を聞いたら モニーちゃんにちっちゃい声で「……しっぽはぐ」って言って欲しい ≫143 二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 23 55 06 ハンバーグを作った。 にんじんのグラッセを添えた、渾身のひと皿だったのだけれど。 それでも、モニーは私と口をきこうとしてくれなかった。 カレーを作った。 じゃがいもの代わりににんじんを多めに入れたから、ウマ娘なら誰でも美味しいと言うはず。 それでも、モニーは私と口をきこうとしてくれなかった。 パンケーキを作った。 肉料理でもカレーでもだめなら、スイーツしかない。 すり下ろしたにんじんも混ぜ込んだ、優しい甘さのパンケーキ。 もしこれでモニーが許してくれなかったら、私はどうすれば―― 黙々とパンケーキを食べるモニーを、私はじっと見守ることしかできなかった。 モニーはパンケーキを食べ終えても黙ったまま。 その沈黙がやけに長く感じられて、怖かった。 私は、おずおずとモニーを上目づかいでちらりと見る。 モニーはぷいっ、と顔をそらした。 ああ、いよいよ「愛想を尽かされたんだなぁ」なんて思っていると。 「し……しっぽハグしてくれたら、許してあげる……」 ごにょごにょとモニーがつぶやく。 トマトみたいに真っ赤な顔、ぱたぱたと落ち着きなく動くモニーのしっぽ。 私は嬉しさのあまり、ちょっとだけ乱暴に自分のしっぽをモニーに絡ませた。 Part18 その1(≫75)≫124から派生 ≫124 二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 21 08 42 スペ「あの、デジタルさん。『イチモニ』って知ってますか?」 デジ(ええぇ!?なんでスペシャルウィークさんがイチモニなんて単語を知ってるんですかぁ! レスアンカーワンさんとエイジセレモニーさんのカップリングを知ってるなんてウマ娘好きでも通だけですよ。 もしかしてスペシャルウィークさんもかなりディープなウマ娘ちゃんオタク!? 純粋そうなフリして実は夜通しウマ娘ちゃんの愛を語れるタイプなんですかね。 まさか同士がこんなところにいるなんて思いもしませんでしたよっ) スペ「デジタルさん、どうしたんだろう……鼻血出しながら固まっちゃった……。テレビの話をしただけなのに」 ※北海道では『イチモニ!』という朝の情報番組が放送されています ≫142 二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22 02 28 スペ「あの、スズカさん。『イチ』って呼ばれてる娘、聞いたことありますか?」 スズカ「イチ・・・?ああ、もしかしたら」 スペ「知ってるんですか?」 スズカ「たぶん、あの子だと思うの。朝に走りこんだ後、よく見かけたことがあるから。いつも朝早くから誰かを待っていたわ。お弁当を持って」 スペ「お弁当を持って、朝早くから、ですか・・・?」 スズカ「そうみたいね。あんな早い時間にお弁当を作っていたなら、きっと早起きして用意したんでしょうね」 スペ「うわぁ・・・私にはムリかもです」 スズカ「ふふ、スペちゃんは朝が苦手だものね」 スペ「ぐぬぬ・・・。言い返せないのが悔しいです。でも、きっと――」 スズカ「きっと?」 スペ「その『イチ』さんが丹精こめてお弁当を作っているのはよくわかりました。きっと、大切な娘のために作ってるんでしょうね」 スズカ「私もそう思うわ。だって――」 ――その『イチ』という娘はいつも、お弁当を持って誰かを待っている時、幸せそうな顔をしていたもの。 その2(≫165) ≫165 二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 23 16 40 ~カフェテリアでの一幕~ タキオン「・・・はぁ」 シャカ「わざわざ隣の席に来てまで、辛気くせぇツラすんじゃねぇ」 タキオン「そうは言ってもねぇ、これは私にとって重大な問題なんだよ。命にかかわると言っても大げさじゃないんだ」 シャカ「どうせ聞くまで動かないんだろ。しょうがねえ、何があったか聞いてやろうじゃねえか」 タキオン「ああ、君はやっぱり優しいんだね」 シャカ「・・・テメーのPC、ハッキングして使い物にならなくしてやろうか?」 タキオン「やめたまえ、その脅しは怖すぎる」 シャカ「ならさっさと懸案事項を話したらどうだ」 タキオン「実はね、私の朝ごはんのことなんだが」 シャカ「あぁ?」 タキオン「そんなに怖い顔をしないでくれたまえ!モルモット君は昼ご飯しか作ってくれないんだ。朝ごはんまで作らせるにはさすがに忍びなくてねぇ」 シャカ「まあ、わざわざ早起きしてメシを作るのはそう簡単なことじゃねぇだろうな」 タキオン「ああ、そうだろう。でも聞いたことがあるんだ。あの芦毛の怪物に、ほぼ毎朝お弁当を作っているウマ娘がいるとね」 シャカ「ああ、レスアンカーワン・・・だっけな。物好きなヤツだな。オグリキャップに飯を作ってやるなんて、狂気の沙汰だぜ。炊飯器がいくつあっても足りやしねえ」 タキオン「まったくだ。論理的な行動とはいえない」 シャカ「確かに、ロジカルじゃねぇな」 ――めずらしく意見が一致した天才たちは苦笑いする。 誰かに朝ごはんを作ってあげるなんて行為は、決して論理的ではないかもしれない。 でもそこに込められた想いが、決して軽くないことも、理解しているから。 Part19 その1(≫41) ≫41 二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 20 27 44 『オグリキャップのカワイイ写真が撮れちゃった😆💕皆にもお裾分けするね✨✨✨🤭#オグリキャップ#芦毛の怪物#オグリン』 これでよし、オグリキャップの情けない姿をネットに流す事に成功したわ…運営からの削除対策に嫌がらせとバレないように文面も整えたし完璧以外の言葉が見当たらないわ…流石私ね! ピロン♪ピロン♪ ククク早速RTやリプが飛んできたわね、どれどれ… 『保存した』『供給助かる』『#拡散希望』『失望しました…タマモクロスのファンやめます』『なんでやねん』『一生大事にする』『ウッ…ふぅ…やれやれこんな情けない顔をするとはな』『もしもしウマシコ警察?』『祭りの会場と聞いてきたけどおめぇイチだな?』『あらあら〜カワイイですね♪でも明日も 早いのですから夜更ししちゃ駄目ですよ?』『今年のスクープ大賞が決まったようだな…』『あーいけませんこれは危険ですあたしの魂が抜けてしまいます』 ホーッホッホッ!上々の反応ね!なんか見たことある人も居る気がするけど… その2(≫55~56)≫45、47より派生→≫58から60、72へと派生 ≫45 二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 21 20 59 タマ「あんな、最近寒くなってきたやんか。そしたらオグリが『湯たんぽ』を抱えてきたんや」 クリーク「あら、意外とオグリちゃんってば寒がりなんですね~」 タマ「でな、どんな『湯たんぽ』やったと思う?」 クリーク「うーんと、抱えるってくらいだから、かなり大きな湯たんぽだったんでしょうか?」 タマ「いやな・・・オグリが抱えてたのな、イチちゃんだったんや」 クリーク「あら~~」 ≫47 二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 21 34 01 寒さのあまり大ボケをかましてイチを抱えて走り去るオグリ 急に抱えられて状況に顔が真っ赤にしてオーバフローするイチ 必死の形相で追いかけるタマとフジとモニー それを眺めながら温かいお茶を手に、呆れた表情で「平和だねぇ」とつぶやくイナリと同調するクリーク ここまで幻視したわ。 ──誰かSSを頼みます(血涙) ≫55 二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 17 48 58 ある日の午後、寮のリビング、幾人かのウマ娘達がが談笑していた。 「こんな寒い日に限って暖房の不調とはなあ、めっちゃ寒いわ」 タマモクロスはそう言いながら、手を擦り合わせる。 「そうですねぇ~風邪を引いたりしないように気を付けましょう」 スーパークリークも同調し、「暖かいお茶でもいれますねぇ」とキッチンの方へ消える。 「おおきにぃ」 「本当に寒いな」 オグリキャップもタマの横で寒そうに縮こまっている。 「あ~、湯タンポとか欲しいなあ~」 タマのその言葉に、オグリはピクリと反応する。 「湯タンポ..そうだ!」 目を輝かせた彼女は、そのまま寮生の個室の方へと消えていった。 「なんや..?オグリん湯タンポなんかもってたか..?」 彼女と同室のタマは、そういぶかしんだ。 「カイロでも取りにいったんじゃねぇのかい?」 タマの隣に座っているイナリワンがそう推測する。 「カイロかあ。カイロでもなんでも助かるなぁ」 同じくリビングに来ていたエイジーセレモニーが寒さに縮こまりながら言った。 「ーー!?ー?ーー...ー...」 暫くすると、廊下の向こうから何やら声が聞こえてきた。何か慌てているようにも感じられる声色だったが、リビングからは何を話しているかまでは届かなかった。 「何かあったんか?」 タマが様子を見に行こうと立ち上がったその時、何かを抱えたオグリがリビングへ戻ってきた。 そのオグリに抱えられた"何か"は今にも火を吹き出しそうな程真っ赤に顔を染めた、レスアンカーワン、イチだった。 イチを抱き抱えながら満足気な顔をしているオグリはまるで自分が何をしているのか分かっていない様子だ。 モニーは困惑した表情を浮かべ、イナリも苦笑いをするしかなく、一瞬の沈黙が流れる。 「オグリん、オグリん。それ湯タンポとちゃう。イチちゃんや」 あまりのことにいつもの激しい突っ込みも鳴りを潜めてしまったタマが静かに突っ込む。 オグリは何度か自身が抱き抱えているイチと周囲の様子を見比べる。 ────────────────────────────────────────────────────── 「...あ...」 漸く自分がしていることに気が付いたようで、みるみる内に顔を赤く染めた。 バッと踵を返しイチを抱き抱えたままリビングから逃げるようにして去ろうとするオグリをモニーとタマが追いかける。 「まてぇ!イチちゃんを解放せえ!」 「イチを湯タンポ扱いってどういうことですか!いつもどんな過ごし方してるんですか!?説明してください!」 「ち、違うんだこれは..!」 オグリに抱き抱えられたままのイチは混乱が収まっておらず、なすがままとなっていた。 「お茶入りましたよ~。ってイナリちゃんしか残ってませんね」 クリークがキッチンからお茶を入れて戻り、お茶をイナリの座る机に置く。 「ありがとよ。皆、オグリを追い掛けていっちまったからな」 「オグリちゃんを?」 「ああ。説明すると少し長く、お、丁度戻ってきたみてえだな」 再び廊下を書ける音と共にオグリがリビングへとかけ戻ってくる。 まだ、イチは抱えられたままで、相変わらず顔を赤くしていた。 そして、それを追ってタマとモニーも戻ってくる。 「ええ加減止まらんかぁ!」 その騒ぎを横目にイナリは苦笑し、お茶に手をのばす。 「まあ、こんなところでい」 「なるほど~平和ですね~」 「平和だねえ」 喧騒の横で二人は静かにお茶を啜る。 この後、騒ぎを聞き付けた寮長に四人は注意されることになるのだった。 ≫58 二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 19 56 38 イチ「いいかげんにしなさい! 私はオグリの湯たんぽじゃないのよ!!」ウガー オグリ「す、すまない。そんなつもりじゃ・・・」シュン タマ(あいや。さすがにイチちゃんも我慢の限界やったかな) イナリ(湯たんぽ扱いされて怒っちまったねぇ) クリーク(あらあら、どうしましょう) イチ「湯たんぽじゃなくて。だ、抱き枕でしょ・・・」カオマッカ オグリ「そ、そうだったな。イチは抱き心地がいいからな!」フンス タマ(うわぁ口の中が甘すぎて砂糖吐きそうや) イナリ(濃~いお茶でも飲まなきゃやってらんねぇよ) クリーク(あら~~~どうしましょう。赤飯炊かないとですね) ≫60 了船長22/11/30(水) 21 25 36 ≫58 「部屋交換してる時さ、オグリ、私のベッド使ったことある?」 「それは……いや、無いな」 「あー……まあ、いいか。それはそれで」 「モニーは、私のベッドで寝ているのか?」 「あー……ノーコメントで」 「……やっぱり、そうなる……よな」 「背低いほうがあったかい、の、法則?」 「二人とも、部屋の交換というのはどういうことかな? 消灯後の不要な外出はいけないことになっているけど…… 」 「オグリって長距離イケる?」 「ああ。2500までなら」 「コツ教えて。あと、スタートは私のほうが速いから。お先!」 「あッ、モニー、ひといぞ!」 「2000までに捕まえてみせるよ、二人共!」 その後をねつ造しました とても尊いSSでした🙏 ≫72 二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 12 21 24 ≫58 「さぁ始まりました『オグリキャップ対レスアンカーワン夫婦喧嘩記念』、開幕からイチの凄まじいポコポコパンチのラッシュが展開されてます」 「当たり前や、あんな人前で雑に扱ったら乙女心はズタボロやぞ」 「鈍感オグリキャップ、ひたすら謝るが逆効果。イチのラッシュは加速する一方」 「もうちょい雰囲気とか気にせぇって話や。二人っきり、日も傾いて薄暗い道を行く中で後ろからそっと抱き寄せつつ、耳元で『愛してるぞ、イチ(イケボ)』とかやらんとイチちゃんプンプンやで」 「でもよタマ、イチの奴抱き枕宣言してるぜ」 「天下の往来で何言ってんねや!!!!!こんな所でノンストップガール発動すんなや!!!」 「垂れウマならぬデレウマ回避が欲しいところですが、オグリキャップしっかり受け止めた」 「ポカポカ殴った後に身を寄せ合ってポカポカしてるというオチがついた所でレース終了、やかましいわ!おどれら惚気けてんのう賞に出走させたるぞ!」 その3(≫77) ≫77 二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 13 03 03 ――栗東寮、寮長フジキセキの部屋。 寮長の特権である広々とした1人部屋に置かれたソファには、オグリキャップとレスアンカーワンがちょこんと座っていた。 ふたりともしゅんとした表情で、ウマ耳もへにょりと元気なく倒れてしまっている。 「今日は君たちに話があるんだ」 腕を組んで立ったまま、フジキセキはゆっくりと話し始めた。 「ああいや、別に君たちが悪いことをしたとか、お説教をするとかじゃないんだ」 フジキセキは微笑みを絶やさない。 けれどもその顔には少し疲れが見えた。 「……でもね、今日は言わせてもらうよ」 めったに怒ったところを見せないフジキセキが、もしかしたら怒っているかもしれない。 オグリとイチは内心びくびくと怯えていた。 「――栗東寮の他の娘達からね、苦情が来るんだよ。『オグリとイチが夫婦喧嘩してるから止めてください』ってね。そう、君たちがケンカするたびに連絡がくるんだ。確かに寮生どうしのケンカを止めるのは私の役目かもしれないけど、君たちの場合は違うよね!? 一見すればケンカに見えるけど、よく見たらいちゃついてるだけだよね!? 頼むから今後は人目を気にしてほしいな。ああ、もちろん……一線を超えるのは、学園を卒業してからじゃなきゃタメだよ」 かあっと顔が赤くなる。 横にいるオグリを見れば、オグリもトマトみたいに真っ赤だった。 「……申し訳ない」 「すみません、寮長にはご迷惑をおかけしました」 とりあえずフジ先輩に謝って、そそくさと部屋を後にする。 廊下のひんやりとした空気が、火照った顔を冷ましてくれた。 とりあえず、今後オグリと一緒にいる時は人目を気にした方がいいだろう――そう思って廊下を歩いていたら、左手に熱を感じた。 オグリが私の手をつかんでいる。 きっと無意識なんだろう。 私はふっ、と口元を緩めた。 まあ、人目を気にするのは、明日からでもいいだろう。 その4(≫103)≫106へと派生 ≫103 二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 06 01 02 「イチさんよ、オグリンに脂っこい夜食食べさせて効率よく太らせる作戦はどうなったん?」 「駄目だった」 「でしょうね」 「しかも二次災害が起きた」 〜〜〜 『イチ、今夜もまた頼めないか』 『はぁ?流石に毎日は体が持たないわ』 『そんな…ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから』 『ちょっと、そんなに迫らないで…』 〜〜〜 「なんか誤解されてこのあと怒られた」 「コントかよ」 ≫106 二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 22 26 25 ≫103 ――栗東寮寮長、フジキセキは語る 夜食ってことは、もちろん夜遅い時間なわけだよ。そんな夜更けに―― 『イチ、今夜もまた頼めないか』 『はぁ?流石に毎日は体が持たないわ』 『そんな…ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから』 『ちょっと、そんなに迫らないで…』 ――なんてやり取りを薄暗い寮のキッチンでしてたら、そりゃあ他のウマ娘に見られたら勘違いされるだろ? イチちゃんはオグリを胸やけさせようとしたんだろうけど、見てるこっちの方が胸やけしちゃうよ。困ったものだね。 その5(≫165) ≫165 二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 20 30 34 モニー「あのー、タマ先輩。すいませんけど併走につき合ってもらえませんかね。一本だけでいいですからっ」 タマ「それくらいかまへん。一本と言わず何本でもいくで!」 モニー「タマ先輩、新しいシューズ選びで悩んでるんです。今度の休み、もし都合がよかったらつき合ってもらえないですか。無理ならぜんぜん大丈夫、ですけど」 タマ「なんや、それくらい全然OKや。かわいい後輩の頼みやからな」 モニー「あ、あの、実は福引で温泉旅行券が当たったんですよ。それで先輩がよければなんですけどっ。調べてみたけどけっこういい温泉みたいなんです。もし先輩がイヤじゃなければ一緒にどうかな、って」 タマ「ウチと一緒でええんか?誘ってくれて嬉しいわ、ありがとな!」 モニー「先輩、好きなのでつき合ってくれませんか」 タマ「もちろんええで!」 タマ「……んんっ?」 ◇◇◇◇◇ イチ「あれね、『フットインザドア』っていう交渉のテクニックよ。小さなイエスをくり返させることで、本当の目的にイエスと言わせるの」 オグリ「そうなのか。イチもモニーも頭がいいんだな」 イチ「別にそんな交渉術なんて使わなくても、直接気持ちをぶつければいいのよ。その方が相手に気持ちが伝わるでしょうに」 オグリ「そうだな、私もそう思う」 オグリ(……好きだ、なんて直接言えればいいのだけれど。そう簡単にはいかないんだ)
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